
パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第19回目は、パーソルクロステクノロジー株式会社の人事統括本部 人事企画部DEI推進・組織開発グループでマネージャーを務める中井 健豪です。
「天皇杯」優勝チームのヘッドコーチ
2025年7月、パーソルクロステクノロジー株式会社に、異色のキャリアを持つ人物が新たに加わりました。
中井のキャリアは、微生物の研究者から始まりました。その一方、大学生のころから約20年、車いすバスケットボールの選手兼コーチを続けており、現在は「埼玉ライオンズ」でヘッドコーチを務めています。2026年3月には、車いすバスケで最も大きな大会「天皇杯」で初優勝を飾りました。パーソルグループのDEIへの取り組みに惹かれて転職を決めたという中井の歩みを振り返りながら、現在の取り組みを紹介します。
中井は三重県にある志摩半島の先端、大王町で生まれ育ちました。リアス式海岸の英虞湾(あごわん)を間近に臨んで暮らしてきたことが、研究者への道に通じます。
「一時期、環境汚染で英虞湾がヘドロまみれになってしまったんです。そのヘドロを微生物の力を使って分解したと知って、これは面白いなって」中学生のころから微生物の研究者を目指し、大学院に進みます。修士課程修了後は製薬会社に就職し、10年間、微生物を使った創薬などに従事しました。ところが2019年、タイヤメーカーに転職し、微生物とはまったく関係のない社会貢献活動の企画・運営業務に携わるようになりました。
この転身の背景にあるのが、車いすバスケです。大学1年生のボランティアで老人ホームや障害者のグループホームに通うようになり、そこでたまたま知り合いから誘われて車いすバスケを知りました。
「最初、車いすバスケに興味はなかったんですけど、そこにいる人たちがすごく愉快で、一緒にいるのが楽しくて通うようになりました。そうしたらある日、練習相手が足りないから車いすに乗れよって言われて。やってみたら何もできなくて、くそっ!って悔しく思ったのがハマるきっかけでしたね」

車いすバスケは、国内の多くの大会に健常者も選手として参加できます。「もっと上手くなりたい」と思った中井は大学2年生のとき、大学内で健常者が中心の学生チームを結成し、障害のある人が中心の社会人クラブチームと掛け持ちしていました。
畑違いの業界に転職した理由
製薬会社に入社した後も、仕事の後と週末に週4、5回の練習に参加。東京のクラブチームに移籍してからは、指導も始めました。アメリカのイリノイ大学で開催されている車いすバスケのコーチングクリニックを受講して、その奥深さに研究者魂を刺激され、プレイングマネージャーとして本格始動します。こうして車いすバスケと密に関わっているうちに、微生物から人間に興味が移ったそうです。
「車いすバスケを通して、人が成長して自己実現していく姿を目の前で見ることがこんなに面白いものなのかって思ったんです。それで人と関わる仕事がしたいと考えたときに、研究者の仕事を60歳まで続けるより、思い切ってキャリアを変えようと決めました」
転職先のタイヤメーカーは当時、グローバルなスポーツイベントのスポンサーとして、スポーツとDEIを掛け合わせた社会貢献活動に力を入れていました。車いすバスケを通して関係者と知り合ったのが縁となり、転職します。
同社は、全国に体育館を併設した工場を持っています。その施設を活用し、「スポーツを通して地域の多様な人が集うコミュニティをつくること」が中井の仕事になりました。
「私は横浜の工場を中心に担当していたので、横浜市のスポーツ課や地域のNPO、外郭団体と連携しながら進めていました。求めていたような人との距離が近い仕事で楽しかったですし、ゼロイチでデザインするところから手掛けていたので、そういうスキルがついたことも含めて、やりがいを感じていました」

キャリアに大きな影響を与えた「障害の社会モデル」
二度目の転職を意識するようになったのは、東京オリンピック後に会社の方針が変わったタイミングでした。「もっと自分のやりたい仕事に就きたい」と考えます。それは、タイヤメーカーでの仕事を通して学んだ「障害の社会モデル」の影響が大きかったといいます。
「たとえば、階段のある建物に車いすの人が入れなくて困っているとき、“車いすを利用しているから建物に入れない”と、機会損失の原因を個人に帰結させるのが個人モデル。これに対して“階段しかないから建物に入れない”と、社会の仕組みや環境にあるバリアに原因を帰結させるのが社会モデルです。」
「私は幼少期から困っている人や生きづらそうにしている人のことが気になっていたんですが、何かできるわけでもなくずっとモヤモヤしていました。“障害の社会モデル”を知って、どんな人でも自分で選んで自分で決めていけるような環境をつくっていきたい、機会や選択肢が公平である社会にしていきたいと思っていたんだと腑に落ちました」
中井が転職活動を始めた2025年の前半は、ドナルド・トランプ氏の大統領就任を機に、アメリカでDEI目標を縮小・廃止する企業が増えた時期と重なります。日本でも同様の動きが広まり、中井が希望するような求人はほとんどありませんでした。それだけに、パーソルクロステクノロジーの「DEIを推進する管理職」の募集を見て、心が動かされたと振り返ります。
「このご時世にすごいな、というのが最初の感想です。トップも含めて会社として本気でDEIにコミットしていることが伝わって、とても魅力的に感じましたね」
印象的だったのは面接。人事の経験ゼロの中井に対し、面接担当者は表面上の職歴ではなく、車いすバスケの活動も含めて、「どういう考えを持っていて、どういうスキルや経験を持っているのか」を知るためのコミュニケーションに多くの時間を割いたそう。中井はそれが「内面の多様性が受け入れられて嬉しかった」と言います。
「DEIセッション」で明らかになった課題
入社したのは、2025年7月。同社ではそのおよそ1年前にCDIO(ダイバーシティ推進責任者)が新設され、エンジニアリング管掌執行役員の新井 康之が着任しました。
新井の直下に立ち上げられたのがDEI推進グループで、2024年10月には各管掌から選出したメンバーによるDEI推進チームが結成されます。DEI推進グループのマネージャーに就いた中井のミッションは、推進チームとともに「はたらきやすさ」と「はたらきがい」をテーマにDEIを推進することです。
入社早々、中井は「DEIセッション」を担当しました。これは、管理職を集めて「DEIに関して職場で感じるモヤモヤや課題」を共有するための場です。このセッションに96%の管理職が参加し、それぞれが率直に意見を交わしたことで「どこに焦点を当てるのか」が明確になってきたのが成果だと語ります。
「現時点で当社には多様な人材が在籍しており、リモートワークや産育休、キャリア支援などの制度も高い水準で整っています。一方で、そういった機会と選択肢を現場でうまく活かし、多様な人材を掛け合わせていく風土が、まだ十分に醸成されていないという課題が見えてきました。どれほど多様な人材がいても、どれほど制度が充実しても、それを活かす組織風土がなければインクルーシブな会社にはなりません。そこで、私たちは風土醸成に優先して着手すべきだという方針になりました」

同社では、男性の育休取得率が90%を超えています。これは、上司が育休取得を後押しし、ほとんどのメンバーが育休を取ることで、「自分も取っていいんだ」と思える風土があるからだと中井は言います。DEIに関しても同じように後押しできる風土を醸成するのが中井の役割です。
「構造にある不」を解消するために
パーソルクロステクノロジーでは、2033年までに女性管理職の比率を17.9%以上にすると目標を定めています。現時点で15.8%にまで増加していますが、まだ改善の余地があると伸びしろを感じています。
「当社の女性従業員の割合18%程度です。その比率と比較すると、実際に管理職に就いている人の方が少ないということは、女性が何かしらの不を抱えたまま仕事していることになると捉えています。つまりそこには女性が管理職になる上での不があるはずなので、改善したいと思っています。そうした不を取り除き、目標の17.9%を目指していきたいと思っています」
「何かしらの不」を探るための最初の一手は、「管理職になりたくない」という抵抗感の解消と、なぜそう感じるのかという課題の抽出。これは男性社員にも共通していることながら女性社員に多く、目標達成に向けた一つのハードルになっています。
「管理職の実態が見えないという意見があったことから、現役の管理職とメンバーの対話の機会を試験的に設けています。管理職が実際にどんな仕事をしているのか、どうやってプライベートと両立しているのかなど、具体的な話を聞く機会をつくることで、メンバー層が管理職になる際の不安を少しでも緩和できればと考えています」
このような取り組みと並行して計画しているのが、「なぜグループをあげて女性管理職の比率を高めようとしているのか」という理解を社内に深めること。それを社内の共通認識にすることが、女性の管理職を当たり前と捉える風土の醸成につながると考えているそうです。
「社内(環境)の不が原因で女性が意思決定やリードする立場につくことを難しくしているとしたら、それはビジネスの可能性を狭めているのではないでしょうか。管理職やプロジェクトのリーダーとして女性が活躍することで、多様な視点や考え方が交わり、意思決定の質の向上やイノベーションの創出を通じて、ビジネスに大きなインパクトを生み出せると考えています。ビジネスへの波及効果や企業のビジネス戦略にどうつながっているのかを明確にした上で、従業員に共感してもらうための取り組みを進めていきます」
今も複業として車いすバスケのコーチを続け、平日に2回ある練習に参加している中井。多様なはたらき方を実践する一人として、「障害の社会モデル」から社内の「不」を探り、その解消に挑み続けます。
<プロフィール>
中井健豪(なかい けんご)
パーソルクロステクノロジー株式会社 人事本部 人事企画部 DEI推進・組織開発G マネージャー
大学院修了後、2009年に製薬会社へ入社し、10年間にわたり医療用医薬品の研究に従事。2019年に大手タイヤメーカーへ転職し、DEIに関連する社会貢献活動の企画に携わる。2025年にパーソルクロステクノロジー株式会社へ入社後は、社内のDEI推進および組織開発を担当し、現在に至る。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。



