「はたらき方」の選択肢を提示したい。27歳でマネジャーに就いた理由―わたしとDEI(11)熊谷 絵里香―

パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第11回目は、パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社の熊谷 絵里香です。

「それまでクライアントとの商談に出たこともないし、提案書をつくったこともないし、本当にゼロからという感じでしたね。根底に人見知りがあるので、はじめて会うお客さまと何を話したらいいんだろうというところからめちゃくちゃ悩みました」

パーソルワークスイッチコンサルティングの人事コンサルティング事業部で2021年、27歳のときから人材開発・ラーニングデザイン部のマネジャーを務める熊谷は、マネジャーに登用された4年前についてそう振り返ります。

「右も左も分からなかった」という熊谷を支えたのは、自らが「はたらき方のショーケース」になるという想い。コンサルティングとはまったくの畑違い、医療・理学系の大学で学んでいた彼女をパーソルワークスイッチコンサルティングに導いたのが、この言葉でした。

目次

「勘違い」がきっかけで入社

熊谷は東京の池袋で生まれました。子どものころは人見知りがちで、年の離れた兄が買ってくる『週刊少年ジャンプ』や漫画を読むのが好きだったそう。「人生のバイブル」は、高校バレーボールを題材にした漫画『ハイキュー!!』。ジャンプは今も欠かさず手に取ります。

中学生のときに通った塾で数学に目覚め、高校では「恩師」との出会いをきっかけに、生物が得意科目になりました。その恩師の母校である医療・理学系大学の生物学科に入学し、分子生物学を専攻。同級生の大半が大学院に進む中、あえて就職する道を選びます。

「細胞って生きているので、毎日お世話が必要なんです。3時間後にはこの作業、5時間後にはこの作業をして、といった感じに。そうした中で、『ずっと続けられるかな』と考えたら『就職するのもありかな』と思って」

就職活動を始めたのは、大学4年生のゴールデンウィーク明け。自分が出遅れていると気付き、焦って手当たり次第に採用試験を受け始めたものの、軒並み不合格でした。しかし、落ち込んでいるうちに、目指す方向性が定まっていきます。

「私、なんとなく『就職するのが嫌だな』と思っていたんです。それを自分なりに深掘りしていくと、『就職するのが嫌なのではなくて、理不尽が多い中ではたらくのが嫌なんだ』と気が付いた瞬間があって。社会人になったら始業時間1分でも遅れたら遅刻になりますよね。そうやって始業時間に厳しいわりに、終業時間を厳守する会社って聞かないじゃないですか。それはどうなのかと疑問に感じるようになりました。一人ひとりの性別も歳も状況だって違うので、柔軟に合理的に生産性高くはたらけたらいいのになと。それなら世の中のはたらき方を変える立場で仕事ができたら、はたらいてみてもいいかなと思うようになりました」

このとき、すでに何度か転職を経験していた兄から、利用した際の印象が良かったという「インテリジェンス(現パーソルキャリア)はどうか?」とすすめられ、説明会に申し込んだ……はずでしたが、熊谷が参加したのは、別会社「インテリジェンス・ビジネスソリューションズ(IBS)(現パーソルビジネスプロセスデザイン)」の説明会。現地で勘違いに気付いたもののそのまま参加し、そこで心をつかまれます。

「説明会では、当時IBSの一部署だったワークスイッチコンサルティングが、『はたらき方を変えて生産性を高めましょう、まずは自分たちで体現して、その経験をお客さまに還元しましょう』と話していました。そのときに、『はたらき方のショーケース』という言葉を何度も使っていて、この会社のこの部署ではたらきたいと思ったんです」

「今日みたいに1日中作業だと分かっている日は、リラックスした服装で仕事に臨むなど、TPOに合わせて服装も選んでいます」

そのあと、とんとん拍子で面接が進み、2017年4月、IBSに入社(同年7月、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社に社名変更)。希望通り、ワークスイッチコンサルティングに配属されました。「もし、間違えずにインテリジェンスの説明会に行っていたら、ここにいないですね」と笑います。

コンサルと実験の共通点

当時のワークスイッチコンサルティングは「新人をサバンナに放り込むスタイル(笑)」で、配属が決まって間もなく、業務コンサルタントとして一人で案件を任されました。クライアントは、同じグループ会社であるパーソルホールディングスのIT部門で、当時問題が多発していたある業務の改善がミッション。熊谷は、はじめての仕事で図らずも新しいはたらき方に挑むことになります。

「着任してすぐ、身内に不幸があった影響で、母が心身のバランスを崩してしまったんです。父も兄も同様の状態だったので、私が家事や母のケアをすることになりました。もともとはクライアント先に常駐という話だったんですけど、事情を話したらありがたいことに在宅勤務の許可が下りました。受け入れてくれた当時の上司と顧客に本当に感謝しています。クライアントのスケジュールと母の体調の両方を見ながら、打ち合わせがない日は在宅勤務を活用しつつ、出社日は定時帰宅を徹底。はじめてのお客さまだし頑張らなきゃと思っていたから、とにかく時間内に仕事を終わらせようと必死でした」

入社から4カ月、プロジェクト開始5日目で訪れた、綱渡りの生活。意外なことに、この試練を乗り越えるために役立ったのは、大学時代に取り組んだ実験の経験でした。

「実験では、ゴールまでに何が必要かタスクを洗い出して、いつ何をやるのか計画を決めます。でも実験はうまくいかないことの方が多いので、バッファを設けてリカバリーをしていきます。実験の器材はほかの学生も使うので、全員の予定を考えながら自分の実験も滞らないようにスケジュールを組んでいく──。こういった経験が、仕事でも活きました」

研究での経験を業務でも活かせた熊谷は、定時内で案件を遂行していきます。クライアントの業務をひっ迫していたある事案の内容を数千件にわたってチェック。手続き上のプロセスが複雑化していることに気付き、絡まった紐を解く策を考案して、この仕事で新人賞を受賞します。

イレギュラーな昇進

1年目に公私ともにハードな日々を乗り越えたことで、鍛えられたのでしょう。2年目以降も仕事は順調で、3年目の2019年には上期ベストパフォーマー賞を受賞しました。

同期が人事やITなど専門性を高めていく中、「自分には何ができるのか、できないのか、何がやりたいのか、定まっていない」ことにコンプレックスを感じながらも、任されたプロジェクトは着実に成果を出していきます。

「まず、お客さまに恵まれました。優しい方ばかりでしたから。それに、フィードバックをしてくれる部署の先輩たちからも、いいアドバイスをたくさんもらいました。家族が落ち着いてからは、行きたい飲み会やイベントには絶対に行くというスタンスで仕事をしていたんですけど、柔軟に受け入れてもらって、仕事とプライベートを両立できているという実感がありましたね」

マネジャー昇進の話が持ち上がったのは、2020年12月。カンファレンスに登壇するGM(ゼネラルマネジャー)に同行することになり、東京駅のコーヒー店で朝8時半に待ち合わせました。そこでコーヒーを飲んでいるときに、GMから「1月からマネジャーやらない?」とオファーを受けます。一人のマネジャーが急に退職することになり、若干27歳の熊谷に白羽の矢が立ったのです。

通常は期が変わるタイミングで昇降格が発生しますが、なんの前触れもなく期中の登用だったというから、かなりイレギュラーな人事だったのでしょう。驚いた熊谷は「私ですか?」と尋ねたものの、数分後には「やります」と答えました。

「私が新卒で入ったときに、3年目、4年目のマネジャーがいて、すごい、かっこいいと思っていたんですよ。それに、若いうちに経験できることは全部やっておこうと思っていたんですよね。純粋に面白そうだなという気持ちもありました」

右も左も分からない苦悩の日々

2021年1月、マネジャー就任。順風満帆に見えた熊谷の苦悩は、ここから始まります。
コンサルの案件は、パーソルグループからの紹介で始まることが多く、ワークスイッチコンサルティングのマネジャーが顧客を訪ね、課題をヒアリングした後、提案書を作成して商談を進めます。受注が決まると、メンバーをアサインして案件が開始していくという流れです。マネジャーの仕事すべてが未経験だった熊谷は、「GMに相談したり、自分が話さなくていい商談に同席させてもらったりしながら、少しずつ学んでいきました」と言います。

もう一つ、熊谷が四苦八苦したのは、チームのメンバーとのコミュニケーション。家族も友人も理系が多く、合理的かつ率直な会話が当たり前だった熊谷は、メンバーに対しても常に正論で向き合いました。曖昧な表現や遠回しな言葉を使うより、ストレートに伝えたほうが「優しい」と思っていたのです。しかし、チーム内から「責められている気がする」「自信を失う」という声が挙がり始めます。

「正直に言って、最初は理解に苦しみました。でも、正論だけを言ってほしいわけじゃなくて、気持ちを汲み取ってほしい人もいるという事実を受け止めないのは、それはそれでおかしな話じゃないですか。自分だけではたらいているわけじゃないから、そこは変えていかなきゃなと思いました」

正解があるわけではない問題に対して、同僚のマネジャーや当時のGMに相談し、時にはメンバーに率直にフィードバックをもらいながら、改善していきました。

マネジャーになってもお客さまの期待に応えながら、柔軟にはたらく

社内外で慣れない業務や対応に追われ、「最初の2年間は、しんどかった」、それが今では、大きなやりがいを感じていると言います。

「一番は、メンバーの成長を間近に見られることですね。お客さまの課題と向き合うにつれて顧客志向・目的志向が培われメンバーの行動が変わっていくのを見られるのは、マネジメントならではの感動だと思います。また、お客さまに対しても、自分の責任でアクションを取りやすくなったので一歩踏み込んで提案、実行できるようになりました。現場の視点だけじゃなく、自分のチーム、会社の売り上げをどうつくっていくのか、ビジネスの戦略と組織的な視点が養われたこともありがたいですね」

現在は、顧客のDX人材を育てるためのコンサルティングと、それに関連する教育プログラムの開発、提供がメインの業務。今後は新規事業の創出に携わりたいと考えているそうです。

周囲から「マネジャーって大変じゃないですか?」と聞かれることもあります。そういうとき、熊谷は「個人的には、めちゃくちゃ大変とは思っていない」と答えているそう。

「瞬間的にパワーが必要なことはありますけど、マネジャーになっても成果を残しながら、柔軟にはたらくことはできますから。これからもお客さまの期待に応えること、売り上げを伸ばすこと、チームのメンバーと一緒に自分も成長することをしっかり両立して、社内外に『はたらき方』の選択肢を提示できるようになりたいですね」

人材開発・ラーニングデザイン部のメンバーとともに(熊谷は2列目左から2番目)

<プロフィール>
熊谷 絵里香(くまがい えりか)
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 人事コンサルティング統括部 人材開発・ラーニングデザイン部 コンサルティング第2グループ マネジャー

2017年4月に新卒でインテリジェンスビジネスソリューションズ(現パーソルビジネスプロセスデザイン)に入社。業務コンサルタントとして複数の改善PJTを担い、その後新規事業コンサルタントとして事業計画策定支援を遂行。2021年1月よりマネジャーに着任。マーケティングやサービス開発など多岐に渡り担当し、現在は人材開発・ラーニングデザイン部にて人材開発支援に従事している。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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