
パーソルグループは、「はたらく」を応援するための寄付活動を
集まった寄付金の寄付先は、特定非営利活動法人シブヤ大学です。
シブヤ大学は、誰でも無料で参加できる“まちの学び場”を提供するNPO法人です。校舎を持たず、街中を教室にし、2006年の開校以来1,600以上の講座を開催、45,000人が参加しました。日常生活を豊かにする学びをテーマに、誰もが気軽に集い、対話し、学べる場を目指しています。運営は企業、行政との協働や寄付、500名以上の登録ボランティアによる支援で成り立っています。
<プロフィール>
写真左:大澤 悠季氏
特定非営利活動法人シブヤ大学 学長(理事)
留学先のイギリスで見た、社会的なトピックが気軽に話される光景に衝撃を受ける。卒業後は沖縄県今帰仁村にて高校魅力化プロジェクトに携わり、地域における大人の学び続ける姿勢の大切さに気付く。自分たちの生きる社会のことを安心して話すことができるプラットホームをつくるため、シブヤ大学で授業企画・ブランディングに取り組んでいる。
写真右:中山 友希
パーソルホールディングス株式会社 はたらくWell-being推進室長
パーソルキャリア(旧インテリジェンス)入社後、営業を経て経営企画、事業企画を担当。2018年にパーソルキャリアのミッション策定プロジェクト担当としてアンカースターへ出向。帰任後は対外的なミッション浸透のため、産学官とのパートナーシップを推進。2020年からはパーソルのグループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現に向け、パーソルホールディングスへ転籍、はたらく領域におけるWell-beingのグローバル指標策定、浸透に取り組む。2023年4月に新設されたはたらくWell-being推進室長に就任。
笑顔測定器とは
カメラに映った顔の画像を解析して、目や口の動きなどの情報をもとに笑顔度を計測する機械。笑顔度から「笑顔レベル」を大・中・小の3段階に分類し、計測された笑顔のポイント数に応じて寄付を実施します。

「わたし」を主語にする社会へ——学びと“はたらくWell-being”の共通点
大澤氏:今回、なぜシブヤ大学に寄付してくださったんでしょうか?
中山:当社はグループビジョンである「はたらいて、笑おう。」の実現に向けて、はたらくことを通じてその人自身が感じる幸せや満足感
シブヤ大学の活動を拝見する中で、学びを通じて自分の選択肢が広がり、その行動が社会にどんな影響を与えられるのかを知ること。そして、その過程で仲間とのつながりが生まれていくこと——そうした一連の流れが、私たちが大切にしている
そんな想いから、今回寄付をさせていただくことになりました。
大澤氏:ありがとうございます。私たちの活動に“はたらくWell-being”と通じる点を感じていただけたのはとてもうれしいです。
シブヤ大学は、「自分の意志に基づいた選択や行動が社会に影響を与えると信じ、大きく考え、小さく行動する人のための“学びの場”をつくる」ことをミッションに掲げています。社会課題の解決や社会変革を直接目指すというよりも、「一人ひとりの小さな変化こそが、やがて社会全体を変えていく」と信じて活動しています。
私たちが大切にしているのは、以下の6つのキーワードです。
「学びはもっとゆるくていい」「まじめなことも話したい」「同じ空間で誰かとともに学び合う」「みんなでつくる」「誰もが無料で参加できる」「まちじゅうが学びの場に変わる」。
ここでいう「学び」とは、専門的な技術を身につけたり、研究をしたりすることではありません。多様な授業や仲間とのつながりの中で、自分なりの答えを見つけるきっかけを提供する場、それがシブヤ大学の目指す「学びの場」です。

中山:大澤さんが学びをどう捉えているのか、もう少し教えていただけますか?
大澤氏:本来、学びは成果や目的に捉われなくていいものだと思っています。「好きだから学ぶ」「楽しいから学ぶ」「自分のために学ぶ」といったように、自分軸に「戻る」ための手段だと思っています。多くの人が、受験や就職活動、資格取得といった誰かに評価される場面の中で生きてきました。さらに、近年ではSNSの普及や時代的な背景もあり、常に肩書きや役職がついてまわるようになっています。SNS上では、プロフィールや投稿を通じて自分を説明・表現する機会が多く、フォロワーや他者との関係性の中で「何者か」であることが求められやすくなっています。そうした社会の中で、「自分らしく生きること」は、思っている以上に難しいと感じています。特に、はたらいている世代だと「弊社」が主語になりがちで、「わたし」が主語になることって意外と少ないのではないでしょうか?
中山:そうですね。「自分軸」という考え方は、

デジタル化が進んだ時代。あえて同じ空間に集まって学ぶことにこだわる理由
中山:先ほどのお話を聞いて、「学び」とは、自分の興味や好きなことに立ち返ることなんだと感じました。そして、シブヤ大学が大切にされている「同じ空間で誰かとともに学び合う」ということも印象に残りました。学びを通じて「何者でもない自分」として仲間ができ、つながりが生まれることがとても素敵ですよね。
大澤氏:その部分こそシブヤ大学がずっと大事にしてきていることなんです。誰かと関わることで得られる気付きはとても大きくて、たとえば隣の人のふとした一言で視野が広がったり、自分の一言が誰かの悩みを軽くしたりすることもあります。そんなふうに、「自分も誰かに影響を与えられる存在なんだ」と感じられる場になればと思っています。だからこそ、参加者の皆さんはデジタル化が進んだ世の中でも、わざわざ渋谷の同じ空間に集まって学ぶことを求めているのではないでしょうか。
中山:私たちは、はたらく個人の状態を可視化する
ちなみに、そうした場にはどんな方が集まってこられるのでしょうか?
大澤氏:シブヤ大学に参加する方は、今の仕事に不満があるというよりは、自分が今後どうしていきたいのかをゆっくり考えたいといったような、何かもがいているような方が多い気がしています。そういう方々にとって、初対面の仲間だからこそ、自分が今感じている不安や悩みを相談しやすかったりするのかもしれないですね。
多様な価値観に出会って自分の大事にしたい価値観が分かったりとか、自分の中に問いを持てるようになったりとか、少し立ち止まることで、自分を主語にしてはたらくことを見つめ直す時間が生まれているのだと感じます。

大人が楽しく生きて、「はたらいて、笑おう。」となるためには?
中山:シブヤ大学のビジョンでもある「大人が楽しそうな社会」の実現のために課題に感じている点はありますか?
大澤氏:3つくらいあると思っています。一つは、常時接続されている社会。やっぱりSNSが大きいと思うんですが、なんでも見え過ぎちゃうのはありますよね。
中山:ほかの人の様子が見えることで自分と比べて焦ったり、不安になったりしますよね。
大澤氏:そうなんです。多様な価値観が受け入れられるようになってきたとはいえ、既存の評価軸から外れることは勇気がいるし、一度外れると分かりやすい評価基準がなく、自分で評価をしなきゃいけない難しさもあると感じています。だからこそ、自分軸を持っているかは大事ですよね。
二つめは、人がたくさんいるけど、つながっているわけではないといった孤立感。
三つめは、社会を変えられる実感が持てないこと。どうせ変わらないという経験をたくさんしてきてしまっていて、そこに対する希望の欠如は、課題だと思っています。
希望の欠如に対して、学びという手段を使い、一度失った自分軸を取り戻す。知らない人と出会う。「失敗しても大丈夫」な安心の場を提供する。このような小さな成功体験を積む機会をつくっていきたいと思っています。
中山:「失敗しても大丈夫」ということは、自分でいられるということかもしれないですね。最初はすごく小さな一歩かもしれないんですけど、一人ひとりが小さな決断から自分が本当に心地良いことや、自分らしくいられることを追い求めて行動できると良いなと思います。それを学びや、仲間の存在が後押ししてくれるんじゃないかなと思います。

大澤氏:あとは、やっぱり自分が満足いくまで考えられる、立ち止まる時間は必要ですよね。結論を出さなくても良くて、そのときどきの自分の中での答えを見つけていく時間を定期的に取れることは必要だと思っています。
中山:最後に、今後の展望について教えてください。
大澤氏:「学びの入り口」としての授業をこれからも継続しながら、その先のレイヤーの活動を増やしていくことです。一つ大きな展望として、海外との連携を進めていきたいと考えています。コロナが明けてから、シブヤ大学と似たような活動をしている海外の団体とつながる機会が増えてきました。たとえば、昨年は韓国の団体の方々が来日し、交流プログラムを行いました。韓国も日本以上に競争社会で、生きづらさを感じている人たちが多い中、そういった方々を対象に週末滞在型のプログラムを実施している団体です。今年はその団体とコラボして、日本から韓国に行くプログラムを企画しています。秋か冬ごろにシブヤ大学で参加者を募る予定です。また、渋谷にある「拠点」を活用していくことにも力を入れていきたいと思っています。拠点を活用しやってみたいことを実験できるような、小さなアクションにつながる場になったらいいなと思っています。そして、拠点があることで、海外と日本をつなげるハブのような役割も果たせるのではないかと感じています。
今いる場所を一度離れてみることで、また普段交わらない人たちと出会うことで得られる気付きは、非常に大きいと感じています。「大学」と名乗っているからこそ、いつかは“交換留学”のような仕組みや、海外からの“留学生”が混ざるような形もつくっていけたらと考えています。学びの拠点を軸とした海外との連携プログラムや授業は、今後の新規事業として積極的に展開していきたいですね。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。