
パーソルグループはグループビジョンとして『はたらいて、笑おう。』を掲げ、誰もが自分の意思で「はたらく」を選び、自分なりの価値を発揮する社会の実現を目指しています。
本連載では、パーソルグループが描く2030年に向けた価値創造ストーリーの「今」の姿として、「はたらく」にまつわる社会課題の解決に挑む、リアルな取り組みの数々をご紹介します。
第1回は、障害者雇用に関する課題解決への挑戦です。
本記事のサマリー
・障害者数の増加と法定雇用率の引き上げが進む中、企業には雇用数の確保だけでなく、採用後の定着・活躍が求められている
・パーソルグループの障害者雇用の中核を担うパーソルダイバースは、精神・発達障害者約1,400人の雇用と就業1年後の定着率94%を実現
・高い定着率を支える仕組みとして、複雑な業務を分解・定型化する「業務標準化」を徹底し、障害者のストレスを軽減
・加えて、独自開発のサーベイによる「体調変化の可視化」と専任部隊による支援体制で、心身の健康管理と就労定着を支援
障害者雇用を取り巻く社会課題として「障害者数の増加」「企業の法定雇用率引き上げ」などは年々深刻化しており、早急な対応が求められています。一方、企業の現場では「障害特性にマッチする業務をどう確保すればいいのか」「障害者の抱える不安や困りごとにどう寄り添うか」「就業後の定着率」など、障害者雇用を進めていく上での課題が顕在化しています。こうした課題に真正面から向き合い、はたらく機会の創出と持続的な就業支援を通じて、社会課題の解決に挑戦しているのが、パーソルグループの『パーソルダイバース株式会社』です。
今回、パーソルダイバースで障害者の雇用創出に取り組む、現場の責任者である受託サービス第1本部 執行役員 杉田 清志(冒頭写真左)と、企画部門の責任者として現場を支援する受託サービス企画推進本部 本部長 佐々木 亮(冒頭写真右)へのインタビューを実施。パーソルダイバースの具体的な取り組みと成果を挙げながら、障害者雇用における課題にどう向き合い、『はたらいて、笑おう。』を実現しているかについて話を聞きました。
■パーソルダイバースについて
パーソルグループは、2024年度にグループ全体で5,000人を超える障害者雇用を創出しています。その中核を担っているのが、人材紹介事業、コンサルティング事業、就労移行支援事業、特例子会社としての受託事業を展開するパーソルダイバースです。中でも特例子会社としての受託事業では、グループ各社から業務を受託して2,099人(2025年4月1日現在 内訳:身体障害者210人/知的障害者495人/精神・発達障害者1,394人)の障害者を雇用しており、多様な人材の活躍を支えるとともに、多くのはたらく機会を創出しています。
社会課題とパーソルグループとしての役割
■障害者数の増加傾向が続く中、採用数だけでなく定着率が課題に
——まず、障害者雇用に関する現状をお聞かせください。また、現場ではどのような課題に直面していますか?
佐々木:障害者数は精神・発達障害者を中心に増加傾向が続いています。それに伴い、企業に求められる法定雇用率も年々引き上げられており、企業側にはより多くの障害者雇用への対応が必要になってきています。
民間企業における障害者の雇用状況

杉田:そうした中、障害者雇用の「量」を確保するだけでなく、定着や活躍といった「質」の確保がますます重要になっています。独立行政法人の公表データによると、障害者の就業1年後の定着率は約50%~70%となっており、障害者の定着が多くの企業で課題となっています。中でも精神障害平均は49.3%と最も低く、その背景には、業務が煩雑・複雑なため慣れることが難しく退職してしまう、障害者自身で健康管理ができず就業継続が困難になるなど、さまざまな要因があるようです。
障害別にみた1年後の職場定着率

佐々木:パーソルダイバースでは約1,400人の精神・発達障害者の雇用を実現した上で、就業1年後の定着率が国内平均値49.3%に対して94%という極めて高い水準を維持しています。
パーソルダイバースにおける精神・発達障害者の雇用を支える取り組み
■徹底した業務の標準化が、安心してはたらける環境づくりにつながる
——高い定着率を実現できているポイントは、どこにあるのでしょうか?
杉田:一つは、業務の煩雑・複雑さを解消するための標準化です。業務を受託する際に、どんなに複雑な業務であってもていねいに分解して定型業務に置き換える、つまり徹底的な業務の標準化に取り組んでいます。
佐々木:分解した定型業務ごとにフローやマニュアルが可視化されていれば、迷ったときも判断しやすいですよね。
杉田:判断基準が明確になると、業務に伴うストレスが大幅に軽減されます。ストレスの少ない業務は精神・発達障害者にとって親和性が高く、やればやるほど習熟度が向上し、スピードが上がりミスが減っていきます。
佐々木:業務の標準化によってストレスが軽減することで、結果的にサービス品質の向上にも寄与するわけですね。
杉田:さらには、サービス品質が高まることで顧客満足度も向上します。それによって新たな業務依頼の獲得にもつながりますし、顧客からの良質なフィードバック(直接のお礼や、目標評価への還元など)がメンバーのモチベーションアップにもつながっており、好循環が生まれています。

■健康状態の可視化と充実した定着支援の仕組みで、はたらき続けられる職場へ
——業務面以外に、定着率向上のために取り組んでいることはありますか?
佐々木:定着率向上を実現する上で、もう一つ重要な要素となるのが、障害者の心身の健康管理です。精神・発達障害と言っても、実態は多種多様です。たとえ診断名が同じだとしても人によって特性が異なるため、診断名で対処法を決めることができず、個々人に応じた支援が必要となります。
杉田:一人ひとりに寄り添った支援が必要となると、どうしても管理者の支援力に頼った属人的な組織運営になってしまいがちですよね。
佐々木:その点は課題に感じていました。定着支援の品質が管理者によって大きなバラつきがあったので、組織拡大とともに持続的な組織運営を実現するためには、暗黙知を形式知化する必要がありました。この課題を解決するために、これまで2,000人を超える障害者雇用を通じて培ってきたノウハウを活かして、障害者雇用に特化したパルスサーベイを自社で開発。これによって体調変化を可視化する仕組みを構築することができました。
杉田:体調変化はどうしても主観的な判断になりやすく、障害者本人も管理者も正しく変化を捉えられないことが多いので、仕組みで客観的に判断できることはとても有効だと感じています。
佐々木:また、現場の管理者だけに担保しないという観点では、業務を受託するライン管理(上司と部下の縦の関係)に加え、就労定着支援を目的とする専任部隊を設け、普段接点のない支援員との面談を横断的に実施しています。
杉田:体調変化を可視化する仕組みと、縦と横の支援体制のおかげで、問題の早期発見・早期対処につながっていることを現場でも実感しています。

■障害者雇用・就業支援を通じて「はたらく機会の創出」に貢献
——今後の展望や意気込みを聞かせてください。
佐々木・杉田:日本を取り巻く問題として、障害者数と法定雇用率は今後も上昇トレンドが続くことが想定されています。そういった状況の中、パーソルグループでは、パーソルダイバースの取り組みも含めてグループ全体で5,000人以上(2024年度)の障害者雇用を実現し、社会課題解決に貢献しています。今後もパーソルダイバースの事業を通じ、障害者雇用や障害者就業支援を強化することで『はたらく機会の創出』を実現し、パーソルグループの長期視点での社会価値向上、ひいては企業価値向上を目指します。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。