パーソルグループは、将来世代を重要なステークホルダーと位置づけ、対話を強化する「FR(Future Generations Relations)活動」を推進しています。その中の一環として2023年より、一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム(以降、CPF)が運営する“地域みらい留学”を中心とした、全国の高校魅力化についての一連の活動に対しビジョンパートナー契約を締結しています。
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ビジョンパートナーとして、パーソルとCPFのさまざまな協業を生み出してきたのが、パーソルホールディングスからCPFに出向し、事業を推進してきた出濱 義人です。これまでどんな取り組みを推進してきたのか、パーソルがFR活動にかかわる意義は何か、出濱に話を聞きました。
——まずは、パーソルがCPFとビジョンパートナーを締結した背景から教えてください。
パーソルグループは“はたらくWell-being”創造カンパニーとして、グループビジョンである“はたらいて、笑おう。”の社会の実現を掲げています。仕事を通じた幸福を感じられる社会の実現を目指す上で、自分で自分の「はたらく」を選択し、そこから喜びや幸せを感じてもらうことが重要であると考えています。
そのためには、若いうちから自らの想いや意志を持って自分の未来を選択していくことが重要です。そのように将来世代が自分自身で生き方や進路を選べる土台をつくるために、双方の強みを活かし「意志を持って自分が踏み出す一歩を、自分で選択する人材を育成する」という目的に向け、協業をスタートさせました。
——出濱さんはCPFに出向する形で取り組みを推進していますが、どういった背景でそのようなはたらき方になったのでしょうか?
まず、CPFがメインで推進している事業として「地域みらい留学」があります。これは、自宅近くの高校の中から自分の偏差値を軸に高校を選ぶのではなく、住んでいる都道府県の枠を超えて、自分の興味関心にあった高校を選んで、3年間をその地域で過ごす「国内留学」プログラムです。つまり、自らの気持ちや意志を尊重した選択ができる環境を「越境」をテーマに社会に提供しているんです。そのCPFが、もう少し気軽な気持ちで一歩踏み出せる、数日間の地域越境プログラムを展開できないかと構想していました。
私は出向する前、パーソルで、日常の環境から非日常に飛び出すことで学びや自己変容を促す越境学習プログラムの企画開発を行っていました。「越境」を通して、日常の中で無意識のうちに固定化した考え方や価値観が再構築され、人が変わっていく姿を目の当たりにする中で、「越境」することのインパクトを肌身で感じていました。
一方「越境」の可能性を感じながらも、約10年間社会人向けの越境学習プログラムを行ってきていたこともあり、正直新しいチャレンジをしたいと感じていて……(苦笑)。そんなタイミングで、CPFでの生徒向けの越境プログラムの新規事業開発にかかわるお話をいただき、チャレンジすることになりました。
——未知のチャレンジの中で、出濱さんはどんなことに取り組まれたのですか?
大きく3つの施策があって、高校生へのキャリア教育プログラムである「地域みらいキャリア(みらキャリ)」、先にお伝えした数日間の地域越境プログラム「おためし地域留学<中学生向け>」「地域みらい旅(みらたび)<高校生向け>」、そしてパーソルで実施している既存施策とのコラボレーションです。
まず、1つ目のみらキャリは、全国の高校から15名の生徒がオンライン上で集まり、全10回の授業やコーチングなどを通して、「はたらく」についての考えを深めていくプログラムです。このプログラムには、パーソルの社員6名が有志でメンターとして参加してくれており、約半年間、生徒が自身の未来のはたらく姿について想いを馳せるプロセスに伴走してくれました。
2つ目の地域越境プログラムは、私が出向して新規事業として立ち上げたものです。CPFのメイン事業の地域みらい留学は高校生活の3年間を親元から離れて「越境」することもあり、興味はあっても進学に向けて躊躇してしまう子も少なくありません。そこで、おためし的に、旅するように地域でさまざまな学びを体験できる3~4日間の越境プログラムをリリースしました。
プログラムを実施する中で、生徒たちの意識・行動変容が早いことに驚きました。まだ思考が凝り固まっていないということですね。首都圏に暮らす中高生にとって、地方に行って地元の人たちと交流することだけでも大きな冒険になり、軽やかに変わっていく。彼ら彼女らの感性に沿って、自由に新鮮な体験ができ、魅力的な人と出会う環境を用意すれば、自発的に学びにしてくれる姿を目の当たりにしました。
3つ目のコラボレーションはいくつかあるのですが、代表的なものは、かつて私が担当していた社内研修とのコラボレーションです。社内研修では広島県の大崎上島高校の生徒に協力いただき、2泊3日でパーソルの研修を企画しました。ここでは、参加者が高校生とフラットに「はたらく」について対話する時間を多くつくったのですが、これは想定以上のインパクトがありました。
——どのようなインパクトがあったのでしょうか?
高校生って、バイアスやいい意味で遠慮がないんですよね。そのため、ド直球の質問が飛んできます。たとえば「なんで、はたらいているんですか?」と聞かれると、聞かれた本人は不意をつかれたように「自分はなんのためにはたらいているんだろう?」と、はたと我に返るんですよ。そういったやりとりが参加者の強烈な内省のきっかけになっていました。
特に印象深かったのは、「将来どうなりたいか」というテーマで話をした際に、参加したパーソル社員が「○年後にマネジャーになって……」という話をしていたところに、高校生が「ぼくは空を飛びたいんですよね」って言ったんです。その瞬間、その社員は頭を叩かれたかのような衝撃を受けたといっていました。「ああ、自分はなんて狭い世界で物事を考えているんだろう」と。
いつの間にか、自分の内面的な動機ではなく、外面的な期待や評価を判断軸にはたらいていた(はたらくを選択していた)自分への大きな気付きですよね。その対話を通して、大きく表情が変わったシーンが印象的でした。
——パーソルがFR活動に取り組む意義はそういったところにもありそうですね。
そうですね、この点については大きく2つあると思います。
1つ目はパーソルのグループビジョンにつながる「自己決定」の機会を、若い世代に対して一緒につくっていけるということです。生徒自らが、自分の意志で高校を選択し、将来実現したいことに向けた一歩を踏み出すことは、ゆくゆく自己決定できる大人になっていく貴重な機会になるのではないかと考えています。そういった人たちを世の中で増やしていくことが、パーソルのグループビジョンの実現につながっていくはずです。
2つ目はパーソル社員への新たなきっかけづくりです。今回さまざまな取り組みについて参加者を募ったところ、想定を上回る多くの方に応募いただきました。FR活動をはじめとしたキャリア教育に関心が高い人が多いということの表れです。そういった社員の眠っている好奇心を掘り起こすきっかけになることで、担当する業務以外でもパーソルに所属することのやりがいを感じてもらえると思っています。
——出濱さんご自身は、この出向で得たことは何かありますか?
得たことは本当にたくさんあります。スキルもマインドも両面において、成長できる環境であることは間違いないです!
1つ目としては、初めて新規事業開発の経験ができたことです。その中でも、いわゆるソーシャルビジネスのど真ん中を推進し社会的インパクトを出していくことを第一義にしながら、経済的にも持続可能なものにしていくことが求められる事業づくりは、私にとっては高いハードルでした。この難易度の高い事業づくりを自ら率先しつつ周囲と協働しながら事業デザインし、その事業推進を0から体験できたことは大きいですね。
もう1つは、ベンチャーに近いCPFでの進め方との違いを体験できたことでしょうか。とにかく自由で「とりあえずやってみて」という風土の中で、「さて、何から始めよう」というところからのスタートで、自由と責任を同時に感じながら物事を形にしていくプロセスから精神力や丹力がついたように思います。
またCPFには、教育分野の変革を志す人に加えて、第一線で町づくりや国づくりに取り組む大人が分野を超えてかかわっており、そのような魅力ある方々との協業やネットワークができることも自分の財産になるように思います。
——最後に、出濱さんはこれからどんなことにチャレンジしていきたいですか?
2つあります。1つは、今改めて大人(社会人)のリーダーシップの在り方や行動変容の領域にかかわり、探究と実践をしていきたいと考えています。未来を担う将来世代の受け皿になる大人が「組織や会社、社会とどのようにかかわっていくのか」。そのような問いから、自己を見つめなおすことは、自らの仕事や人生に対する在り方をアップデートしていくことにつながります。会社や社会に開かれた個人(大人)が活躍する世界が広がることはワクワクしますし、若い世代のロールモデルとなって、若い世代に循環していくように思っています。
もう1つは、多くの人が社外の魅力的な人たちとつながり、コミュニケーションできる機会を増やしていくことです。今回社外の組織ではたらくことで、自分にとても良い影響を与えてくれました。社内に閉じず、さまざまな社外の方とつながることで、新たな研修やコミュニティのスキームをつくっていきたいと思います。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。