女性社外取締役が対談、パーソルのDEIは社会を変えられる

パーソルグループは、DEI(Diversity, Equity & Inclusion:ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の取り組みを通じて一人ひとりが活躍できる組織・社会を目指しています。

今回は、パーソルホールディングスの女性社外取締役であるコーポレートガバナンス委員会委員のDebra Hazelton(デボラ・ヘーゼルトン)氏と、監査等委員の榎本 知佐(えのもと ちさ)氏の対談を実施。

国内外でキャリアを積み、DEIに尽力してきた二人は「DEIの推進には、今がベストなタイミングだ」と話します。「DEIにおいて、パーソルグループは巨大なポテンシャルを秘めている」と言い切る真意を聞きました。

Debra Hazelton(デボラ・ヘーゼルトン)
社外取締役 コーポレートガバナンス委員会委員

シドニー大学、ニューサウスウェールズ大学、慶應義塾大学で学位取得。コモンウェルス銀行の東京支店で、海外支店初の女性財務部長と支店長を務める。株式会社みずほフィナンシャルグループで、日本人以外で初のグローバル人材戦略部の共同部長に就任。現在は、豪州輸出金融公社会長、パーソルグループ、ビクトリア州財務公社(TCV)、およびオーストラリア郵便公社(AP)の社外取締役を務める。2024年度、日本政府より外務大臣表彰を受賞。

榎本 知佐(エノモト チサ)
社外取締役(監査等委員)

新卒で株式会社リクルートに入社。国内外の企業にて広報戦略の責任者を歴任。東京電力株式会社(現:東京電力ホールディングス株式会社)では執行役員として多様なステークホルダーとの対話をグローバルに実践。現在は、パーソルグループ、日本郵便株式会社、イオンモール株式会社で社外取締役、明治大学の理事兼広報戦略本部員を務める。

目次

自らの経験を持って、DEIの重要性を実感してきた

──はじめに、Debra Hazelton(以下、デボラ)氏がDEIに携わるようになったきっかけから教えてください。

デボラ氏:私はもともと銀行員としてキャリアをスタートしました。2014年、オーストラリアのみずほ銀行で7年間支店長を務めていたタイミングで、みずほフィナンシャルグループ(MHFG)本社から声をかけていただきました。MHFG 佐藤 康博元頭取の「MHFGは、多様な人材を活用することで事業成長を遂げてきた。より強い、グローバルなDEI推進を任せたい」との想いのもと、グローバル人材戦略部の共同部長に任命されました。

デボラ氏:MHFGは国内外に多くの拠点があり、国籍や年齢、性別、文化などが異なる多様な人材がチームになってはたらいています。そのような中で私は、誰もが最大限能力を発揮し、はたらきやすいインクルーシブ(※1)な職場づくりに尽力してきました。

一つは、国内外をつなげるネットワークの構築です。国内外の経営層を中心に、現場の従業員たちとディスカッションを重ねるうちに、「つながり」や「ネットワーク」が少ないという課題が見えてきました。多様な人材がはたらいているにも関わらず、社員同士の強いつながりが少なかったために相互理解が十分に進んでいなかったのです。
また、LGBTQ+への取り組みにも着手し、理解を深める研修の実施や、セクシュアルマイノリティについて支援を行うアライグループ(※2)の立ち上げを行いました。そして、2017年にMHFGは邦銀で初めて「東京レインボープライド」(※3)でのパレード行進をしました。私は、これまで担ってきた職務において最も職位の高い女性であった経験が多いことから、自身のキャリアを通してDEIに関わっています。

──次に、榎本 知佐(以下、榎本)氏がDEIに関わるようになったきっかけを教えてください。

榎本氏:私は大学卒業後にリクルートに入社し、多様な人々がはたらき、女性も活躍する環境で社会人をスタートしました。その後、外資系企業では、上司・同僚ともに非常に多国籍なメンバーと仕事を進める中で、一層多様性を肌で感じることに。たとえば、イベントに向けてユニフォームをつくる場面でも、国ごとに色彩感覚や「良い」と思うデザインが異なっているなどの文化の違いを、身をもって知りました。

榎本氏:私自身がDEI、中でもジェンダーダイバーシティを推し進める役割を担うようになったのは、2014年から4年間、東京電力(現:東京電力ホールディングス)で社外から初の女性執行役員を務めた際に、会社が女性管理職の育成を大きな課題として認識していたことがきっかけです。海外の有識者からジェンダーダイバーシティの重要性を指摘され続けており、経営層とともに女性の管理職者を輩出するために議論し、育成プログラムを検討しました。
このように、いろいろな環境での仕事を通じて、多様な人材が心地良くはたらき活躍するためにはDEIが必須だと強く意識するようになりました。

デボラ氏:榎本さんがおっしゃるように、私も経験を重ねることでDEIの重要性を肌で感じました。
ダイバーシティ(多様性)の重要性を理解することはとても重要ですが、多様な人材がともにはたらくことの強みを生かすためには、真の意味での「インクルージョン(受容、包摂性)」の意識を醸成することが必要です。「インクルージョン」を感じることで、すべての多様な人々が会社に貢献し、仕事を楽しむことができるのです。

日本企業の成長のカギはDEIの推進にある

──現在、なぜ企業経営にDEIの推進が求められているのでしょうか。

榎本氏:2015年に国連サミットで採択されたSDGsで「ジェンダー平等を実現しよう」という目標が掲げられ、国際社会は性差にかかわらず平等な機会提供をすることを目指しています。そして、日本政府は「社会のあらゆる分野において、可能な限り早期に管理職相当の立場における女性比率を30%にすること」「東証プライム上場企業は、2030年までに取締役における女性比率を30%以上とすること」という明確な基準を経済界に示しています。多くの企業はDEIに対する理解を深め、経営陣が取り組んでいます。

デボラ氏:さらに、人口が減り続けているという日本の現状から見ても、多様な人材の活躍は重要です。異なる背景を持つ人々が互いの多様性を認め合い、コラボレーションすればより革新的なアイデアが生まれるかもしれません。その結果、事業が成長し、ひいては日本経済の成長とさらなる社会の公平性につながっていく可能性が大いにあります。

──そのような背景を受けて、パーソルグループにDEIの推進が求められているのはなぜでしょうか。

榎本氏:パーソルグループは、総合人材サービスを提供しています。私たち自身が、多様な人材一人ひとりの活躍を意識して、人的資本経営に積極的に取り組むこと、そしてそれを社会に示しているかどうかはとても重要です。また、パーソルグループはAPAC地域でも事業を展開しており、従業員やお客さまなどたくさんのステークホルダーがいます。女性取締役比率などの社会的に求められている数値を満たしていなければ、海外投資家や金融機関から指摘を受ける可能性もあります。経営体制へ賛同いただき、資本面でのサポートも得て、事業を成長させていかなければなりません。

デボラ氏:APACでビジネスをするということは、多様なメンバーと一緒にはたらくことであり、その多様性を強みにできればより革新的な事業戦略の展開が可能になります。そしてそれは、ステークホルダーへのより良いソリューションの提供を可能にします。たとえば、MHFGは2017年に同性カップルの住宅ローンの承認プロセスの構築を行いました。このように多様性を互いに理解し合うことで生まれる発想は、新たな事業の成長につながります。

──お二人は、DEIが実現した理想の企業の姿はどういったものだとお考えでしょうか。

デボラ氏:先日、NPO法人J-Win(※4)の会合で、第一生命ホールディングス株式会社から素晴らしいコメントを伺いました。J-Winは、日本企業におけるダイバーシティ経営の推進と定着を支援する目的で設立された団体です。そこでの提言は、「女性の上級職への登用にあたり、難しさに直面することを認識したうえで努力しよう」というものでした。その困難を避けようとするのではなく、女性が経験を通じて学び成長できるように、十分な支援を提供することが重要だと述べられていました。

榎本氏:DEIの実現には、国籍、年齢、ジェンダーなどの多様な視点を考えなくてはなりません。特にジェンダーは喫緊の課題です。2024年6月に世界経済フォーラムから発表された「Global Gender Gap Report」で日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中118位であり、かなり低水準です。

あらゆるビジネスシーンにおいてジェンダーの区別がなく、一人ひとりが活躍していることが理想です。企業の代表として多くの女性リーダーが登場してほしいです。たとえば、セミナー登壇の男女比率が同じであるなど、これからはあらゆる場面で女性の声が自然に聞こえるようになるでしょう。

パーソルグループは巨大なポテンシャルを持っている

──パーソルグループの現状についてお聞かせください。DEIにおいてパーソルグループの強みはどこにあると思われますか?

榎本氏:最大の強みは、女性創業者である篠原 欣子さんの精神と経営理念が今に至るまでしっかりと受け継がれていることです。
経営層においては、昨年から社外取締役に、女性であり外国籍であるデボラさんが参画してくださったことが大きなターニングポイントだと感じています。業界の中でもまだまだ例が少ない多様性を具現化した経営層の土壌が醸成されつつあります。

デボラ氏:ありがとうございます。DEIの推進に強い信念がある榎本さんの存在も頼もしいです。榎本さんの尽力のおかげで、経営層は「事業の成功のためにはDEIが重要だ」ということを十分理解していると感じます。

──お二人の存在は、パーソルグループの経営面における大きな強みですね。一方、現場にはどのような伸びしろがありますか。

デボラ氏:経営層はもちろん、若手世代にも巨大なポテンシャルがあります。DEIへの理解も深く、そしてはたらく環境にも多様性を求めていると感じます。社員一人ひとりがジェンダーや国籍、年齢、価値観、ライフスタイルなどが異なる多様な社員と交流する時間を意識的に持ち、シニア世代から若手世代までがワンチームとなれば、DEIの大きな前進が期待できます。私は、パーソルグループは「もっとできる!」と思っています。

榎本氏:私もパーソルグループには期待しかありません。従業員の皆さんには、示されているレールに乗るだけではなく、自ら方向や速度を変えることを楽しむ意識を持ってほしいです。大きな何かをしなければいけないわけではありません。たとえば、「オフィススペースをもっとはたらきやすく変えてほしい」という意見が多様な視点から集まれば、結果的に多くの社員にとってもさらにはたらきやすい環境になるはずです。小さなことでも、それがDEIへの一歩につながるのです。

一人ひとりが、社会を変える「はたらいて、笑おう。」カルチャーの担い手

──最後に、お二人は今後のパーソルグループに何を期待されますか?

デボラ氏:今、日本の国民、政府、そして経済界もDEIの推進を望んでいます。パーソルグループは総合人材サービスを提供する会社として、人的資本の側面から企業や経済、また公平な社会へとポジティブな影響をもたらすことが可能です。グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」を、社会につくり出せる企業だと私は信じています。「We can do this(私たちならできる)!」を胸に、パーソルではたらく皆さんとともにDEIの実現を目指していきたいです。

榎本氏:今は私たちみんなにとって、DEIの推進にベストなタイミングだと思います。国内外のさまざまな人材とつながることができ、多様な一人ひとりの活躍が求められている。たくさんのチャンスが溢れています。特にパーソルグループは経営層の理解も十分にあり、挑戦を後押ししてくれています。社員一人ひとりが自分のやりたいことや、自身の成長について考えることが確実にDEIの実現につながっていくのです。

パーソルグループは、テンプスタッフ(現:パーソルテンプスタッフ)を創業した篠原 欣子さんが築き上げたものを引き継ぎ、進化させていくフェーズにあります。社員一人ひとりが「はたらいて、笑おう。」カルチャーの担い手なのです。私は、「はたらいて、笑おう。」で溢れている社会の実現を、皆さんとともに目指していきたいです。

デボラ氏:明日の朝、起きたときに「I can do this(私ならできる)!」と唱え、自分の行動が会社、そして社会によい影響を与えるんだと自覚することから始めてみるといいかもしれませんね。

(※1)それぞれが持つ特徴によって異なる個性を持つ人が、互いに尊重しながら共生すること。
(※2)LGBTQ+に代表される性的マイノリティを理解し支援するという考え方、あるいはそうした立場を明確にしている人々を指す。
(※3)アジア最大級のLGBTQ+関連イベント(参考:https://tokyorainbowpride.com/
(※4)特定非営利活動法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク(参考:https://j-win5.jp/

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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