
パーソルキャリア株式会社は、「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」をミッションに掲げ、はたらく個人がキャリアや人生に主体性を発揮する「キャリアオーナーシップ」を育む社会の実現を目指しています。
ミッションの実現を目指し、社内外でさまざまな取り組みを進める中、2018年から他人に目標を立ててもらうワークショップ「タニモク」の提供をスタートしました。「タニモク」は、利害関係のない他人同士で、お互いに目標を立てあうワークショップです。2018年9月の本格スタート以来、個人を始め企業や官公庁、学校など多くの組織、団体でも取り入れられ、新たな目標と行動を後押しする機会をつくり続けてきました。
そして今回、「タニモク」の開発者であるパーソルキャリアのミッション共創推進部の三石 原士が、「タニモク」の活動を通して得た学びをまとめた書籍『かくれた「強み」をみつけよう。―自分の舞台がみつからないあなたへ』(日本経済新聞出版)を刊行。「タニモク」のこれまでの歩みと、書籍に込めた想いを聞きました。

三石 原士
パーソルキャリア株式会社
プロダクト&マーケティング事業本部 ブランド・マーケティング本部 マーケティング企画統括部
ミッション共創推進部 共創プロデューサー
大学卒業後、渡独。設計事務所にてキャリアをスタート。
帰国後、大手情報サービス会社を経て転職サービス「doda」の立ち上げメンバーとしてパーソルキャリア(旧社名:株式会社インテリジェンス)に入社。入社後はハイクラス転職サービス「doda X」やオウンドメディアの立ち上げなど、多くの新規事業、サービス開発のマーケティングをリードする。2017年「タニモク」を開発。現在はミッション共創推進部の共創プロデューサーとして「タニモク」プロジェクト、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」の事務局などを担当している。また、これまでのマーケティングやコミュニティ支援の経験とスキルを活かし、パラレルワーカーとしても活動中。はたらく個人のキャリアオーナーシップを育む機会をつくり続けている。
個人の取り組みが正式なプロジェクトへ。「タニモク」が生まれるまで
——2025年10月17日、「タニモク」の活動で得た気付きをまとめた書籍『かくれた「強み」をみつけよう。―自分の舞台がみつからないあなたへ』が出版されました。改めて、「タニモク」について教えてください。
「タニモク」は、利害関係のない人同士が、3〜4人のグループを組み、お互いに目標を立てあうワークショップです。1人ずつ順番に目標を立ててもらう主人公になります。主人公はまず自分の現状について話し、周りのメンバーはその人の目標を立てるための質問をします。そのあと、主人公以外のメンバーは主人公になりきったつもりで、自由に目標を提案します。すると、一人だけでは気付かなかった切り口が見つかったり、新しい行動の選択肢に気付けたりするんです。現在はパーソルキャリアのミッション共創プロジェクトの一環として、定期的にイベントを開催しています。



——「タニモク」は2018年に本格スタートしたとのことですが、始まりはどのような経緯だったのでしょうか?
プロジェクトが本格的にスタートしたのは2018年9月からですが、実は前身となる取り組みは、2017年ごろから私が個人的に行っていた1年間の「振り返り会」にあるんです。内容は、業界・業種を問わず、知り合いに声をかけ、1年間の振り返りを行うといったものでした。1年間どんなことがあったのか、そこで何を学んだのか。他者との対話を通して自身の1年を振り返るとともに、お互いの学びを深める場として行っていました。
振り返り会をする中で気付いたのは、利害関係のない他者の視点がキャリアに新たな選択肢を与えてくれるということ。また、当事者にとっては当たり前すぎて見過ごしていた可能性を、第三者が気付かせてくれるんですね。だからこそ、振り返りだけではもったいない。もっと前向きに未来の目標も考えてみようと思い、考えたワークショップが「タニモク」です。
もっと多くの人にこうした機会を持ってもらいたいとの想いから、当時私が編集長を担っていた「これからのはたらく」をテーマにしたオウンドメディアで「他者に目標を立ててもらうワークショップ」として記事を投稿しました。するとありがたいことに、記事は1月1日のデータや掲載初日で1,500「いいね!」を超える反響を得ました。また1月に行ったテストイベントも大盛況で、「ぜひうちの会社でもやってほしい」「コミュニティで実施したい」と、多くの声をいただきました。そうした多くの要望に応え、準備期間を経て2018年に正式に「タニモク」プロジェクトとして本格スタートすることになりました。「タニモク」の映写データや台本、ツールはすべて無償公開し、誰もが「タニモク」を活用できるようにしています。
書籍のテーマに据えた「強み」の本質とは
——これまでオンライン・オフライン問わずワークショップを実施されてきた中で、今回書籍を刊行されたのはなぜでしょうか。
「タニモク」プロジェクトは、キャリアオーナーシップを育む社会をつくるというパーソルキャリアのミッション活動です。そのため、今以上に「タニモク」というワークショップを広めていきたい、多様な組織・コミュニティ・個人がより良い目標を立てて、自分のキャリアの可能性を広げていくことを当たり前にしていきたいという思いがありました。そのためには、多くの人が手に取りやすい形でメッセージを伝えようと書籍出版を決めました。
——「タニモク」は、「自分にはない視点や気付かない可能性を他人に見つけてもらう」ことが醍醐味かと思いますが、書籍では「強み」がテーマになっています。その理由を教えてください。
実は当初、「他人に頼るキャリア」をテーマにしていました。「タニモク」のポイントでもある、他者の視点から自分の発想にはない選択肢が見つかる特性を主題にしていたんです。しかし、編集者や周囲の方々と対話を重ねる中で「『強み』を見つけ、『強み』の活かし方を伝える」ことのほうが「タニモク」の本質に近いという話になりました。「タニモク」のタグラインにも「みつけてもらおう、自分の活かし方。」と掲げており、他者の視点を通して自分自身の「強み」に気が付いていくというわけです。

よく「強み」と聞くと、専門性や資格、そのほかには行動力、コミュニケーション力など、これまでに培ってきた経験やスキルの蓄積をイメージしがちです。本書ではこれらを「資源」と呼んでいるのですが、本来「強み」とは自分が持っている資源を、自分が置かれている環境や関係性の中で発揮し、誰かがそれを価値として認識したときにはじめて「強み」となるものだと考えています。
たとえば「英語力」という資源を持つ人がいたとして、英語を使う仕事をしていればそれは「強み」になります。しかし、まったく使わない職場にいれば、「強み」は発揮されず、周囲からも「強み」として認識されません。このように、誰もが素晴らしい資源を持っているにもかかわらず、その「活かし方」に気付いていないということがあるんです。
「自己分析の沼」「キャリア孤独」から抜け出し、“はたらくWell-being”を実現するために
——本書に「自己分析の沼」という印象的な言葉がでてきます。「強み」との関係を教えてください
「強み」は他者との関係性の中でこそ見えやすいものです。ただ、昨今は「キャリアは自分で描くものだ」という考えが広がり、一人で自己分析をする傾向にあります。そして、自身の「強み」や今後の展望が見えずにモヤモヤした状態に陥ってしまうことに。本書ではこのような状態を「ひとり自己分析の沼」と呼んでいます。そして、この沼にはまると、誰にも相談しない、さらに一人で自己分析してしまう「キャリア孤独」に陥りやすくなってしまうのです。

——そんな「キャリア孤独」から抜け出すには、どうしたら良いのでしょうか。
そんなときこそ「タニモク」を活用し、他者の視点を受け取ってもらいたいです。「強み」はご本人の資源の活かし方なので、ライフステージやキャリアチェンジ、キャリアアップなど置かれている状況によって絶えず変化します。ですから、活かし方を他者視点で常にアップデートしていくわけです。
そして自身の「強み」が発揮される実感を得ると、はたらくことやキャリアをより前向きに捉えられるようになります。「もっとこうなりたい」「こんなこともやってみたい」と新しい選択肢が生まれ、その中から自分で選び取れるようになる。これはまさに、パーソルグループが提唱する“はたらくWell-being”に近づいていくプロセスそのものです。
仕事で困ったとき、「どうしたらいいですか?」「何かアイデアありませんか?」と周囲を頼るのと同じで、キャリアについて迷ったときはもっと人を頼っていいし、頼るべきだと私は思います。それを具体的な行動に落とし込むのが「タニモク」です。
「タニモク」を当たり前に。「はたらいて、笑おう」の実現を目指す
——今後の「タニモク」の展望を教えてください。
「タニモク」は、2018年に本格始動して7年が経ちました。パーソルグループのシンクタンクであるパーソル総合研究所とともに実証実験を行ったところ、「タニモク」実施後に幸福度実感が向上した事例が確認され、仕事のパフォーマンスにも寄与する可能性が示されました。こうしたデータとパーソルキャリア内の取り組みをまとめて外部アワードへ応募したところ、ありがたいことに表彰いただく機会も増えて認知度の広がりを実感しています。今では多くの企業や自治体、学校法人でも活用いただき、パーソルキャリアのミッションである「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」を、少しずつ形にできているのではないかと思います。
とはいえ、私としてはまだ道半ばです。先ほどもお伝えしたとおり、「タニモク」が目指すのは、多様な組織・コミュニティ・個人にとって当たり前のものになること。キャリアが自分だけの問題に収束しがちな今だからこそ、他者の視点を受け取る機会を意図的につくり、自分の良さをきちんと認め、一人ひとりが自律的にキャリアを選び取れる環境をより広げていきたいと思っています。
ミッションである「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」の実現の先には、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」があります。「タニモク」や本書を通して、より多くの人が自分のこれからに前向きな一歩を踏み出せる世界をつくっていけたらと考えています。
書籍紹介
『かくれた「強み」をみつけよう。―自分の舞台がみつからないあなたへ』
著者:三石 原士
出版社:日本経済新聞出版
刊行日:2025年10月17日
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/25/09/18/02213/

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。





