3年間の落ちこぼれから29歳でマネジャーになれた理由―わたしとDEI(9)安藤 史織―

パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第9回目は、パーソルクロステクノロジー株式会社の安藤 史織です。

「もし、私がタイムスリップして、若手のころの自分に『29歳でマネジャーになるよ』と伝えたとしても、信じてもらえないでしょう。」

2023年4月より、パーソルクロステクノロジーでIT営業本部 東日本第3営業部 1Gのマネジャーを務める安藤は、入社してから最初の3年間を、こう振り返ります。

「めちゃめちゃめちゃめちゃ辞めたかったです」

「めちゃ」をこれだけ重ねるほど、営業として成果を出せず、悩み苦しんだ新人時代。そこからどう挽回してきたのでしょうか?

ファミレスバイトで気付いたサービス業の面白さ

学生時代の安藤には、自身で「今に通じている」と感じるエピソードがあります。高校から大学までの7年間、アルバイトをした地元のファミリーレストラン。もともと接客希望だったのに、アルバイトを始めた当初は人材不足のキッチンの担当になり、「すごくつらかった」と言います。

「キッチンには体育会系の大学生のお兄さんたちがいっぱいいて、常にあれやって、これやってと怒涛のように指示されていました。ぜんぜん仕事が覚えられないし、追いつかないし、私は足でまといだなって思いながらはたらいていました」

それでも辞めなかったのは、負けず嫌いだったから。「今辞めたら、逃げるみたいで悔しい」という想いで、キッチンの仕事を続けました。

友人たちと出席した大学の卒業式で撮影した一枚。「バンド活動とアルバイトに熱中した大学生でした」

その後、希望通り接客の仕事に移ってからは、キッチンと接客、どちらも任せられる貴重な人材として重宝されました。同じ職場で7年間はたらく中で、「自分の笑顔やサービスによって、お客さまが喜んでくれたり、安心してその場を楽しんでくれたりするのがうれしい」と感じるようになり、就職活動を迎えたとき、人と接するサービスの仕事を志望したのです。

就職活動では、人材業界も含めて幅広く「サービス」に関する企業を見て回りました。その中でも、テンプスタッフテクノロジー(現在のパーソルクロステクノロジー)に惹かれました。

「就職活動中の学生を対象にした社員座談会では、先輩社員が忙しい中時間をつくってすごく親切にいろいろ教えてくれました。面接に進んだ後も、人事の人がほかの企業の面接でも使えそうなアドバイスをくれたんです。ここまで距離の近さを感じる企業はほかになかったので、親切だな、人を大切にする会社なんだなと思って入社を決めました」

「ぜんぜん売れない」新人時代

2016年4月、テンプスタッフテクノロジー(現パーソルクロステクノロジー)に入社し、ITエンジニアを派遣するための営業職に就きました。ここから、苦難の3年間が幕を開けます。

「チームの中でも、ぜんぜん売れない新人でした。お客さまに粘り強くアプローチを続けることでたまに受注できたし、当時、トレーナーをしてくれていた先輩からも粘り強さを褒められて、コツコツ頑張ろうとしていましたけど、なかなか成果が出なくて。当時は本当に苦しかったです。ずっと辞めたかったですね」

派遣営業の仕事は、受注して終わりではありません。派遣先が決定したエンジニアがクライアントのもとでしっかりと仕事をして、ニーズを満たすようサポートするのも営業のミッション。少しずつ受注件数が増えていくと、管理する案件の中にトラブルが発生することもあります。

「器用なタイプじゃない」と言う安藤さんは、2年目、3年目に入ると、新規案件の開拓と管理業務に追われるようになり、たとえば求人をお預かりした後の人選状況報告といったやるべきことができずクライアントに迷惑をかけてしまうこともありました。余裕がないから、お客さまの立場に立って提案することもできず、受注もできないという悪循環。頭の中に「辞めたい」という言葉がこだまするような状況でも踏ん張ることができたのは、学生時代と同じ気持ちでした。

「3年やらずに逃げるのは絶対いやだ、悔しいっていう想いが一番大きかったと思います」

4年目にMVPを受賞できた理由

転機が訪れたのは、4年目。一つ上の先輩、田代 宝さん(現在はパーソルキャリアへ異動)の指導を受けるようになりました。圧倒的な実績を残しており、チームリーダー的な立場でメンバーを見ていた田代さんは、安藤さんを鼓舞するだけでなく、安藤さんが気付いていなかった強みを見出し、弱みを指摘するなど、具体的なアドバイスを送ります。それが、安藤さんを生まれ変わらせました。

「安藤さんはお客さまに好かれるタイプで、安心感につながっている。いい関係が築けたお客さまからはいろいろ発注していただけているんだから、そういうお客さまを増やすといいよとアドバイスしてくれました。自己肯定力が低い私の強みを伸ばすようにいつもサポートしてくれて、はじめて、自分にもできるかもしれないという感覚が芽生えてきたんです」

「クライアントに安心してもらうためにはどうしたらいいか」を考えた安藤は、こまめに連絡を取るところから手を付けました。それは、タスク漏れなどのトラブルの回避にもつながりました。すると、3年間の低迷がうそのように右肩上がりで受注が増え、4年目、部内でMVPを受賞。これで確かな手ごたえを得た安藤は、地道に、手を抜かず、クライアントと良好な関係を築いていくことに注力します。それが功を奏し、以降、順調に業績を伸ばしました。

入社1年目の新人時代に、同期と行ったボーリング。同期とは毎週飲みに行くほど仲が良かったそう

マネジャーから、かつての田代さんのようなリーダー的なポジションで、「自分のクライアントの数を減らして、チームの数字を見てほしい」と言われたのは、2022年。このとき、安藤は決して前向きな気持ちではなかったと明かします。

「私にマネジャーを目指してほしいと思っているんだろうというプレッシャーを感じましたが、当時はその気がなかったので、どうしようかなというのが正直な気持ちでした。とりあえずやってみて、だめだったらプレイヤーとしてやっていこうと思いました」

上司とメンバーからの応援

求められたのは、7人いるチームのPDCAをうまくまわすこと。それまで所属していたのと同じチームだったので、クライアントについての知識があったこと、メンバーはほとんど同世代で距離が近く、性格などをある程度把握しているというやりやすさはありました。それでも、はじめてのマネジメント業務に、戸惑いを感じたそうです。

「自分のノウハウを伝えたり、営業に同行したり、営業力の底上げなら私にもできるかなと思ったので、そこから始めました。でも、自分自身が動いて出す成果と、人に動いてもらって出せる成果は、想定と違って難しさを感じました。こうして欲しいと人に伝えても、動いてもらえるとは限らないんですよね」

リーダーになって9カ月後の2023年1月、まだどう振る舞うべきか答えが見えない中、マネジャーへの登用面接を受けることに。

いつも自信を持てない安藤は「私にできるかな」と不安に感じていたと言います。それでも、いつもチームのメンバーの良さを引き出し、強みを引き上げてくれる上司が応援してくれたこと、そしてメンバーの声が励みになって、「がんばってみよう」という気持ちになりました。

「リーダーになる前から、メンバーにアドバイスをしたり、相談に乗ったりすることが多かったんです。そういう信頼関係があって、安藤さんだったらついていくよ、安藤さんのためならがんばるよと言ってくれるメンバーだったので、それならマネジャーをやってみようかなと思いました」

面接は、「すっごく緊張してしまって、ほとんど覚えていません」。うまく話せたという記憶はないそうです。それでも、なぜマネジャーを目指すのか、会社に対して貢献できる点は何か、何を実現したいのか……ひたすら必死に伝え、結果的に春からのマネジャー就任が決まりました。

「逃げたくない」から学ぶ

リーダー時代に「人を動かすためのコミュニケーションが苦手」と自覚していた安藤にとって、「伝え方」は、引き続き悩みの種でした。

良いことも悪いことも、メンバーによって最適な伝え方が異なります。チームの人数は同じく7名でしたが、数名が入れ替わり、新しく加わったメンバーもいる中で、マネジャー1年目は「うまくいかないな」「なんで動いてくれないんだろう」ということが続きました。下半期には業績が低迷し、「私がメンバーに戻ったほうがいいんじゃないか」と思い悩んだと言います。それでも踏み止まったのは、「逃げたくない」からです。

「自分が現場に出て営業をやればもっとチームの業績が上がるのではと思った瞬間もありました。ただ、1年でマネジャーから降りるというのはやっぱり悔しかったので、どうしたら人を動かせるのか、もう少しちゃんと勉強しようと思いました。メンバーの成長を支援したいと考えたんです」

安藤は自ら手を挙げて、パーソルグループが主催するフィードバック研修に参加しました。特に難易度の高いネガティブな内容についてのフィードバック方法についてワークショップ形式で学んだことで、伝え方の意識が変わったと言います。

日常のコミュニケーションで心がけるようにしたのは、なるべく個別に話をすること。一人ひとりと向き合い、それぞれの落としどころを探りながら、マネジメントを始めました。そうすることで、新たな発見もありました。

「私は目的思考が弱くて、目の前のやると決めたことをとことんやるタイプなんです。だから、『その仕事はなんのためにやるのか』という視点を持っていませんでした。マネジャーになってはじめて、目的があるから動けるという人がいるということに気が付いて、話し方を変えました」

どこに配属されてもうまく組織を導けるマネジャーに

マネジャーになって2年目、安藤はかつての先輩や今の上司の振る舞いを参考にしながら、今も試行錯誤を続けています。4年目に指導を受けた田代さんは、毎日、毎日、真正面から向き合ってくれました。今年1月、体制変更で一時的にチームのメンバーが2名になり、時間に余裕ができたこともあって、できる限り対話をするようにしています。

そして、目標にしているのは現在の上司。メンバーの変化に敏感で、人の良いところを見つけてモチベーションを上げるのが得意な上司のようになりたいと、見習う日々です。

安藤は今、乗り気ではなかった登用面接を受けてよかったと実感しています。

「最初は頼りなかった新人が、自分の意志を持って相談に来ると成長を感じてうれしいです。新しい環境でチャレンジさせてもらっていますし、メンバーのときには今の視点は得られなかったと思います。これからどこに配属されても、うまく組織を導けるようなマネジメントスキルを身につけて、しっかり成果を残せるようになりたいですね」

IT営業本部 東日本第3営業部 1Gのメンバーとともに(安藤は右奥)

※役職は2025年3月時点のものです。

<プロフィール>
安藤 史織(あんどう しおり)
パーソルクロステクノロジー株式会社 IT営業統括本部 IT営業本部 東日本第3営業部 1G マネジャー
2016年4月に新卒で入社。当時から一貫して首都圏でITエンジニアの派遣営業に携わり、対法人/個人への支援に従事。2023年4月にマネジャー着任、現在2年目。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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