すべての人が、自分の能力を活かせる仕事に就ける社会に変える。私が手がけるのはそんな「価値ある仕事」 ― PERSOL Group Awards2024受賞の裏に(17)Sohyun Kim ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2024年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第17回目は、PERSOLKELLY Korea, Ltd.のSohyun Kimです。

PERSOLKELLY Koreaは、2023年度の韓国サステナビリティマネジメント大賞2023社会部門のグランプリに輝きました。Kimが行った障害者雇用プログラムの成果が認められたのです。これまで国主導で行われ、課題を抱えたままだった障害者雇用の改善に、民間企業の活動が大きく貢献しました。

目次

障害を制約ではなく、強みとして捉える。その視座から、新しいより良い社会が見えてくる

Kimが立ち上げたのは「BTS(Booster for Talent’s Success)」と名付けられた障害者雇用に関するプロジェクトです。韓国で久しく社会課題となっている雇用問題。その中でも根強い固定観念から、ドラスティックな改善に踏み出せていないのが障害者雇用の問題でした。多くの企業はESG(Environment, Social and Governance)の一環として障害者を採用していますが、実情は席に座らせているだけという場合がほとんどだったといいます。

「グローバル企業が積極的に専門職など責任ある仕事に障害者を雇用しようとした例も、いくつかはあります。しかし、その求人に適した人材を見つけることが難しく、難航していました。多くの場合、障害者雇用の支援は国が行っているからです。国が障害者に斡旋するのは簡易作業が中心。給与も低いものがほとんどです。障害者を『一般的な仕事に就くことが困難なハンディキャップを抱えた人』とステレオタイプにしか見ておらず、一般的なキャリア・カウンセリングのように一人ひとりの特性を分析し、希望に合った仕事を紹介することはまずありません。それでは企業側から魅力的な求人があっても、国が適した人材を紹介することはできません。この状況を打破したい、という想いからBTSプロジェクトを立ち上げたのです」

Kimが目指したのは「ともにはたらく」ということ。まずPERSOLKELLY Korea社内でテスト導入され、プロジェクトメンバーとして12名の障害者を採用しました。

「彼らとじっくり話し合いながら、プロジェクトを進めていきました。大切にしたのは『障害は個人の特性であり、価値ある部分』という考え。これをベースにして、障害を制約と見なすのではなく、強みとして焦点を当てられるように見方を変えました。そうすると採用した障害者の優れているスキルや得意分野が見えてきたのです。たとえば、“デザインに秀でている”“IT分野での作業がとても速い”といったことです。そういった特性を活かせる仕事に採用した12人の障害者を配置し、仲間として話し合い・協力しながら、さまざまな障害者の特性を活かせる職場を探しました。そうして、仕事に就くことが困難だった若年層の障害者に、生産的かつ創造的な仕事の機会を提供することができるようになったのです」

BTSプロジェクトの成功は、すぐに多くの企業が注目するところとなりました。Kimは韓国国内の大学にある160カ所の障害者サポートセンターとの提携を進めるなどして、数多くの障害者の若者の就職をサポート。結果、1年の間に、韓国に拠点を置くグローバル企業を中心に、なんと250名を超える雇用創出を実現したのです。

「多くの企業が持っていた『障害者とはたらくのは難しい』という固定観念が覆され、韓国が変わり始めました。この影響がより拡がれば、きっと世界も変わる。多くの人が『やりたい仕事ではたらく』世界が実現するかもしれない。その期待にワクワクしています。なぜなら『その人が望む、その人にふさわしい、価値のある仕事に就けるお手伝いをする』。それが私がやりたいと願ってきた仕事だからです」

「価値ある仕事をしたい」。理想のキャリアパスを描く中でたどりついた人生の目標

「高校時代の私は、本当に社会に出ることが恐ろしくて。興味がない分野なのにキャリアに関する本や、社会で成功した人の伝記を読み漁っていました」

将来の仕事について考え始めた高校時代について、Kimはこう振り返ります。読めば読むほど「しっかりとキャリアパスを考えることが重要だ」と分かったのと同時に、「価値があってやりがいのある仕事に就きたい。」と思うようになりました。その想いが「どうやれば社会で活躍できるのだろう」という不安と恐れをより大きくしたのだと話します。

「そんな私に同級生たちはいろいろな仕事のアドバイスをくれました。私も同じように本で読んだ知識などを話していました。それはちょっとしたキャリア・カウンセリングのようなものでしたね。高校生活はやがて受験戦争に突入するわけですが、そのときには同級生たちと『あの仕事に就くにはどの大学のどの学部に行くべきか』と進路のアドバイスもし合うようになっていました」

お互いに理想の仕事やキャリアパス、そして大学での学びについて議論し合う中で、条件に重きを置く友人もいましたが、Kimは「人生にとって意味のある仕事がしたい」という想いを強くしたといいます。Kimは教師を志して大学の教育学部に進学しますが、高校生活での疑似キャリア・カウンセリングの体験が強く印象に残っていて「あの頃は教師より、キャリア・カウンセリングの仕事に就きたかった。他人の就職をサポートする仕事は、とても価値のある仕事だと考えていたのです」と話します。その「価値のある仕事に就きたいという」というKimの想いは大学に入ってから、さらに強くなります。

「いろんなアルバイトをしました。いま思うと、あの頃はとても幸せで、素晴らしい時間でした。短期から長期まで、さまざまなアルバイトをしましたが、そのどれもが価値ある仕事に感じられましたから。大学の卒業生の評論家におすすめの本を紹介してもらって記事にしたり、中にはIT企業で戦略を練るアシスタントをしたこともあり、そこでは製品のためのマーケットリサーチなども経験しました。そういう体験の中で『世の中のためになる仕事。それが価値ある仕事だ』と思うようになりました。ファーストキャリアの歩み方としては、完璧だったと言えますね」

しかし、Kimは理想とは異なるキャリアパスを歩み始めることとなったのです。

紆余曲折を経ながらたどりついた、ずっと望み続けたキャリア・カウンセリングの仕事

就職活動ではキャリア・カウンセリングの仕事も探しましたが、その当時はそういった仕事も求人は少なく、Kimは輸入業者のバイヤーのような仕事に就職します。その仕事を選んだ大きな理由は、給与も福利厚生もとても満足できる水準だったということでした。

「もちろん仕事もとても面白かったです。実際、初めて手がける仕事もうまくやれましたし、興味を持って取り組んでいました。ただ、人生に絶望するほど落ち込む気付きがあったのです。とにかく、私は数字関係の仕事ができなかったのです。自分でもショックでした。なんとか乗り越えようと、同僚や上司にサポートを請いましたが、できるようにはなりませんでした。結果、私はその職をあきらめ、大幅に年収が下がりましたが、転職することにしたのです」

しかしKimはやりたい仕事に就けたのです。再就職をした会社は、グローバル企業で、転職支援をする会社でした。大学卒業時はほとんどなかった転職を支援するビジネスが、時間をおくことで韓国内で少しずつ広がっていたのです。ついに人材業界の仕事をつかんだKimはめきめきと頭角を現します。韓国には同種の企業が多くない時代だったこともあり、Kimはすぐにハイキャリアの転職までを任されるようになります。

「毎日のように企業の重役クラスと会って、キャリアについて話す機会がありました。20代の半ばでそういったエキスパートたちとコミュニケーションをとる機会があったことは幸運だったといえます。もちろん、重責でもありました。だから私は誰よりも早く出勤して、遅くまではたらきました。給与は下がりましたし、激務の日々でした。でも苦ではなかったのです。自分が日々成長していることが感じられましたし、何よりやりたかった『価値ある仕事』に手が届いたのですから」

こうしてKimは着々と人材業界で経験を積み、2008年に設立されたばかりのPERSOLKELLY Koreaに、プロジェクトマネジャーとして転職します。

「当時のPERSOLKELLY Koreaにはハイキャリアの転職支援部門しかありませんでしたが、まさにそれまで私が手がけていた仕事でした。私は求職者との面談のほか、企業へのカウンセリングや研修なども手がけ、マルチプレイヤーとしてはたらきました。新しい事業や業務にも積極的に参加しました。未知の経験を通して、自分が成長するのを感じるのが楽しかった。何より、私が新しいビジネスや、企業を巻き込んだプログラムを企画することが得意で、喜びも見出しているということを、上司が気付いてくれたのです。だから、今回のBTSプロジェクトに抜擢してくれました」

つかみとった「価値ある仕事」。今はその先にある「より良く社会を変える」が新たな目標に

こうしてKimはまったく新しいプロジェクトBTSに挑むこととなり、大きな成果を上げることになったのです。その中でも「話し合って一人ひとりの特性を理解すれば、その特性は“障害”ではなく“企業に貢献できる特長”になる」という気付きがKimにありました。これまでの固定観念を大きく覆すその気付きが、多くの企業の障害者雇用の考え方も変えていくのです。

「BTSを通して、まず企業が求める業務能力を獲得できるポテンシャルを持つ人材を確保。その人材一人ひとりと話し合った上で、障害の種類を考慮した職業訓練を行うことで障害のある人材のコンピテンシーを向上させるプログラムを企画しました。並行して障害のある人材に質の高い就業機会を提供するためのプログラムも企画。そのプログラムを通して私たちが紹介した人材の特性、つまり特長を見て、数々のグローバル企業が大きな興味を示し始めたのです。彼らにとっても『障害は制約』という固定観念を覆し、それを『強みと貢献度合い』という基準で見る、初めての機会となりました。そして多くの企業が、障害者と『ともにはたらく』最初の一歩を踏み出したのです。その結果、1年間で250名以上の就業が実現しました」

Kimのチームは、この輝かしい実績で、韓国サステナビリティマネジメント大賞2023社会部門のグランプリなど、国内でのさまざまな賞を受賞しました。その活動は、雇用に課題を抱える国、つまりは世界中の国で注目を集めています。

「高校生の私にとっては、社会に出てはたらくことは恐ろしいことでした。障害者にとっても、初めて社会に出てはたらくことには不安がたくさんある。逆に言えば、未経験者や初めて障害者を採用して責任ある業務を与える企業にとっても、同じく不安や恐さがあるはず。そういった『初めて』に踏み出すのは恐ろしいものです。でも、その恐ろしさの根底にあるのは、思い込みやこれまでの社会通念といった固定観念。誰かがその固定観念を覆せば、すぐに『なんてことのない根拠の薄い縛りに過ぎなかった』と気づけるのです。今回の障害者雇用も同じ。私がいうなれば“ファーストペンギン”、最初に飛び出しリスクを取る先駆者となったのです」

KimのBTSは、民間企業発信の初めての障害者雇用モデルとして、世の中にインパクトを与え、変革を起こしました。ですがKimにとってはまだまだこれはスタートに過ぎないといいます。

「これからは、まだ企業の多くが手をつけていない、就業できずにいる若者層や増えつつあるシニア層の雇用の問題にも取り組んでいきたいと思っています。その人の、一人ひとりの特性を見極め、希望の仕事に就けるお手伝いをするのです。高校時代に私が志した『価値ある仕事』です。今はさらにその先に目標があります。私の仕事で『社会をより良く変えていきたい』という目標です。それを目指し、実現することで私の仕事の価値も、さらに向上していくはずですから」

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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