
パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。
本連載では、2024年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第16回目は、パーソルAVCテクノロジー株式会社の橋本 伸一郎です。
橋本が挑んだのは、新開発された重さセンサーをAIと組み合わせた物品検知システムの構築。イベントなどで物流や小売りなどさまざまな分野の企業にこの新しい重さセンサーを売り出すための、デモンストレーション用のシステムです。
しかし、そのシステムの構築の過程で、センサーの致命的な不具合が見つかります。橋本はその不具合を、これまでのキャリアで培った知識と経験で解決していきました
新しいセンサーに見つかった致命的な不具合。その解決に知識と経験を総動員して挑む
「新しい重さセンサーをデモンストレーションできるシステムを考えてほしい」
という依頼をクライアントから受けた橋本。その特長を聞き、AIと組み合わせて、たとえば物流倉庫の物品検知システムなどに活用できるのではないか、すると未来の仕事はぐっと楽になるかも」とイメージしたといいます。しかし、センサーの特性を見極めてシステムを構築しようとさまざまな検証を行う中で、重さセンサーに致命的な不具合があることが発覚したのです。
「センサーが誤認識を起こしてしまうのです。たとえば、測定の結果、最初は物体3個分の重さを検知していたとします。それが時間経過と共に測定結果が変化し、物体が4個あると読み取れる数値にまで上ブレしてしまう。『デモンストレーション用のシステム』が使われるシーンはイベントなどでの展示。長時間、一つの物体の重さを検知する、といった使われ方をされるのです。そのときにセンサーが誤認識を起こして測定値が変動すれば、このセンサーのアピールになりません。まずはこの不具合にどう対処するか、そこから取り組むことになりました」
クライアントもこの不具合自体は認識していたものの、明確な解決策は持ち合わせていませんでした。橋本は手探りの状態で、試行錯誤しながら原因究明と解決方法の発見に挑んでいったのです。
「何がトリガーになってセンサーの誤認識が発生するのか。まずそれを探りました。測定する物体の重さなのか、形状なのか、それとも……とさまざまな条件で検証を行って、可能性を絞っていきました。その結果『時間』が測定値のブレに関係していると分かりました。センサー上に物品を乗せてからの時間に応じて、測定値の上ブレも大きくなるのです」
これで誤認識の振る舞いが明らかになりました。それをもとに「どうすればこの不具合を解決できるか」を橋本はひたすら考え続けました。業務時間はもちろん、退勤後のプライベートの時間も、常にこの不具合について考えを巡らせていたという橋本。考えに考え、そして遂に、解決策を導き出します。

未来のイメージを明確に描く。そこを目指して、試行錯誤を繰り返す
橋本が導き出したのは「物品数は整数値しか取り得ないことを利用して、センサーを一定間隔でキャリブレーションしてリセットする」という解決策でした。
「最初の測定で『物体が3個ある』という結果が出ていたとします。時間の経過と共にこの結果が『物体が3.2個ある』『物体が3.4個ある』と上ブレしていくのです。つまり3と4の中間まで上ブレしてしまうと、物体が3個なのか4個なのか判別がつかなくなってしまう。そのため、ブレが大きくなる前に、物品数が整数倍となるようにセンサーをキャリブレーションしてリセットすればいい、と考えました。リセットすることで、センサーは正しい結果を導きます。ただ、この後もやはり時間と共に上ブレは生じます。そこで自動的にリセットをし続ける、という解決策をクライアントに提案しました」
とてもシンプルに感じる解決策ですが、検証を重ねると効果的な解決策だと証明されました。そこで橋本は「自動でセンサーのリセットを行うソフト」を作成し、デモンストレーションのシステムに組み込みました。クライアントが想像しなかった方向性からのアプローチで生み出された解決策に、クライアントから高い評価をいただけました。
「ゴールのイメージを明確にして、その実現を目指して考えに考える。それを続けていると、今回のようにアイデアがひらめくことがある。もちろん正解かどうか分からない。でも、ひらいめいたアイデアと理論が頭の中でぱぱぱっとつながっていって、解決された未来のイメージが浮かべば、たいてい正解。今回の解決策もそうでした。そういうときは、子どものころと変わらずついつい『やったー!』と叫んでしまいますね(笑)」

アイデアを知識と技術で実現していく。そのワクワクに魅せられ、技術者の道へ
子どものころに出会った「電子ブロック」というおもちゃが、橋本を技術者の道へと歩ませたと言います。「電子ブロック」は、電子部品や配線が組み込まれたブロックを並べることで、光らせたり音を出したりするおもちゃ。ブロックごとに組み込まれた電子部品や配線の特性を理解し、自分が求める動作のためにはどれをどう並べればいいかを考えていく、電子実験ができる知育玩具です。
「自分の部屋に籠もって、寝食を忘れるくらい熱中しました。試行錯誤している間に、あっという間に時間が経っているんです。『あの部品とこの部品を使えば、こんな機能を持たせることができるんじゃないか』と思いつくと、どうにかしてそれを実現したくなる。いろんな部品を組み合わせて、ああでもないこうでもない、とやっているときが楽しい。そして、自分のイメージ通りに機能したときが何よりうれしい」
その楽しさから「自分は理系、中でも電気・電子分野が向いている」と確信したという橋本。大学では半導体製造の技術についての研究に没頭します。卒業後は大手家電メーカーに就職し、大学時代の研究の延長になるような開発業務を手がけます。
「入社後3年は、液晶ディスプレイに使われる半導体の製造工程についての開発を手がけました。その後はディスプレイ関連の仕事が続きました。プラズマディスプレイの開発に携わり、生産が終了するのに合わせて有機ELディスプレイの開発に移りました。そこでは今の仕事につながる特性評価など検査の仕事も担当しました。当時、ディスプレイの不具合の有無を人が検査していました。それを自動化できないか、とAIの活用を模索し始めたのです。2016年、ちょうどAIが注目を集め始めたころでした。研究誌などを読み漁って、AIの開発に没頭していましたね。知的好奇心を刺激してくれる、新しいおもちゃを手に入れた子どものようにハマっていました」
橋本はAIによる有機ELディスプレイの検査・検品システムを開発。検査の精度と効率を大幅に向上させるのに貢献したと言います。
「ぱっと話すと関連があるように見えますが、実はその時々でバラバラのことに挑んできたキャリアでした。大学と液晶ディスプレイでは、半導体を作り上げる『プロセス技術』。プラズマディスプレイでは、デバイスの発光を制御する『駆動波形の開発』。そして有機ELディスプレイとAIでは『検査・特性評価の技術開発』。毎回、猛勉強をして仕事に取り組んできましたが、その経験と知識と技術、どれもが今の私に生きている。それを総動員して、今回の重さセンサーの解決策がひらめいたのだと思います」

新しい技術に出会うと、より良い未来をつくるためのアイデアがあふれてくる
橋本は所属する会社もさまざまに変わっています。大手家電メーカーで社会人生活をスタートさせたもののプロジェクトが独立して別会社に。さらにその会社が事業停止のタイミングで、現在のパーソルAVCテクノロジーと統合。そんな変化の渦中にいながらも「仕事への想いは同じ。いつもワクワクしている」と橋本は話します。
地上デジタルへの移行を機に、ブラウン管に代わってテレビの代名詞にもなった「液晶ディスプレイ」。その液晶よりもより美しく高精細な画像を目指して開発が進められた「プラズマディスプレイ」。そして4Kや8Kといった高画質時代の担い手として大きく成長している「有機ELディスプレイ」。そして、これからの技術の未来を握っているとも言える「AI技術」。そういった新しい未来をつくるかもしれない最新技術に出会うたび、橋本は「ワクワクする」と言います。
「新しい技術を使った製品やアイデアがあふれてくるんです。そしてその製品が未来をより良くしているイメージも浮かぶ。そうすると『これを自分の手でなんとか実現したい』とワクワクする」
そのために勉強したり試行錯誤を繰り返したり、ああでもないこうでもないと考えを巡らすことが好きだという橋本。もちろんうまくいくケースばかりではなく、高すぎる壁に阻まれて前に進めないことも多々あると言います。
「しんどいときは『これは無理かもしれない。本当にできるのか。できもしないことに挑戦しているんじゃないか』と不安になることもあります。『でもまだ知らないことがあるだろう、試してないことがあるだろう』と考え続けるのです。すると、アイデアがひらめく。それが未来へとぱぱぱっとつながっていく。それが本当に心から『やったー!』といいたくなるほど気持ちいい。子どものときからその瞬間が大好きでこの道を選んだんです。あきらめる、途中で投げ出すという選択肢はないですね」
「未来のイメージ」が描ければ、その実現に向かって邁進する。イメージが明確であればあるほど「必ず実現できる」と思える。だから、ワクワクしながら、あきらめることなく挑み続けられる。そう話す橋本が、いま時間を忘れるほど没頭しているのが、AI技術だといいます。橋本は笑ってこう話します。
「AI技術の進歩で、いろんな便利な製品が生み出せる。未来はいまよりどんどん良くなっていく。その未来に、自分のアイデアやつくり出した製品が使われていることを想像すると、よりワクワクする。ほんと、子どものときから変わってないんですよ」

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。