2024年5月から「共創プロジェクト」に取り組んでいるパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社(以下PEAC社) 社長執行役員 CEOの豊嶋 明氏とパーソルクロステクノロジー株式会社 取締役執行役員の佐藤 晃一による対談を実施。異なる文化や考え方を持った企業同士が共創する中で見つけた「はたらく」の意義や、このプロジェクトにかける想いについて語っていただきました。
<プロフィール>
写真左:豊嶋 明氏
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 社長執行役員 CEO
松下電器産業株式会社(現パナソニック)へ入社、テレビ本部 テレビ事業部に配属。パナソニックAVCネットワークスインド株式会社 社長を経て、2022年4月より現職。テレビや音響機器、デジタルカメラなどを中心に一貫してAVC事業に携わる。
写真右:佐藤 晃一
パーソルクロステクノロジー株式会社 取締役執行役員/パーソルAVCテクノロジー株式会社 代表取締役社長
ソニー株式会社にて業務用放送機器やゲーム機などを開発、タブレット事業、ネットワークサービス事業など新規事業も立ち上げる。2020年12月パーソルAVCテクノロジー株式会社へ入社、2021年10月同社代表取締役社長、2023年4月よりパーソルクロステクノロジー株式会社の取締役執行役員へ就任。
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション:主に有機ELテレビをはじめとするAV機器、デジタルカメラ、ヘッドホン、インターカムなどの個人向け商品や業務用カメラ、映像制作システム、業務用音響機器システムといった法人向けソリューションを手掛けている。2023年5月には、新規事業として思わず笑顔になる“弱いロボット”「NICOBO(ニコボ)」を発売。
パーソルクロステクノロジー:自動車・航空宇宙・産業機器・家電・ロボットといったものづくり領域から、システム、通信、WebなどのIT領域まで技術コンサルティング、請負、技術者派遣、準委任など企業の技術支援を行っている。
両社の事業領域にとどまらず、「産業を創る」という視点から新たな価値創造を目指して始まったのが「共創プロジェクト」。両社の計6名のメンバーが、実現したい未来についてのディスカッションなどを重ねています。
このプロジェクトは、元々、松下電器産業株式会社(現パナソニック)の100%出資技術会社として創業したパーソルクロステクノロジーの子会社であるパーソルAVCテクノロジー(※)がきっかけでした。
(※)現在はパーソルクロステクノロジーとパナソニックホールディングスの合弁会社
「産業を創る」という発想が、まず面白い
佐藤:今回、共創プロジェクトをやろうと思った理由はいくつかあるのですが、1つはパーソルAVCテクノロジーを介して会社間だけでなく社員間においてもお互いに良い関係があることは大きかったです。人材サービスが主体であるパーソルはものづくりの会社とは違う部分を持っていると思っています。ものづくりのPEAC社さんと一緒にやることで今までとは違う新しいものが生まれるのではないかと考えて、豊嶋さんにご提案させていただきました。
豊嶋氏:最初に佐藤さんからお話をいただいた時、直感的に「あ、これは面白いな」と、その場でやる気になりました。いろいろなお話やご提案をいただくことがありますが、佐藤さんのお話にすごくワクワクしました。商品提案や何かこじんまりした話ではなく、「産業を創りにいく」という話がまず面白いと思いましたし、「これは何かできるかも」と思えました。
別の側面では、今やっている事業だけではなく新しい事業をつくっていきたい、将来に向けて新しいことをやっていきたい、とずっと悩んでいたんです。
佐藤:そうだったのですね。
豊嶋氏:ですから、PEAC社の中だけではなくパーソルさんと一緒にやれば化学反応が起きて何か面白いものができるのではないかと。これまでも多様なアプローチはしてきましたが、それとは別に、何かまた違ったことがやれるのではないかというギアが入りました。
佐藤:ありがとうございます。産業を創る新規事業という観点で言うと、私は大企業には大企業の使命があると思っています。ベンチャーと同様のさまざまな課題解決の新規事業はやっても良いのですが、お金や時間がかかるような事業を創る場合、ベンチャーだと体力的に持たないということがあります。やろうとしていることが将来の世の中にとって本当に必要なことであれば、大企業がやらないといけないと考えています。
豊嶋氏:経済合理性を考えながら事業をやっていますが、新規事業や新しいことはそんな簡単に合理性は図れません。うまくいく可能性が極めて低いからこそ、失敗してもいいからたくさんチャレンジすることがまず大事だと思っています。ですから、一回やってダメだとか、同じ方法をずっと続けるというよりも、いろんなパターン、いろんなやり方、いろんなアプローチを試して、一つでもうまくいったらいいという想いで社内でもさまざまなことをやるわけです。今回の産業を創る新規事業の共創プロジェクトは、その一つのチャレンジとして面白いと思ったのです。
「できます」と言い切れる人のところに、人は集まる
佐藤:「産業を創る」、これは狙いにいかないと実現できない。産業構造含め大きな変革期を迎えている今をチャンスと捉え、PEAC社さんとご一緒できれば不可能ではないと考えました。
豊嶋氏:佐藤さんから最初に話を聞いたシーンをとてもよく覚えています。「自信たっぷり」にお話をされましたよね(笑)。具体的なビジネスアイデアがあったわけではまったくないはずなんですが。
佐藤:いやあ、お恥ずかしい(笑)。でもその通りです。
豊嶋氏:「一緒にやったら、できます」と言い切られた。新規事業をやっている人間って、「何百回やって一つものになるかどうか」という議論をするじゃないですか。それなのに自信があるのは、おそらく過去の経験値と「意志」の問題だと思います。「できます」という人のところに人が集まるものですし、佐藤さんは「意志の人」なのだなと。
佐藤:やり始める前に、できなかった時の言い訳を並べてもしょうがないですしね。
豊嶋氏:また言葉が良かったんです。「新しい産業を創る。」そう来たか!と。
「産みの苦しみ」ではなく、熱意のもとにアタックしている「チャレンジの苦しみ」
佐藤:スタートは2024年5月でしたが、これまでを振り返っていかがですか?
豊嶋氏:今も現在進行形で気付きや学びがすごくあります。われわれは、何か物事を考えようと思ったら、やっぱり「物」「ハードウェア」「たくさん作る」といった現業のやり方が染み付いています。今回はそれをきれいに塗り替えてもらった感覚です。現業とまったく関係がないところから刺激を受けることで、考え方やアンテナの高さがだいぶ変わりましたね。実際にプロジェクトのスタート時点とはメンバーの言うことも変化しているので、得たものが多いのだと思います。
佐藤:そうなんですね。
豊嶋氏:産みの苦しみもたくさん感じていると思いますが、それが悪い苦しみ方ではなく、何かをやりたいという熱意のもとにアタックしている「チャレンジの苦しみ」のため、メンバーと話をしていても「しんどいけど、まだまだやりたい」と言います。いい意味で楽しさを感じているのだと思います。
あと、パーソルさんがすごいなと感じたのは、動きが早くてフレキシブルなところ。比較するとわれわれの動きは遅く、何かを決めるとなっても順番やルールが結構あります。でも佐藤さんはプロジェクトメンバーたちに「好きなようにやったらいいよ」と。
佐藤:そうですね。私はメンバーに決めてもらったらいいと思っています。
逆に私が感じているのは、PEAC社さんのものづくりに対するこだわりの強さです。これは、世界的に見てもすごいと思います。ユーザーから見えづらいところでもとてもエネルギーを使って愛情を注いで作っている。
豊嶋氏:ものづくりと商品に対する愛情が深いメンバーばかりですね。こだわりすぎるところもあるのですが……。
佐藤:そういう気持ちは伝わりますよね。ものづくりは一つひとつの物語ですから。産業を創るというアプローチは、現在の延長線上にある良いところは保ちつつ、思考を飛躍させないと違うことはできない。この共創プロジェクトがさらに進んでいけば、もともと持っているものをさらにブラッシュアップした良いところが出てくると思っています。
豊嶋氏:そうですね。みんなこだわりが強くて、それはイコール突き詰めていくのが得意な反面、視野が狭くなっていたり、それ以外のところに切り口を求めたりするのが難しい場面もあります。そういう絶妙なタイミングで佐藤さんが視点を高めるボールを投げるんです。で、その時にみんなが「え?」っていう顔をする。違うレイヤーのボールが来ると「あ、ここしか見てなかったな」と。
すごくいいヒントを出していただけるので、それでみんな伸びていると思いますね。自分たちだけで気付けといっても、やっぱり難しいですから。
佐藤:やっぱり、何か新しいものを創ろうとした時こそ、今持っているものとは別の視点がすごく大切だと思います。たとえば、地方創生の中で東京から地方に行った人がその土地の良さを発見しますが、そういう「外の目」です。
豊嶋氏:もともとこのプロジェクトをやる前から悩んでいたのは、強みを活かすやり方でいいのか?ということだったんです。だから今回は、持っているものを使ってなんとかしようとせず、あえて「これが強み」みたいなことをメンバーには一旦忘れてもらいました。結果的に強みだと考えていたものが因数分解されて違う形で活かされることはたくさんあるものの、自分が強みだと思い込んでいるものは「自分の中で凝り固まった強み」で、それをそのまま使うのは難しい。
佐藤:持っているものに固執する必要はないですよね。今回はそういうアプローチができているのではないでしょうか。
すべてを出し切ったしんどさの後にやってくる「楽しさ」や「やりがい」
佐藤:せっかくですので、豊嶋さんにとっての「はたらく」とはどういうことか、教えてください。
豊嶋氏:人生の中ではたらくことにかなりの時間を使うからこそ、「はたらく=楽しいこと」にしたいですね。
実際に今、私はものすごく楽しいんです。しんどいこともいっぱいありますが、それも含めて楽しい。このような楽しさを感じるはたらき方を自分もしたいし、一緒にはたらく皆さんともしたいし、会社全体もそうしたいですね。
人生をどうするか自分で決めるのと同じように、はたらき方も自分で決めたらいいと思います。「はたらいて、笑おう。」の世界観に共感しています。人に与えられる目標ではなく、自分で決めた目標を追いかける方がやりがいはありますし、そういう「はたらく」を自分自身でも追求していきたいですね。
佐藤:とても分かります。
豊嶋氏:私は毎月、定年式に出て会社を卒業される方から話を聞くのですが、ほとんどの方がしんどい時の思い出を話します。そこで「しんどかったけれど楽しかった」「あれを乗り越えたから今の自分がある」とおっしゃいます。毎回話を聞くたびに、私もそう言って終われる楽しさがあるはたらき方をしたいと思います。
佐藤:私自身は「はたらく」について、個人と仕事の関係、個人と会社の関係がある中で、基本的に個人はある意味「わがまま」でいいと考えています。だから、会社を利用して自分がやりたいことをやってもらっていい。豊嶋さんがおっしゃったように、人生の中の貴重な時間を使っているわけですから、仕事を存分にやってもらって、それがどのような結果になっても、大変なことも含めて楽しんでもらいたい。
今は立場上、社員が挑戦できる「場をつくる」、社員の挑戦を「応援する」といったことも必要と考えています。
豊嶋氏:今回のプロジェクトのような機会を得たこと自体がすでにラッキーなことで、メンバーも十分にその幸運を感じて取り組んでもらいたいです。私も一緒になってやっていきます。
この取り組み自体、本当に難しいことをやっているので、仮に最後に成功するとしても、そんな短時間でたどり着くとは思っていません。苦しい時間が続くわけですが、それをやりきってもらった後には、絶対にその何十倍もやりがいがあって幸せな気持ちになるので、心残りがないくらい最後までやりきってほしいです。
佐藤:本当にそうですね。「結果が出せないとダメだ」くらいのエネルギーの注ぎ方をしないと、おそらく次にはつながっていかないので、最後までやりきることにはこだわってほしいですね。
豊嶋氏:全部出し切ったところから、実は「次」が出るんですよね。だから表面的にうまくまとめたり、「なんとなくうまくいきそう」と答えを置きにいかないでほしい。むしろ厳しいところをチャレンジしてほしいですね。その先にはものすごくいいものがあるので、真正面からのチャレンジに期待しています。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。