パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第5回目はパーソルキャリア株式会社の井出 妙子です。
「子育てと仕事の両立って、自分一人でやろうと思ったら、たぶん無理っていう結論になってしまうと思うんです。でも、パートナー、両親、親戚、保育園、外部のサービスも含めて、頼れるものに頼れば、ちゃんと両立できる。自分が経験してみて、それを実感しているところです」
パーソルキャリアでファッション・アパレル業界専門の部に所属する井出は、2019年に出産し、育休を経て復帰後の2022年4月、法人営業のマネジャーに就任しました。
子どもはまだ保育園に通っていて、時短勤務。保育園で体調を崩すなどして、急な呼び出しの連絡が来ることも少なくありません。それでも、現在25名の部下を率いてはたらいています。
ちなみに井出は2015年4月、某大手百貨店からの転職で入社しました。当時のパーソルキャリアの所属部署では、法人営業、中途入社、時短勤務という条件で管理職になった女性社員がいなかったため、そもそも「物理的に挑戦できない」と思っていたそうです。
井出はどういう経緯を経て管理職に昇進し、どういう思いで仕事をしているのでしょうか?
同期が残してくれたメールアドレスを頼って
1985年、神奈川県座間市で生まれた井出は、父親の仕事の都合で小学3年生の時、兵庫県に移住しました。幼少期は「『思ったことは口に出して伝えよう』という環境で育ったこともあり、はっきり物を言う子どもだった」そうです。
神戸の女子大を卒業した後の2008年4月、百貨店に入社。千葉にある店舗の婦人服飾部に配属され、3年間、店頭でインナーウエアなどを販売しました。「ずっと笑顔で立ちっぱなしなので、顔も腰もずっと痛くてまったく楽しめなかった」と苦笑しつつも、入社4年目にアシスタントバイヤーとして異動した渋谷にある店舗で仕事の面白さを見出すようになります。
「とあるブランドの専任担当となり、1年間で3億円の売り上げ目標を達成するというミッションが与えられました。ここで、自分なりに企画したキャンペーンをヒットさせ、売り上げ目標を達成させられたことに手応えを感じました」
しかし、ここでキャリア向け婦人スーツや海外から輸入したドレスの販売などを手掛けるうちに、転職を意識するようになりました。企業合併により、職場の雰囲気や勤務体系が大きく変わったことが主な原因だったそうです。
井出の手元には、先に転職した同期から「もし困ったときは、この人に相談したらきっと力になってくれるよ」と託されたメールアドレスがありました。それは、同期が利用した転職サービス「doda(デューダ)」のキャリアアドバイザー(CA)のアドレスでした。ある日、思い切って連絡してみると、「すぐにお話を聞きます」と返信があり、転職活動が始まりました。
CAと相談を重ねるうちに、「人材業界が向いていると思う」と言われた井出は、「まったく興味がなかったけれど、プロが言うならそうなのかな」と初めて人材業界の仕事を意識するようになりました。
それから大手、ベンチャーを含めて人材業界の企業を検討する中で、パーソルキャリアのグループで、アパレル・ファッション業界専門の転職支援サービスを運営するクリーデンス(当時は法人、現在はパーソルキャリアの部の一つ)に入社を決めます。
「面接の時に前職の経験が活かせるようなファッションの話題が出たり、オフィスでの服装規定も堅苦しくなくて自分に一番フィットしていると感じたのが大きな決め手です」
クリーデンスにはCAと法人営業の部門があり、井出の配属は法人営業。最初のころは、自分の顧客に転職した人が短期間のうちに辞めてしまうと、悔しさや悲しさが募りました。そのうち、転職志望者と顧客、どちらにとってもできる限り満足いく結果になるよう、ゼネラルマネジャー(GM)からの「法人営業とCAの仕事は自由に染み出していい」という言葉を実践するようになります。
自ら転職希望者と話をする機会を設けたり、面接に同行したりして本音を探っているうちに、「転職のミスマッチの不幸を少しでも減らせているんじゃないか」と、仕事に手ごたえを感じるようになりました。
「言い訳は一切しない」と決めた産休からの復帰
2018年10月、グループリーダー(GL/現在のアシスタントマネジャー)に昇進。GLになると、個人ではなくチームの予算の達成度合いで評価されるようになります。5人の部下ができて必然的にチームのパフォーマンスを意識せざるを得なくなり、試行錯誤を重ねる中で、一つの迷いが生じました。
「子どもの頃から思ったことは口に出して伝えよう、そのほうがいいと思っていました。でも、リーダーとしてあまりにストレートな物言いをすると、周囲を委縮させてしまうかもしれないと感じるようになったんです……」
それまでの自分の姿勢を改めようにも、なかなか答えが見つかりません。「どうしよう」と悩んでいる間に、産休に入ることになりました。
コロナ禍と重なったこともあり、産休から仕事に戻ったのは2020年8月。コロナの影響で受注が激減し、部内の人員体制も大きく変化。マネジャー不在の中、アシスタントマネジャー(AM)として復帰した井出の部下は7人に増えていました。
「部が縮小している時に、時短勤務なのにAMで戻してもらえたことがありがたくて。これで頑張らなかったら申し訳が立たないという気持ちもあり、子どもがいますとか、時短ですという言い訳は一切しないと決めました」
子育てを経験して、コミュニケーションも変わりました。
「産休で1年休んでいる間、言葉も話せない生まれたばかりの子どもとずっと一緒にいたので、伝え方を工夫しないと、私が伝えたいことは相手に伝わらないんだなと内省できました。復帰してからは、伝え方や言葉のチョイスを意識するようになりましたね」
「座談会」での後押し「子育て中こそ管理職になったほうがいい!」
育児と仕事を両立させるために最も苦労したのは、メンバーと向き合うための時間の確保。保育園の迎えに行くため、18時には会社を出なくてはいけない上に、発熱などでしばしば保育園から呼び出しがかかります。メンバーから理解を得るために、正直に事情を説明し、謝り、感謝しました。
業務に関しては、求人のオーダーがなくても定期的に顧客に連絡をして状況を伺い、接点を保ち続けるという方針をとりました。これが功を奏し、コロナ禍が落ち着いてくると少しずつオーダーが入るようになります。
当時、マネジャーがいなかったこともあり、GMからは予算を組んだり、施策を一緒に考えたり、という本来はマネジャーがやるような業務も教わりました。顧客への営業やメンバーのケアをしながら新しいことを学ぶのは大変でしたが、「目をかけてもらっているうちに結果を出そう」と、必死に時間をやりくりしました。
この時期に活用したのが、他部署の女性管理職にいろいろなことを聞くことが出来る「座談会」制度。女性管理職を増やす目的でスタートした制度で、人事(DEI推進部)に利用を申請すると、他部署の女性の管理職と話をする時間がセッティングされます。
「私が会ったのは、二人の子どもを育てている方で、『子育て中の人は絶対に管理職になったほうがいい』と言われました。うちの会社では管理職の方が時間に縛られないはたらき方ができる、自分のやりたいように時間を調整できるというのが理由でした。実際に管理職の立場にいる女性から『私もできたんだからできるよ』と言ってもらい、管理職を目指そうと思うようになりました」
キャリアに合わせてコミュニケーションを変える
産休から復帰しておよそ1年後の2021年秋、GMから「マネジャー昇格試験に挑戦しない?」とオファーを受けました。背中を押されたことで試験を受け、翌春にマネジャーに昇格。メンバーは15人、AM時の担当顧客も引き継ぎマネジメントに専念します。
「マネジャーは担当顧客を持たないので、これまでのように営業できない寂しさはありました。でも、自分一人でできることはたかが知れています。チームのメンバーに任せた方がよっぽど成果も出ますし、採用支援数が広がって顧客に喜んでもらえるので、気持ちを切り替えてメンバーに伴走するようにしました」
最初の1年は無我夢中で駆け抜けているうちに終わり、2年目に入って、「こうしたほうがいい」という道が見えてきたそう。たとえば、メンバーのマネジメントに関しても気付きがあったと言います。
「マネジメントを学ぶために、会社が開催している研修にできる限り参加してきました。その中で特に勉強になったのは、メンバーの性格だけじゃなく、キャリアに合わせてコミュニケーションを変えましょうという話でした。まだ新人なのか、成熟しているのかによって、コミュニケーションの頻度やかける言葉を工夫するべきで、全員同じにするとうまくいかないという内容でした。それまで私は全員均等にしなきゃいけない、でもどうやってと悩んでいたので、腑に落ちましたね」
マネジャーになって3年目の現在、チームは25人にまで増えました。時短勤務を続けながら全員の状態を細かく把握するのは難しく、ときにはメンバーに鬱憤が溜まっていたり、トラブルが起きたりすることもあります。そのたびに落ち込むものの、井出はかつての自分と同じように中途入社や時短勤務、子育て中など「状況的に挑戦できない」と思っている女性がいるのであれば、自分がロールモデルになろう!という思いを抱いています。育児をしながらでも管理職が務まるとメンバーに背中を見せている井出は、最後にこう結びました。
「管理職になって入ってくる情報が増え、見える景色も変わりました。この経験を活かして、部や会社全体でみんなが活き活きとはたらけるようにしたいですね。メンバー自身がやりたいことを実現する、それがしっかり顧客にも届いて感謝されるという構造をつくっていきたいと、この立場になって改めて強く思うようになりました。子どもに『お母さんの仕事は世の中の役に立っているんだ!』と認識してもらえるような仕事を続けていきたいです」
<プロフィール>
井出 妙子(いで たえこ)
パーソルキャリア株式会社 クリーデンス RA第3グループ マネジャー
大学卒業後、全国展開の百貨店へ総合職として入社し、婦人服領域を担当。インナーウエア・浴衣・ドメスティックブランドからインポートブランドまで様々なアイテムに携わり、アシスタントバイヤー・販売リーダーを経験。2015年株式会社クリーデンス(現パーソルキャリア株式会社 クリーデンス)へ転職。法人営業担当としてアパレル・ファッション業界の採用支援に携わる。2022年より法人営業チームのマネジャーに就任、現在はRA第1~5グループとサービス開発グループを兼務しマネジメントを担っている。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。