仕事を楽しみ、成長するには、「向いている」が必要だった ― PERSOL Group Awards2023受賞の裏に(13)田岡 聡子 ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2023年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第13回目は、パーソルネクステージ株式会社の田岡 聡子です。

田岡が手掛けたのは、精神障害のあるクルー(※1)と仕事とのマッチングに向けた適性検査を導入し、就業後定着を向上させたプロジェクト。データ分析を行うことで、「向いている仕事」の傾向を探り出しました。

(※1)クルー:パーソルネクステージではたらく障害のある社員の総称

目次

はたらく人の、想いを届けるためのマーケティング

田岡はこれまで、マーケティング職として多くの企業で経験を積んできました。彼女がマーケティングに興味を持ったのは、まだ幼稚園のころだったと言います。

「親がスーパーへ買い物に行くのについて行き、一緒に売場を見て回るのが好きでした。どのお店も似たような商品の並べ方をするのはなぜだろう、洗剤一つとってもみんなが知っている定番商品が目立つ位置にあるのはなぜだろう、などと幼心に思っていました。その根底にあるものが知りたくて、物心ついた時には、マーケティングに興味をもっていました。大学を選ぶときもマーケティングを学べるようにと考えていたし、就職のときもマーケティングをやりたいとずっと考えていたんです。転職活動中の面接で『あなたが誰にも負けないことはなんですか?』と聞かれた際、『マーケティングに20年携わった方よりも長く、マーケティングが好きでずっと考えてきた自信があります!』と答えたことがあるくらいなんですよ」

マーケティング職に就いた当初は、自身の興味関心のある仕事ができることが面白くてしかたなかったと話す田岡。しかし、メーカーのマーケティング部門で仕事をした際、マーケティングは好きなだけでばダメだということに気付いたと振り返ります。

「『20年かけてつくった商品が、マーケティング次第で売れなかったり廃盤になったりすることもある』と言われたんです。研究開発職の方にとっては、商品って夢をのせたものなんですよね。しかしどれだけいい商品でも、生活者の認知・認識や売上はマーケティング次第で変わってしまう部分がある。それまでの私は自分が好きだからとマーケティングをやっていましたが、好きなだけではダメで、商品開発者の想いを正しく世の中に届ける責任ある仕事なのだと考えるようになりました」

仕事の向き、不向きは、データから導き出せるのか

田岡が人材業界へ興味を持ったきっかけは、前職でチームの解体を経験したことでした。

「早期退職募集をきっかけに、時間をかけて良い関係を築いた自分の所属するチームがなくなったんです。それで組織や経営、仕事環境について考えるようになりました。そんな時、知人の勧めもあり、出会ったのがパーソルネクステージです。最初は事業推進室の一員として入社し、全国の拠点管理・運営と、並行してマーケティングを任せてもらいました」

のちにアワード受賞にもつながる田岡の取り組みは、パーソルネクステージのクルーを、一人ひとり「合っている仕事」にアサインするためにはどうすべきか考えることから始まりました。

「ここではたらく方の8割が精神障害のある方で、皆さん個別に事情があります。体調に波が合ったり、面談での深く踏み込んだコミュニケーションに負担を感じる方がいたり、以前の職場での経験ゆえに思っていることがなかなか言えなかったり。彼ら彼女らのことを、採用面接だけで理解し、適切な仕事とマッチングするのは難しいと感じました。そこで、入社前に実施する適性検査の結果を利用できないかと考えたのです。もともとは向いている仕事と直接的に結びつけるための検査ではなかったのですが、適性検査でこの傾向がある人はこういう仕事への定着率がいいとか、こういう結果が出る人はこの仕事の出勤率が下がるとか。何か傾向を見い出せるのではないかと期待し、データを分析することにしたのです」

「分かる」で終わらず、「伝わる」を思い描く

最初は思うようにならず、田岡は苦心しました。最初の1カ月くらいはまったく、適性検査とその後の勤務状況や成果を結びつけるデータがつかめないまま。しかし彼女は一人で抱え込まず、チームミーティングでこまめに報告し始めたところ、前に進む実感を得られるようになります。

「週1回、適性検査の結果とその後の勤務状況や成果を結びつけるデータに関する分析内容について共有会を設けて、参加者から意見を聞きました。『まずはそこまで分析の仕方が厳密じゃなくていいんじゃないか』『会社としてはもっと大まかな傾向を知りたいのでは』と自分だけでは出なかった視点での意見をもらえたことを覚えています。マーケティングやリサーチの専門家であることは大切ですが、そこで専門的な難しさに深く入り込みすぎてしまっていました。正しくガチガチに考えすぎてはダメなんですよね。そうやって考え方を変えてみたことで、新しい視点での分析結果を示せるようになりました。説明する際の見せ方も変わりましたね」

彼女は、専門的すぎてはいけない理由を次のように説明します。

「実際にデータを活用する人は、データの専門家ではない。たとえば、私はExcelの数字を細かく見るのが仕事ですが、実際に適性検査の結果を活用してクルーと向き合う仕事の人は、Excelの細かいところを逐一見るわけではないですよね。データを見なくても分かる、全体の傾向や図、パワーポイントに落とし込んだほうがいい。そうしてまずは興味を持ってもらい、理解したいと思ってもらうことが大事。最初から細かい数字を見なければ分からない厳密な話をされたら、気持ちとしても離れてしまいますから。単に何かデータで『分かる』で終わるのではなく、その先で社内に『伝える/伝わる』まで意識することを大切にしました」

障害者雇用の未来について、もっと積極的に、オープンに

適性検査の結果を独自のやり方で分析し、クルーと仕事をマッチングするチームへ分かりやすく説明し、適切な配置が行われたことで、クルーの出勤率は97.2%と高い数字を記録。現場定着率も、前年の67%から84.9%へと上昇しました。入社前に行うクルーの適性検査結果を活用することで、入社前からクルーの成長・指導プランを描き、早期活躍にもつなげられています。田岡の所属部署は、事業推進室から、2023年4月にマーケティング室と名前を変更。それ以降「課題やトラブルを『起こらないようにする』こともマーケティング室の仕事にしたい」と新たな分析を試みていると彼女は語ります。

「これまでは何か課題が見つかったりトラブルが起こったりしてから対処することが普通でした。しかしこれからは、今後課題になりそうなことを事前に見つけたり、そもそもトラブルが起こらないような施策を分析で考えられたりするように。立場や手法にとらわれず、みんなで取り組むマーケティング室になったらいいですね」

今回のプロジェクトをきっかけとして、「クルーの就業だけでなく、その先の定着や成長について積極的に社内で語られるようになった」と田岡は言います。それは、彼女の仕事が、誰かの「はたらいて、笑おう。」に貢献しているということでもあり、彼女自身の「はたらいて、笑おう。」にもつながっているとのこと。

「社会全体で言うと、障害がある人の仕事については『障害があるならできるのはこれくらいだよね』と、どこか限界があるのも仕方がないと言われる側面もまだまだあります。しかし向いている仕事に就いてもらえる仕組みがあれば、障害がありながらももっと仕事で活躍し、楽しんでもらうこともできるはず。今回のプロジェクトをきっかけに、そういった展望を積極的にオープンに話す人が社内に増えた気がする。私は、それをとてもうれしいことだと感じています」

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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