技術は誰かのために。お客さまと社会の役に立つエンジニアであれ ― PERSOL Group Awards 2023受賞の裏に(3)橋本 功治 ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2023年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第3回目は、パーソルAVCテクノロジー株式会社の橋本 功治です。

橋本が手掛けているのは、建設現場における進捗図面作成の自動化ロボの開発。建設業界の人手不足解消に大きく貢献が期待される、ロボットの制作に取り組んでいます。2022年度には、ラジコン操作型のもので開発に成功。2024年度に、全自動型のモデルがお披露目予定です。

目次

「家が近い」をきっかけに、気付けばテレビ1,000機種の開発へ

橋本が現在所属するのは、パーソルAVCテクノロジー。橋本が新卒で入社した当時は、松下AVCテクノロジーという名前でした。きっかけについて、「すごく簡単な理由ですけどね」と橋本は振り返ります。

「最初に就職したのは、松下AVCテクノロジー。ソフトウェア開発のエンジニアになりました。学生時代の専攻とは異なる分野でしたが、『勉強させてもらおう』という気持ちですね。ただ、今だから正直に言いますが、入社の決め手は、職場が家から近かったからなんです」

飄々と語る橋本ですが、入社後はエンジニアとしてテレビの進化に大きく貢献することになります。

「ちょうど私が入社したころは、BSデジタル放送が始まったくらい。テレビにデジタル化の波が訪れ、デジタル放送に対応したテレビをいくつか担当しました。その後は、動画配信サービスをテレビで見られる商品の需要がグンと伸びましたね。テレビって、家族の団欒に寄与するものなので、それをつくるのはやりがいがありました。全部で1,000機種くらいソフトウェア開発を担当したでしょうか。海外製品を担当することもあり、次から次へとやりましたね。気付けばあっという間に、15年以上経っていました」

建設業界の課題を解決する、「i-Construction」

入社して十数年は松下電器産業(現 パナソニックホールディングス)の子会社でしたが、のちにパーソルグループの一員、パーソルAVCテクノロジーとなり、橋本の仕事にも大きな変化が訪れます。

「パナソニックのテレビをつくる仕事から離れ、さまざまな企業からの依頼を請け負うようになりました。いくつかの企業を担当したのですが、自分にとって印象深いのはやはり建機開発の仕事と出会ったこと。建設業界の課題について深く知り、お客さまとともに解決へ取り組むようになりました」

建設業界における大きな課題とは、労働力の不足。単に人が足りないことも挙げられることに加え、危険な仕事を人以外に担ってもらいたいこともありました。これらは、2023年度も業界全体が取り組んでいることです。

建設業界で使われる、「i-Construction(アイ・コンストラクション)」という言葉。建設現場へICT技術を導入して生産性向上や労働環境の改善などを行うことを指すものです。この「i-Construction」の取り組みの一つとして開発を始めたのが、今回PERSOL Group Awards受賞にもつながった、自律走行ロボットです。

「建機メーカーでつくるものには、山を切り崩す際に現場で使うものがあります。施工管理の進捗を毎日図面に残しておく必要があるのですが、人がすべてを記録すると時間がかかるし、ときには危険が伴います。それを機械でできないか、できれば自動で動くロボットでできないかと考えました。ロボットが現場を走って計測し、記録もする。人間が現場を離れた夜間に稼働できれば、人間がはたらき始める朝には現場進捗図面が完成していることになる。建設現場の施工進捗管理方法を大きく変え、生産性向上を図れると考えました」

自力で論文探しから始め、半年でカタチに

開発プロジェクトは、ラジコン操作ができる4輪ロボットに、LiDARを搭載することから始まりました。しかしこの方法では、上手くいかないことが分かったと言います。

「LiDARというのは、Light Detection And Rangingの略。リモートセンサーのことです。光を発して対象物に当て、対象物から跳ね返ってきた光をキャッチすることで、対象物との距離などを図るセンサー技術なんですね。これを応用すれば、ラジコンロボが走行した場所の地形をセンサーで認識することができると考えました。しかし結果は上手くいかず。想定した図面を書けないまま、2カ月近くも過ぎてしまいました。まったくノウハウがなかったこの時期は、自力で論文を探して読みもしたんですよ」

LiDARの計測が上手くいかなかったのは、建設現場が舗装された道ではなく、山の中で凸凹の多い場所だったことにありました。デコボコした道で揺れや歪みが発生するため、ただLiDARを使っても、正確に位置や距離が測れない。そこで橋本が考えたのは、IMUを搭載することです。

「Inertial Measurement Unitの略で、傾きや回転を計測するセンサーであるIMUというものがあります。そのIMUとLiDARとを組み合わせることにしました。IMUがキャッチした傾きや回転状態に合わせて、凸凹道で歪んでしまったLiDARのデータを補正する。そうすることで、正しい位置や距離が測れるようになります。最終的には、広い山の中の現場でも、計測の誤差を±15cm以内と最小限に抑えることが可能となりました」。最初は壁にぶつかったものの、ゼロからプロジェクトを立ち上げ、進捗図面を作成できるようになるまでの期間は、なんと約半年。非常に短期間で技術をカタチにすることができました。2023年夏現在ラジコン操作での測定は実現しており、来年度以降で全自動化を目指しています。

振り返って、頑張っていたなと思える仕事を

全自動で現場図面を記録できるようになる。非常に高い技術ですが、橋本によると「技術そのものだけがすごくても、ダメなんです」とのこと。そこには、彼なりのこだわりがあります。

「たとえば今回のロボも、使っている技術自体は、家庭用の全自動掃除機に用いられているものとかなり近いんです。周りにあるものの情報をキャッチしながら自律走行するのは同じでしょう?だから難しかったポイントとしては、どんな技術を使うかよりも、その技術をどのように使うか、という点。分かりやすく説明すると、全自動掃除機と近い技術が使えるといっても、それが使われる現場が家庭なのか山の中なのかでまったく違いますよね。技術そのものは素晴らしいものに違いないのですが、そのままの技術では使えないのです。ではそれを、『どうやれば使えるか』という視点で変えていくのがエンジニア。そのためにすごく勉強をするし、努力もします。お客さまに提案できるくらい技術に詳しいプロでいなければならないと考えています」

エンジニアとして、プロとして、プライドを持ちながらプロジェクトに取り組み続ける橋本。最後に、「はたらいて、笑おう。」を体現するために、彼自身が大切にしていることを聞いてみました。橋本が挙げてくれたのは、彼が入社したばかりのころに学んだ姿勢です。

「パーソルグループになる前、新人のころから耳にしてきたことですが『産業報国』という考え方が印象に残っています。理想の社会や世界の発展のために、技術や事業で貢献しようといった意味です。私はエンジニアなので、やっぱり人や社会の役に立つものに携わりたいと考えています。役に立つと一口に言っても、それは簡単な道のりではない。むしろ何年も努力を重ねなければならないこともあるんですよね。世の中の技術が進化するスピードってとても早いから、自分が同じことをやっていては世の中の役に立てるわけがない。常に必死で、毎日違うことに取り組むくらいでないといけません。でも不思議なことに、難しいと感じれば感じるほど、やりがいを感じます。その時どきは大変でも、振り返って『あのときは頑張っていたなぁ』と思えるような仕事をしていたいですね」

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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