モチベーションの源泉は、新たな出会いからの刺激を最大限に楽しみ、現状を壊すこと ─ PERSOL Group Award 2021受賞の裏に(5)坂入俊浩 ─

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Award」を実施しています。「PERSOL Group Award」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループでもっとも栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2021年度の「PERSOL Group Award」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。第5回目は、シェアフル株式会社 坂入 俊浩です。

ギグワーカー向けアプリ『シェアフル』を、シェアNo.1のサービスに育てるために邁進する日々。その中で坂入が何よりも大切にしているのは、“新たな出会いから得られる刺激を楽しむこと”でした。

目次

はたらいていれば面白い人たちに会える

はたらき方の多様化を象徴するように、ギグワークと呼ばれる、必要なときに必要なだけはたらくスタイルが注目を集めています。坂入が3年前からシェア拡大に向けて注力している『シェアフル』は、そんなギグワーカーに向けたマッチングプラットフォームです。

「ぼくが『シェアフル』の企画営業を担当するようになったのが2019年の10月。その時点で、まだリリースから1年に満たないアプリでしたから未整備なことも多く、これからどう育てていくか、ほぼゼロベースから考えなければならない状態でした。一瞬、途方に暮れましたけど、振り返ってみればその手探りの感じがすごく楽しかったですね」

競合サービスと比べて後発の『シェアフル』は当時、シェア争いで苦戦を強いられていました。それでも、苦境の中から営業で顧客を開拓する作業を心から楽しむことができたのは、それまで社内で培ってきた人脈やお客さまに支えられたからだと坂入は語ります。

「これまで複数の部署、地域にまたがって仕事をしてきましたが、基本的にどこでも与えられた環境で楽しめるタイプなんです。どこでどんな仕事をしようとも、はたらいていれば面白い人たちに会えるじゃないですか?お客さまもそうだし、先輩や後輩もそうです。日々いろんな人たちと接して刺激をもらい、大事なつながりを持ち続けながら、次の異動先に向かう。出会いに感謝さえしていれば、必ずまた新たな面白い出会いがあると信じて前に進んでいます」

“失う”ことへの怖れが糧に

坂入の入社は2006年。学生援護会(合併により、入社時は現在のパーソルキャリアであるインテリジェンス)で求人メディア『求人広告an』(以降『an』)の営業としてキャリアをスタートします。その後、都内で複数の事業所を経て、2013年に九州の事業部に異動したことは、自身のキャリア形成において大きな意味を持っていると坂入は振り返ります。

「当時、九州エリアで『an』がまだまだシェアを伸ばせる余地のある地域という事で、立て直しのために福岡に呼ばれました。これがすごく楽しかったんです。私にとってはまったく知らない地域でしたが、人間関係を大事にする地域柄でそれが営業活動に直結する空気を感じていました。その関係づくりの中で得られた情報をもとに、お客さまや競合の戦略を先読みしてそれを上回る戦略を提案することができるようになりました。営業の人数は競合他社よりもはるかに少なかったので、質で勝負しにいくことはとても楽しかったですね」

果たして坂入は、求人マーケットが成熟する東京で養った知見と、持ち前のコミュニケーション能力を生かして、九州エリアにおける『an』のシェアをNo.2にまで押し上げます。

「最終的に『an』の事業が閉鎖されるまで7~8年は九州にいましたが、この期間は本当に楽しかったですね。いろんな仲間に出会え、いろんなお客さまと懇意になれたことは、今でも大きな財産です」

そして再び東京に戻った坂入が次に手掛けることになったのが、新規事業である『シェアフル』でした。

「それまで手掛けてきた求人広告は、いわば前課金制のビジネスです。これはお客さまからすれば、先にコストを負担して結果を待つかたちでしたが、『シェアフル』は後課金の成果報酬型のモデルです。この違いは大きく、お客さまにとってはメリットが大きいので、正直、お客さまの理解を得やすいはずだと高をくくっていました」

しかし、現実は甘くありませんでした。当初は、ひたすら飲食店をまわって『シェアフル』を売り込もうと尽力しますが、まるで結果の出ない日々が続きます。

「この時期、しんどい想いをしていたのは事実です。なにしろ、『an』が閉鎖される瞬間に立ち会ったばかりでしたから、手掛ける事業を失う寂しさは、痛いほど身に沁みていました。でも、だからこそ自分が自分らしく仕事をするためには何ができるかを考えてみると、とにかく1人でも多くのお客さまと会って話し、培ってきた社内・お客さまの人脈を活かして情報や人脈を集め、ガムシャラに前に進めていきました。今振り返っても大変でしたけど、そんな道なき道を切り拓くようなプロセスは、やっぱり楽しかったですよ」

そんな中で一つの転機となったのは、『シェアフル』が大手小売り企業の目にとまったことでした。

課題を洗い出し、機能の改善に務める日々

「まずは都内のフランチャイズ店舗で、試験的に『シェアフル』を使っていただくことになりました。何万もの店舗を展開する大手ですから、これはぼくらにとってもビッグチャンスです。しかし、そもそも知名度が低い上に、先行する競合サービスと比べてアプリの機能面で劣ってしまう部分があったのも事実で、なかなか思うような成果が得られず苦戦しました」

そこでチームでは、実際にアプリを使ってもらった現場の方の意見をすべて吸い上げ、機能のアップデートに取り組みました。

「チームのメンバーとは毎日のように1on1ミーティングを重ねて情報を共有し、ほかの営業やエンジニアとも何度も話して方向性を模索しました。この時期は本当に、毎月のように機能の改修を行なっていたので、目が回るような忙しさでしたね」

その一方では、『シェアフル』を一人でも多くの方に知ってもらおうと、地道な営業活動も行なっていました。限られた人員をみんなでやりくりしながら、エリアごとに説明会を実施し、知名度アップを目指します。

こうして目先の課題を一つひとつ丁寧に、泥臭くクリアしようと尽力できたのは、この『シェアフル』というサービスに、坂入自身が大きな可能性を感じていたからでした。

「すぐに仕事が決まって、すぐはたらけて、すぐにお金がもらえる。ユーザー目線に立ったとき、これはやはり魅力的なサービスだと思います。ただ、最後の“すぐにお金がもらえる”という部分については、競合よりも劣後していました」

競合他社の動きとして、はたらいたユーザーに対して仲介会社が給料をいったん立て替え払いして、のちに雇用元であるお客さま側からいただくというもの。この仕組みを先行して採用する競合も数社存在していましたが、このキャッシュフローが法的にどのような扱いになるのか、業界内でも明確にルール化されていませんでした。

「そこで経済産業省の方と何度も社長の大友が折衝を重ねてこのグレーゾーンを解消し、『シェアフル』でもこの立て替え払いをサービスに組み込みました。こういう大掛かりな改善に、スピーディーに対応できる体制が社内にあるのは良かったですね」

仕事は人生を楽しくするための大切な手段

そんな地道な努力がやがて実を結び、ぐんぐんとシェアを拡大していく『シェアフル』。コロナの影響から、ギグワークというはたらき方がさらに注目されるようになったのも追い風で、NHKの番組で『シェアフル』が取り上げられると、さらに民放他局からも複数の取材依頼が舞い込みました。

こうして課題の一つであった知名度の向上を果たし、ユーザーや店舗側が求める機能を次々に実装していった結果、『シェアフル』は2021年末に100万ダウンロードを達成。取引を続けていた大手小売企業の中でも、ギグワーク領域においてシェアNo.1に到達しました。

「これは2年間、チームのメンバーたちと一緒にたくさん苦労を重ねた結果ですね。まだまだやれることはたくさんありますし、『シェアフル』はもっと伸び代のあるサービスだと思っていますが、まずは頑張ってくれた皆の苦労が一つ報われて、ぼく自身もほっとしています」

坂入は言います。このプロジェクトを通して得た一番のご褒美は、シェアNo.1という栄誉や「PERSOL Group Award」ではなく、最大限の感謝とリスペクトができる仲間とお客さまができたことである、と。

プロジェクトメンバーの木谷 崇(左)と大成 康彦(右)

「もちろん、これで満足していてはいけません。次は200万ダウンロードを目指すべきですし、そのために改善すべきポイントもすでに見えていますから、立ち止まる暇はないですよ。でも、そんな忙しい日々も、同じ目標に向かう仲間の存在のおかげで、楽しくて仕方がないですね」

暗中模索の状態からスタートしたプロジェクト初期を思えば、「どこでも与えられた環境を楽しみ、とにかく高速で目の前のことをやってみる」という自己分析は、たしかに当たっているのでしょう。

最後に次の目標を尋ねると、いかにも坂入らしい、こんな答えが返ってきました。

「『シェアフル』を特定の企業に対してだけではなく、業界内でシェアNo.1にすることです。そうできるだけの手応えは感じていますし、また、そのプロセスも仲間と一緒に大いに楽しみたいですね。ぼくにとって仕事は、人生を楽しくするための手段の一つですから」

楽しむことを忘れない坂入なら、そんな大きな目標も、いつかしれっと叶えてしまいそうな気にさせられるのです。

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