パーソルグループでは、DI&E(ダイバーシティ、インクルージョン&イクオリティ)の浸透を目指して、さまざまな取り組みを行っています。そんな中、社員がボトムアップでDI&Eを推進する有志の取り組みも盛り上がりを見せており、テーマごとのコミュニティが生まれています。
(参照:https://touch.persol-group.co.jp/20210326_7442/)
9月8日には、そんな有志社員のコミュニティが主催する社内向けオンラインイベント「パフォーマンス向上!女性ホルモンからみる、はたらく女性の体を考えるセミナー」を開催しました。
女性のはたらくパフォーマンスを大きく左右する、女性ホルモン。どちらかといえば、パフォーマンスを落とす方向に作用するイメージが強いですが、周期を正しく知り、そのサイクルをうまく活用すれば、仕事の効率を大きく向上させることができます。
当日は、F Treatment 執行役員である金藤 美樹穂氏を講師に迎え、女性特有のライフイベントとビジネスの両立について考えました。その講演の様子をご紹介します。
(以下、講演内容を一部抜粋)
■登壇者紹介
株式会社 F Treatment
執行役員 金藤 美樹穂氏
リクルートグループにて、転職・婚活・結婚領域にて主に新規事業立上げとグロースに従事。
重度の生理痛でピルを十数年服用し、長年婦人科に通院。結婚後も仕事メインで、妊活は先送りに。年齢を考えようやく妊活を決意、不妊クリニックへ通院。2021 年6月第一子を出産。
自分自身の「女性の健康や、妊活不妊の知識不足」を実感し、女性ホルモンバランスプランナーⓇの資格取得。
データで見る女性の生涯と生理の密接な関係
誰しも生理前や生理中に、身体の不調や気持ちの変化を感じたことがあるでしょう。事前にパーソルグループの皆さんに実施したアンケートを見ても、「いつもはどうでもいいことにイライラする」、「ちょっとしたことで涙もろくなる」、「頭痛、腹痛、むくみがある」などなど、さまざまな声が寄せられました。とりわけ多かったのが、頭痛、肩こり、イライラです。
生理とは10歳前後の初潮から50歳前後の閉経まで、実に40年近くも付き合っていかなければならないもの。さらに、生理前と生理中の不調を踏まえると、1カ月のうち女性が快適に過ごせる期間は1週間ほどしかありません。
つまり、1度の月経を7日間として単純計算すると、女性は人生において約6年半もの時間を月経期間に費やすことになります。だからこそ、生理前や生理中の症状を軽減したり、うまく制御することで、もっと自分らしく過ごし、もっと高いパフォーマンスを発揮できるはずなのです。
正しく知っておきたいエストロゲンとプロゲステロンの役割
日本医療政策機構のまとめによれば、ヘルスリテラシーが高い人は低い人に比べて、PMSや月経痛などの症状がある際の仕事のパフォーマンスが高いことがわかっています(※)。だからこそ、女性ホルモンの変化を知り、快適な日常を送るためにセルフケアを心掛けることが大切なのです。
そこでまず知っておきたいのが、「女性ホルモンとは何か」ということ。女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があり、いずれも子孫を残すための働きを持っています。
(※)「働く女性の健康増進に関する調査2018」
https://hgpi.org/research/809.html
女性の月経周期は約28日間で、ちょうど半分に差し掛かる時期に排卵期を迎えます。エストロゲンはこの排卵期に向かって分泌量が増し、プロゲステロンはそれと入れ替わるようにして分泌量が増す性質を持っています。この2つのホルモンが、女性の体調や気持ちに変化をもたらすのです。
たとえばエストロゲンは別名「美のホルモン」と呼ばれ、肌のハリを出したり新陳代謝を促したりといった美容効果のほか、内臓脂肪をつきにくくし、コレステロール値を下げるなどの健康効果があることでも知られています。パフォーマンスの面でも、自律神経や脳の働きを活性化させることから、エストロゲンが最も多い排卵前は、記憶形成に関与する脳の海馬の神経突起が増えて、記憶力が5割り増しになるとも言われています。
一方のプロゲステロンは別名「母のホルモン」と呼ばれ、前述したような妊娠維持の作用により、身体に水分を溜め込むためむくみやすくなったり、食欲が増して代謝が鈍くなるなどの不調をもたらします。そのためこの時期にダイエットに取り組んでも効果が出にくく、むしろ栄養不足で逆効果になることもあるので注意が必要です。この時期は無理にダイエットに励むよりも、ドカ食いを防ぐことが大切でしょう。
女性ホルモンはこの2つがバランスよく働くことが重要なのです。
女性ホルモンが乱れる原因は何か!?
女性ホルモンが乱れる要因は大きく3つあります。
1つ目は睡眠不足。睡眠は昼間の活動で疲労した心身を修復する大切な時間であるため、夜ふかしなど不規則な生活によってリズムが乱れると、ホルモンバランスも乱れてしまいます。睡眠不足には段階があり、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、全不眠と症状が進行していくので、現時点で自分がどのレベルにあるのかを知り、早めにケアすることが大切です。
2つ目は栄養不足。たとえば無理なダイエットで体重を一気に落とそうとすると、脳は生命維持を最優先にするため、生殖機能を後回しにし、女性ホルモンの分泌を抑えてしまいます。症状が重くなると排卵がなくなり、生理もストップ。結果としてホルモンバランスを大きく乱すことになるので要注意です。1つの目安として、48時間の絶食で脳は司令をストップするとされていますから、むやみなファスティングは禁物です。
3つ目はストレス。これははたらく女性にとって避けられないものですが、女性ホルモンを分泌する脳の視床下部や下垂体は、感情や自律神経の中枢でもあるため、ストレスの影響を強く受けてしまいます。ストレスを受けると脳が誤作動を起こし、感情がコントロールできなくなったり、PMS症状が強くなったり、さらには不妊の原因にもつながります。
ここで重要なのは、脳は良いことも悪いことも、日常と違う状況はすべてプレッシャーとして受け止めてしまう性質を持っていることです。そのため、何がストレスになっているのか、自覚できないことも珍しくありません。たとえばご自身の結婚式や昇格の機会があった場合、気持ちとしてはハッピーであっても、脳にとっては非日常な体験をストレスととらえ、知らず知らずのうちに体調に変化を及ぼしている可能性があるわけです。
女性ホルモンと上手に付き合う方法
では、女性ホルモンと上手に付き合っていくためには、どうすればいいのでしょうか。ポイントは、月経周期に合わせた生活を意識することです。
たとえばデートを設定したり、ダイエットに取り組むのであれば、エストロゲンが活性化している排卵前がおすすめ。仕事面においても、ひときわ集中力を要する作業や、重要な出張などは、パフォーマンスが高まるこの時期にセッティングするのがいいでしょう。
そして排卵後には十分な睡眠と栄養摂取を心掛けることが大切です。美容面では、肌が敏感になりがちなので、慣れない化粧品を試すには向かない時期です。仕事面では、どうしても心身ともに不調に陥りがちなので、なるべく自分のペースでできる作業をこの時期にこなすのがベターと言えます。
さらに1日のサイクルでは、「セロトニン」と「メラトニン」という2つのホルモンの周期にも要注目です。
セロトニンは日中活動するためのホルモンで、精神を安定させる作用があります。セロトニンは午前3~4時から活動を開始し、午前のうちに日光を浴びることでスイッチがONになります。そして、日中に十分な日差しを浴びておけば、今度は眠るためのホルモンであるメラトニンが、夕方18時ごろから分泌され始めます。これにより、睡眠のサイクルが整い、心身をスッキリと回復させることにつながるのです。
また、睡眠中には疲労の回復をサポートする成長ホルモンの分泌が始まります。成長ホルモンのピークは就寝から2~3時間後とされ、セロトニンの分泌が始まる午前3時より前にそのピークを持ってくるのが効果的。つまり24時就寝が理想と言えます。
人が最も寝付きやすいのは体温が下がっていく過程であるため、そこから入浴の時間も逆算して考えることができます。体温は2時間ほどかけてゆっくり下がっていくため、入浴は21~22時に済ませるのがベスト。その後、就寝までの2時間ほどは、明るい光や激しい音楽などをなるべく遠ざけ、ゆっくりと気持ちを落ち着けて過ごすのがおすすめです。
こうして夜のスケジュールを決めていくと、胃腸の消化に負担をかけないために、夕食は入浴までの時間に余裕を持たせて、19~20時の間に済ませられればなおいいでしょう。
こうした女性ホルモンの特性を知り、できるかぎりのケアに努めながら、サイクルに合わせた活動を心掛けることで、はたらく女性はより快適に、そして効率的にパフォーマンスを発揮できるようになります。生理痛やPMSに悩まされている人は特に、まずは女性ホルモンとの付き合い方から見直してみてください。
当日は、グループ各社の女性社員はもちろんのこと、男性社員も多数参加。参加者からは、次のような感想が聞かれました。
・私は男性かつ独身なので、普通に過ごしていたら知ることのない知識が多くて有意義でした。
・自分の体、女性の体について真剣に向き合ったことがなく、とてもいい機会になりました。なんとなく不調だなと思っていた原因と自分のタイプが分かり、セルフケア方法も教わることができた。
・自分のライフプランを、キャリア含めて立てやすくなる方法を知ることができました。こんな検査があって、それをもとにこれからの人生を組み立てていくことができることを知ることができたと思います。