パーソルグループは、はたらき方やはたらく価値観が多様化するいま、あらゆるはたらく個人がより幸せに生き、自分らしくはたらくための一歩を踏み出すきっかけづくりを目的として、どなたでも気軽に参加できるオンラインセミナー「今、ニッポンのはたらくを考える会議」を定期開催しています。
3月8日の国際女性デーに開催したセッションのテーマは「国際女性デーに考える女性とはたらく」。昨年、ジェンダーギャップ指数で153カ国中121位という低評価を受けた日本。国際女性デーに合わせ、過去の時代につくられた女性像に縛られず、女性が自分らしくはたらき、生きていくための考え方を模索しました。
このカンファレンスでは、「Session1:変化の時代をどう生きる?社会の求める『女性像』に縛られず“自分の歩み”から考えるキャリア」、「Session2:ライフステージにおける身体の変化と対話し、人生100年時代を健やかにはたらく」の2つのセッションを開催。今回はSession2についてレポートします。
【Session2】
ライフステージにおける身体の変化と対話し、人生100年時代を健やかにはたらく
<ファシリテーター>
遠藤 祐子氏(株式会社メディアジーン 編集部門 執行役員 MASHING UP編集長)
<登壇者>
有馬 牧子氏(昭和大学医学部 医学教育学講座 講師(医学博士)日本女性医学学会評議員/NPO法人女性の健康とメノポーズ協会理事/国家認定キャリアコンサルタント)
本川 碧(パーソルホールディングス グループ人事本部 エンゲージメント推進室)
女性特有の身体のはたらきをあらかじめ知っておくことの大切さ
PMS(月経前症候群)や妊娠・出産、あるいは更年期など、ライフステージごとに訪れる身体の変化は、はたらく女性にとって大きな悩み。この避けては通れない悩みといかに向き合うべきなのか?セッションを通し、健やかにはたらく秘訣を模索していきましょう。
遠藤氏:はたらく女性の健康というのは、非常に大切なテーマでありながら、センシティブであるがゆえにこれまで深く議論されてきませんでした。データを見ると、PMSに悩む女性は70~80%、妊娠・出産、あるいは不妊治療に悩む女性は約23%、そして更年期による不調に悩む女性は約50%という実態がある中で、ヘルスリテラシーの高い人ほど仕事上のパフォーマンスも高くなる傾向が確認されています。つまり、自分の体がいまどのような状態で、何が必要なのかという知識を持っていたほうが、はたらく女性にとって有利なわけです。
有馬氏:女性は思春期から老年期まで、それぞれ年代ごとに健康面の課題を抱えています。例えば、10歳前後での初潮に始まり、20~30代では性感染症や不妊、月経異常など。そして40代半ば以降は更年期による不調と、少なくともこうした課題があることを知っておけば、前もって今後の生き方やはたらき方を準備することが可能になります。キャリアデザイン上、これは重要なことだと思いますね。
遠藤氏:本当に、あらかじめ知っていたらどれだけ良かっただろうかと、いまになって痛感させられます。私自身、何も考えず、がむしゃらにやって来てしまったので……。
有馬氏:こうした身体の変化は、どうしてもキャリア形成にも影響しますからね。性成熟期である10~20代のころは、次第にホルモンの分泌が活発になる時期ですが、重度のPMSで会社に行けなくなるようなケースは少なくありません。さらにPMSが悪化すると、今度はPMDD(月経前不快気分障害)によってメンタル面にまで影響することもあるんです。
遠藤氏:進学や新社会人など、人生の大切な節目の時期にこうしてホルモンに振り回されてしまうのは、なんだか辛いことですね。実際、20代のはたらく女性の実情はどうなっているのでしょうか?
本川:パーソルグループが約3万人の従業員を対象に実施しているエンゲージメントサーベイの中には、自分が心身ともに健康的にはたらくことができているかどうかを問う項目があるのですが、20代から30代半ばにかけての女性は、この点の満足度がほかの年代よりも低い傾向が見られます。
遠藤氏:なるほど。先ほど有馬先生がいわれたように、PMDDの問題というのもあるのかもしれませんね。そもそも我が身を振り返ってみても、20代のころははたらく上で悩みが尽きませんでした。
有馬氏:それが30代になると、今度は結婚や出産の問題へとシフトしていくことになります。そもそも結婚をするのかしないのか。子どもを産むのか産まないのか。出産後、仕事を続けるのか続けないのか。そうした重要な選択を迫られる時期に差し掛かりながらも、問題なのは避妊に対する知識はある程度啓発されていても、どうすれば子どもを授かれるのかという知識は、あまり勉強する機会がないことです。不妊治療はもちろん有効ですが、すべてを解決できるわけではないですからね。
遠藤氏:仕事面では、20代の努力が実を結び、30代では責任のあるポストに就いていて仕事から離れにくいということもあるでしょう。
本川:パーソルグループでもやはり、結婚や出産、プライベートに悩む30代女性の声が少なくありません。とくにご自身は結婚や出産にさほど前向きではなくても、周囲からのプレッシャーがストレスになっているパターンは多いようです。
人生100年時代に合わせて私たちにできること
遠藤氏:また、それなりに年齢を重ねていくと、更年期障害の症状に苦しめられる人も大勢います。
有馬氏:そうですね。更年期とは加齢によってエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少し始める時期のことで、不安やイライラ、鬱、めまい、ホットフラッシュなど、体にさまざまな不調が生じることがあります。その症状は200種類以上あるともいわれ、平均閉経年齢(完全に月経がなくなる時期)は50.5歳とされています。そのため、40代の方は不調を感じて診察を受けたとしても、まだ数値には出にくいケースが多いかもしれません。
遠藤氏:200種類も!よくいわれるイライラやめまいなどの症状は、本当にごく一部に過ぎないんですね。
有馬氏:だからこそ、なんらかの不調を感じたときには、自分で原因を決めつけず、ちゃんと医師の診断を仰ぐべきなんです。またその際、どうしてもかかりつけの内科を頼りたくなる人が多いと思いますが、特に40代からは婦人科に行ってみることをおすすめします。少々敷居が高く感じられるかもしれませんが、その後の人生を考えても、折りに触れ気軽に相談できる婦人科のパートナードクターを見つけておくのが、健やかにはたらき続ける秘訣でしょう。
遠藤氏:更年期については誰しも、ある程度理解しているつもりでいると思いますが、いざそのときになるとどうしていいのかわからないということもありそうですね。
有馬氏:そうなんです。はたらく女性にとっては、周囲にそのような変化を理解してもらうことも重要で、できることなら年代ごとのエストロゲン分泌量の変化を男性上司にも見てもらい、いかに女性の体がドラマティックな変化を遂げているかを知ってもらうべきです。当事者の方にとって、心身の不調を相談できる相手が社内にいないことが何よりも苦しいという調査結果もあります。中には更年期による不調を理由に、管理職者が自ら降格を申し出るようなケースも耳にします。でも、若いころから積み上げてきたキャリアを、体調不良を理由に手放さなければならないのは、非常にもったいないことですよね。
本川:社内でも50代女性に登壇いただくイベントはすごく反響が大きくて、やはり皆さん、健康課題とどう付き合いながら仕事を続けてきたのかに関心があるようです。これから40代になる人は、更年期症状を乗り越えた方の体験に勇気づけられる点も多いと思いますね。
遠藤氏:そうですよね。健康課題の相談先を見つけるのは、すごく難しいことなので、社内にそうした知見を持っている人がいるとわかれば、安心してはたらくことができるのではないでしょうか。
本川:そのためにも今後、50代以上の女性社員に協力を仰ぎ、世代を超えて相談できるネットワークづくりができればいいなと思っています。
有馬氏:ただ、更年期を怖れる必要はありません。たとえばホルモン補充療法という、女性ホルモンを補う有効な治療法もありますし、更年期を迎えたあとも次のライフステージへ向けて、ポジティブな気持ちを保っていただきたいです。
遠藤氏:つまり、人生100年時代に合わせて私たちにできることは、ライフステージに応じて仕事やプライベートの優先順位を整理して、キャリアの棚卸しをすること。そして、悩みを積極的にシェアして相談相手やパートナードクターを見つけることですね。