ドローンが活躍する社会に向けて、来年度には日本全国で地域実証事業がスタート
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社は、KDDI株式会社とともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が推進するプロジェクト「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」(以下、本プロジェクト)における「無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業(注1)」(以下、本事業)に対して提案を行い、2020年11月24日に採択されました。
(注1)「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト/無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」に係る公募について
本事業では2021年度末までに、人口密集地で、遠隔操作といったドローンを目視できない状態での飛行(ドローンの有人地帯における目視外運航「以下、レベル4」)の実現を目指し、さまざまな取り組みを行っていきます。
パーソルプロセス&テクノロジーで本事業を担当するのは、自治体・企業・団体のドローン活用を支援するドローンソリューション部。今回は、レベル4の実現を目指してプロジェクトのマネジメントを行っている2人に、本事業へ参画するに至った背景から、事業の概要、その先の未来、展望までを聞きました。
話を聞いたのはこの2人
岡田 健司(BE事業 ICTO統括部 ドローンソリューション部 ビジネス支援1グループ マネジャー)
ドローン関連のサービス提供者向けのビジネス支援を主に行っている。ドローンに関連する実証実験の現場を数多く経験。本事業では、実装に参加する企業・団体の公募から採択選定。採択後のドローン並びに運航管理システムの導入メリットの公開までの現場マネジメントを担当範囲としている。
城 純子(BE事業 ICTO統括部 ドローンソリューション部 ビジネス支援2グループ マネジャー)
2020年2月、広島で行われた地域住民の手によるドローンを活用した、災害初動調査・物資輸送に関する実証実験を地域住民の育成から実証実験に至るまでのプロジェクトマネジメントを経験。本事業では、地域実証参画企業・団体が安全かつ効率的に実証事業を進める為のガイドラインを、東日本における先行実証にて行うまでの現場マネジメントを担当範囲としている。
ドローンが物を運んだり、
点検や警備を行う世界に?
――レベル4が実現すると、具体的にドローンで何ができるようになるのでしょうか?
岡田:ドローンが人間の目の代わりに遠隔でさまざまな役割を果たしてくれます。たとえば、空から点検や監視、警備などが遠隔で行えるようになりますし、農業の育成管理や測量などもドローンを活用する事でいまより効率的に行う事が可能となります。物流にも貢献できるようになりますね。いまは、コロナ禍で小口輸送のニーズも増えていますが、そうした荷物の運送もドローンで行うことが可能になるでしょう。
城:災害時の調査もできるようになります。ドローンで空から災害現場の全体状況を把握できれば、医療活動や支援活動を安全かつスピーディに行う手助けになります。
――世の中の課題解決にもドローンが一役買うようになると。
岡田:はい。ドローンは、人にはできない価値を発揮するツールです。導入することで世の中のさまざまな課題解決にも繋っていくと思います。パーソルプロセス&テクノロジーでは、2018年の下期にドローンソリューション部が立ち上がり、「ドローンの目視外飛行を安全かつ効率的に業務へ活用していく環境づくりを支援する事」をミッションに掲げてさまざまなプロジェクトを行ってきました。
本事業のレベル4の実現という目標は、私たちが成し遂げたいことと同じで、加えて私たちには、ドローンを使って日本の社会課題の解決や、各企業のコスト削減などに貢献したいという想いがあります。本事業に参画し、さまざまな知見を得ることは、そうした想いの実現にも役立つと思いました。
今年度は、兵庫県、宮城県、三重県の3地域で、
来年度はドローンの社会実装に向け、全国で地域実証実験を実施!
――レベル4実現のために、今後どのようなことを行っていくのでしょうか?
岡田:レベル4という最終目標に対して、ドローン業界がいま抱えている課題は大きくは2つ。運行管理の技術面と、環境・ルール体制です。本事業では、「運行管理システムの技術開発とその技術の確立」と「持続可能な運用体制(コスト構造の確立)」を求められていて、その課題をクリアするため、これから運行管理システムを実際に使っての技術検証や、持続可能な運用体制を見える化させるための実証実験をKDDIと共同で行っていきます。
――運行管理システムとはなんですか?
岡田:いま、日本国内で誰がドローンを飛ばしているのか、当事者しか知りません。今後、ドローンが社会実装されると同時に飛行・活用されるドローンの台数が増え、ドローン同士が衝突する可能性があります。そうしたリスクを回避するため、どこにドローンが飛んでいるか、そうしたことを管理するシステムが運行管理システムです。
運行管理システムでは、「運行管理機能」が「運行管理統合機能」に接続。その結果、他のドローン事業者とも飛行状況などを共有することが可能となり、安全に飛ばせるようになります。
いまも、ドローンだけではなく、有人航空機などもどこを飛んでいるかがわかるシステムとなっており、将来的には空域全体に関するあらゆる情報を共有できるシステムになっていく予定です。
――空域全体の管制塔のようなものをつくるというわけですね。
岡田:はい。KDDIが開発したシステムを活用して、ドローンでの運用が実際に可能なのかを実験していき、技術を確立していきます。
城:社会実装されれば、いろいろな地域で同時にドローン運行管理システムにアクセスすることになります。それを想定しての実験なので、さまざまな地域で同時に行います。
――実験を行う地域は決まっているのでしょうか?
城:今年度は、先行して西日本(兵庫県)、東日本(宮城県)、災害時想定(三重県)の3地域です。来年度はこれから行う二次公募で応募してくださった全国の企業・団体の中から採択させていただき、その地域でドローン運行管理システムに接続した状態で行います。
岡田:二次公募では、自治体とタッグを組んで応募・共同提案をしていただくことを想定しています。なぜならドローンを飛ばすには、自治体の協力が必要不可欠であり、ドローンの活用をその地域で推進していくにも自治体が地域実証実験に参加していると、その後もスムーズに地域実装へと進んでいけるからと考えるからです。
――手を挙げる自治体・企業さまは多そうですね。
城:各自治体でそれぞれの課題がありますし、興味を持たれている自治体・企業さまは多いです。先行実証実験を行う3地域も非常に感度の高い自治体ですし、二次公募でもかなり応募があるのではないかと思います。
――「持続可能な運用体制(コスト構造の確立)」は、そうした地域実証を行いながらつくっていくのでしょうか。
岡田:はい。地域実証実験の中に、「ドローンを活用した際のコスト構造が成り立つのか」という要素を入れ込んでいて、その実証・成果を、ガイドラインという形で取りまとめる予定です。具体的には、ドローンを活用するにはどうやれば成功するか、そのために何を準備すべきか、などですね。
実現したいのは、安全でいまよりはたらき方も暮らしも豊かな世界!
――レベル4の実現した後、次なる目標や夢としてドローンでどんな世界を実現していきたいですか?
岡田:人口が減少していく日本社会において、ドローンが人手不足を補ったり、生産性向上に役立つようになればいいと思いますし、なると思っています。そして、将来的には一家に一台、一人に一台あり、みんなの「困った!」をドローンが解決している、そんな世界にしていきたいです。
城:ドローンによって新しいはたらき方が生まれると思います。仕事面でも暮らし面でもドローンで“いまよりもっと豊かに”、を目指していきたいですね。また、災害時にさまざまな調査をしっかり行うことは、防災に繋がること。人々の安全な暮らしにドローンを役立てていきたいです。