パーソルグループは、7月17日よりウェビナーイベント「今、ニッポンのはたらくを考える会議」をスタートしました。新型コロナウイルス(以下、コロナ)の影響を受け、ニッポンの「はたらく」が大きく変化しているいま、私たちは、一体何に備え、どのような行動をとるべきなのか。そんなこれからの「はたらく不安」に答えるべく、毎回、各領域の専門家をお招きし、さまざまな業界・職業の今後や私たちが自分らしくはたらくことができる未来について考えます。 |
8月21日(金)19時から行われた第5回目のテーマは、「コロナ禍のモヤモヤから一歩先へ。自分らしいライフキャリア・スタイルを考える」です。スリール株式会社の堀江 敦子氏をゲストスピーカーにお招きし、モデレーターであるパーソルキャリア株式会社の時田 絵里奈とともにコロナ禍における女性のライフスタイル・キャリアの在り方を探りました。一部を抜粋してご紹介します。
登壇者紹介
堀江 敦子氏
スリール株式会社 代表取締役
仕事と子育ての両立を体験するインターンシップ「ワーク&ライフ・インターン」の事業を展開。経済産業省「第5回キャリア教育アワード優秀賞」を受賞。現在は“子育てしながらキャリアアップできる人材と組織を育てる”をコンセプトに、企業向けに若手女性・復職社員・管理職向け研修を展開。著書「自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門」
時田 絵里奈
パーソルキャリア株式会社
キャリアアドバイザー歴8年、過去3,000人以上の相談実績あり。現在、3歳になる子どもがおり、時短勤務中。自身もワーキングマザーであることから、女性やワーキングマザーへの支援が得意。
コロナ禍によってスキルを身につける意識が強くなった
現在、ともに妊娠中であり、さらに時田は3歳の子どもを持つワーキングマザー。話は子を持つ母の仕事と子育ての両立の現状からスタートしました。
時田:今回、コロナ禍ではたらく女性のモヤモヤについて考えていければと思います。よろしくお願いします。
堀江氏:よろしくお願いいたします。コロナの影響を受け、社会が大きく変化しました。時田さんは、コロナ禍の生活はいかがでしたか?
時田:リモートワークをしていたのですが、本当に「仕事」と「子育て」の両立が大変でした。保育園は2カ月弱お休みだったのですが、ヤンチャ盛りの3歳男児ですからね。
堀江氏:実際に、コロナ禍で在宅勤務をしながら子どもを見ている人を対象にした調査があったのですが、実に65%の方が「仕事を中断して育児に当たっている」とのことでした。
堀江氏:今回のコロナ禍によるリモートワークで、これまで分断されていた育児と仕事が完全に融合してしまったんですね。どうやって生活していいかわからない――、未就学児が家にいると、こんな状況になりますよね。
堀江氏:仕事ができる時間って、早朝と昼寝のときと、寝かしつけたあとの深夜しかないんですよね。食事は1日3回、夜も元気で寝てくれないし……。つまり、在宅しながらの育児は、そもそも“無理ゲー”なんですよね。
そんな中、今後の生活自体を見直している人も増えているようです。コロナ禍において、「今後のキャリアについて意識が変化した」と答えた人は74%。リモートワークが中心となり、新しいはたらき方が浸透したことで、皆さん、個人のスキルアップに目がいくようになったんですね。
時田:確かにそれは私がキャリアアドバイザーとしてキャリア面談をしていても感じますね。
堀江氏:20〜40代の女性100名にとったアンケートでは「今後のキャリアに不安を感じる」と答えた人が72%。先行きが不安なので会社に依存できない、といったときに自分のスキルが社会に通用するのかを意識するようになったというデータが出ています。自分にスキルを付けるという意識が色濃くなったんですね。
モヤモヤを解決するには、自分で書き出して可視化することが大切
新たなライフスタイルを確立するにあたり、何からはじめたらいいかわからない。堀江さんはそれに対してモヤモヤを書き出すことが重要と説きます。
堀江氏:新しいライフスタイルといわれますが、自分でどうしたらいいのかわからない人が増えています。こういったモヤモヤを解消するのに重要なのは可視化すること。ということで、本日は「モヤモヤ吐き出しシート」を用意しました。実際に時田さんに書いていただいたので、ご説明いただいてよろしいですか?
時田:生活満足度は80点ぐらいですね。仕事のことに関して、いまは気力も体力があるんですが、ずっと続けられるかが心配です。プライベートに関しては、もっと子どもと遊びたい、実家にもう少し帰りたいなと。また、将来のこと、お金のこと、互いの家族の両親の介護とか、子どもの教育をどうしようというのは常に考えていますね。
堀江氏:これを見ると、時田さんは将来に対してモヤモヤしていることが分かりますね。パートナーと話し合う必要があるのに、話せてないことがモヤモヤの原因なんだと。
堀江氏:大抵の場合、モヤモヤの原因は仕事、プライベート、周囲との関係を同時に考えて、混乱しているケースが多いです。そして、女性は先読みしがち。1年先とか3年先のことを考えて、見えない未来を不安に思ってしまう。また、周りに迷惑をかけないように自分に「完璧」を求めてしまう。結果、キャパオーバーに。あと、「整理」と「交渉」が苦手。その根底には、プライベートや子育ては自分でやらなくては、と思い込んでいる部分があります。
時田:確かにいろんなことを並行に考えてしまうというのは私もそうですし、周囲の女性を見ても当てはまりますね。
堀江氏:まず、「自分がどうしたいか」を考える。仕事とプライベートの方向性を明確にして、周囲を巻き込んでいく。順を追って考えていくことが大切です。コロナ禍のいま、改めて考えるいい機会かなと思います。
職業としてのキャリアではなく、ライフキャリアを意識していくことが大事
一般的にキャリアというと、職業に付随することを考えがちですが、昨今ではより広い意味でのキャリアが見直されている。それが、ライフキャリアという考え方です。
堀江氏:ライフキャリアとは生涯において、個人がどんな役割を果たすべきかという考え方。仕事だけじゃなく、家庭の中、地域の中でどういった価値を提供できる人間になるかを考えることです。人生100年時代であり、少子高齢化。労働人口も減る中で、自分がどんな価値を社会に提供できるかはより鮮明に描くべきです。そもそも、何が起こるかわからない社会です。自分の軸を持っていないと簡単に流されてしまいますよね。
3年後のビジョンからいまの自分を引き算することで、やるべきことが見えてくる
堀江さんが用意した、VISIONシートでは、3年後の自分をイメージしてシートを埋めていきます。そこからいまの自分を引き算することで、やるべきことが見えてくるといいます。
堀江氏:3年後になりたい自分をイメージします。そのとき、重要なのはワクワクして考えること。「家はどこにある?」「仕事は?」「休日はどんなふうに過ごしている?」――こうなったらハッピーという絵を描く。真ん中に絵を描いたり、イメージを貼ったりすると、より明確に見えてきます。
時田:実際に描いてみると自分がこんなことを考えていたのか!という発見がありますね。
堀江氏:たとえば、パートナーと二人、各々これを書いて見せ合う。私も先週末、VISIONシートを元に合宿をしました(笑)。自分一人ではできないことをパートナーと共有して、巻き込んでいく。その際に重要なのは、ビジョンを語ることです。「こんな世界にしたいけど、これが難しいから、お願いしたい」ということですね。
時田:パートナーとしっかり話す時間が重要ということですね。
堀江氏:そうですね。互いのビジョンを明確にし、将来の自分から、いまの自分を引き算することで、やるべきことがくっきり見えてくるようになります。