複業時代にぴったりなはたらき方?「ギルド型組織」の現在地

日本の「はたらく」を取り巻く環境は、いま大きな転換期を迎えています。事業も多様化し、価値観も組織の在り方も変化している中、プロフェッショナルなスキルを持った人材が集まるギルド型組織が注目されはじめています。
こうした時流の中、今回は、2019年12月に始動した、企業に人材・デザイン・資金などを投資し、事業を加速させることを目指すギルド型組織、株式会社BOLDに取材!代表取締役COOの海部 洋氏とCEOの川名 麻耶氏に、ギルド型組織にはどんな人がいるの?プロ集団をまとめるのは大変?何が学べるの?など、“気になる!”を聞いてみました。

 

目次

ギルド型組織「BOLD」とは

“どこかの素敵を、世界一にしよう”をコンセプトに掲げ、ギルド型組織で運営する企業。CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)が企業に寄り添ってプロジェクトを立て、そのプロジェクトにあったプロフェッショナルなメンバーでチームを組み、スキルを投資。企業の成長に合わせて報酬を得るレベニューシェア(提携したパートナーと相互の協力で生み出した利益をあらかじめ決めた配分率で分け合うこと)形式をとる。企業と一緒にリスクをとる仕組みはギルド型組織の中でも新しく、注目を集める。パーソルグループの社員も参画中。


多種多様なメンバーが、
社員ではなく「複業」として参加


――メンバーにはどのような方がいらっしゃるのでしょうか?

海部氏:ギルド型組織とは各分野のスペシャリストが集まった組織のことなので、メンバー全員が何かしらの専門性を持っています。その中でもBOLDは、自分のスキルをまず投資し、顧客企業の成長具合によって報酬を得るというレベニューシェア方式をとっているため 在籍しているのは“リスクを取れる人”というのが中心です。メンバーは、複業で参加している人が多いですね。

川名氏:業種でいうと、デザイン、コンサルタント、金融、経営者、投資家、ディレクション、それに作詞・作曲の分野までバラエティに富んでいます。デバイスもチャネルも増えていく中で、レベルの高い企業支援を行うには、さまざまな業種、それぞれの分野に精通した能力の高い人と協業していく必要があります。

――案件ごとにメンバーを決めるのですか?

海部氏:はい。案件が入ってきたら、まずプロジェクトに必要な分野のメンバーに「興味がある人、一度ディスカッションしましょう!」というメールを一斉に送っています。最終的には、適性やメンバー同士の相性などを考えながらメンバーを決めるのですが、基本的には能動的に「やりたい!」と思ってくれる人にお願いしたいと思っています。

川名氏:メンバーとともにチームリーダーも決めます。でも、リーダーに関しては、プロジェクト初期のスモールスタート期と、多くの人や組織を巻き込んでより複雑になる拡大期では、向く人が違う場合もあるので変更も視野に入れています。まさに試行錯誤中なのですが、互いの仕事を信頼できるプロ集団かつ上下関係をしばるような肩書がないこと、そして、会社組織ではなく、プロジェクトへの参画期間を柔軟に設計できるギルド組織だからこそ、できる取り組みだと考えています。


プロ同士が分かり合うには?
重要なのは、自分たちの“北極星”


――プロの集団となると、メンバーをまとめるにも苦労しそうですね……。

海部氏:相手を尊重するのが大きなポイントだと思っています。会社のような従属関係ではなく、横並びの組織なので、上から「やりなさい!」というのは違いますからね。メンバー同士が尊重し合い、高め合い、そこから出てくる多様な意見を柔軟にプロジェクトに反映しながら進めるのが理想です。

川名氏:でも、尊重し過ぎると、さまざまなバックグラウンドや価値観を持つ個性的なメンバーが違う意見をいって「結局どこに落ち着くの?」となってしまいます。まとめるには“納得してもらう”ことが大切。なので、「みんなの目指すのはココなので、こういう形で決めます!」といえるように、判断軸となる最終目的、”北極星”をプロジェクトのスタート時につくっています。

海部氏:北極星というのは、その企業のアセットや伸びる部分、光る部分を考えて見極めたコア・コンピタンスをベースに考えます。まずはそれを設計し、“そこに資すること”としてすべてを進める。BOLDが、一番大事にしているルールです。

――北極星があっても、そこに向かう道筋が違うこともあるのでは?コミュニケーション上の工夫などあれば教えてください。

川名氏:私は、相手とぶつかりそうな意見をいうときは、意識的により明るく話をします。明るく意見をいい、自分の分野外で分からないことは格好つけずに聞く。楽しいムードだと、話がまとまったりするじゃないですか(笑)。“遠慮せず、明るく楽しく”というのは、“尊重する”と同じぐらいコミュニケーションで重要視していますね。

――普段は出会うこともないような別分野のプロと、複業で関わるからこその学びはありますか?

川名氏:何より、視野が広がると思います。日々、さまざまな業種の人と話をする中で、自分の幅が広がり、成長しているように私は感じています。
私は、金融の世界にいたとき広告宣伝費をエクセルの1行、ただの数字としか見ていませんでした。でも、広告宣伝費というものは、売上のシナリオを大きく左右する可能性がある重要な変数だった。そうやって、新しい視点が自分の中に入っていったんです。
これからの時代は、ビジネス、テクノロジー、デザイン……、そのすべてが分かる、高度デザイン人材が企業の中心になっていくと考えています。それぞれの分野の一戦で活躍するプロと関わるということは、その人たちの考え方、意思決定への手順など、いろいろなことがOJTで学べるということ。本業でも大いに役立つ力になると思います。

海部氏:自分の価値観を拡げ、新しい経験や学びを得られるのは、ギルド型組織ならではだと思います。
いま、ただ与えられた仕事をこなすだけでは、キャリアを成長させることは難しい時代になりました。自分ができることの可能性を、自分で拡げていかなければ、生き残れなくなっていますよね。ギルド型組織には、そうしたチャンスや新しい価値観を見出すヒントがきっとあると思います。転職のような「0か100か」ではなく、
複業で、本業をやりながら並行して参加できるというのも、良い点だと感じています。


リスクをとるからこそ、
仕事が自分ごとになり、好きになる!


――今後の意気込みとメッセージをお願いします。

海部氏:プロフェッショナルなことが行えて、そこに正しい評価がついて、尊敬し合えるフェアでサステナブル組織――、そのレベルがすごく高いところを目指していきたいと思っています。
ギルド組織には、多様な分野の価値観と考え方があります。それを知るだけでも価値があります。
企業にとっては、「BOLD」の仕組みはちょっと複雑だし、仕事をしながら信頼関係を築いていくこれまでの在り方と違って、はじめに契りを交わすことになるのでハードルが高く感じるかもしれません。でも、我々もさまざまなリスクを一緒に追います。
みんなで一緒にリスクを負いながら、企業の成長を通し、ともに良い社会へと変えてきたいと思います。

川名氏:言われた仕事をして、成果物を納品したらそれで終わりって、そのあとのことは若干他人ごとのようになりませんか?でも、リスクを取るとなると、そのあとのことも自分ごとになります。自分ごとになるから仕事により熱が入るし、愛着が湧いて好きになるし、一緒にやっているメンバーのことも好きになっていく。そして好きが増えていくと体力的に大変でも楽しいし、楽しければ笑う――、私はそう思っています。やりたい仕事をみんなで大笑いしながらできたらハッピーだなって。みんなで一緒に、パーソルさんが掲げる「はたらいて、笑おう。」を実現できると良いですね!

お話を聞いたのはこの二人

川名 麻耶氏 代表取締役/CEO

1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門に入社。クライアント企業の資金調達やM&A案件のアドバイザリー業務に従事。大前研一氏の誘いを受け、2008年よりビジネス・ブレークスルーにてオンライン大学・MBA・社内研修用プログラムのキャスターを務める。出産・育休を経て、2017年よりカントリーマネージャーとして米国AIユニコーンベンチャーの日本法人立ち上げに携わる。

 

海部 洋氏 代表取締役/COO.CREATIVDIRECTOR

1980年生まれ。2009年スタジオディテイルズを創業、代表取締役兼クリエイティブディレクター、株式会社エックスポイントワン取締役。
2017年にはソフトバンクイノベンチャー(SoftBank InnoVenture)にてシェアサイクリング・プラットフォームの新規事業の立ち上げに取締役兼クリエイティブディレクターとして従事。クリエイティブとテクノロジーの両軸に精通し、グラフィック、Webサイト、アプリケーションなど幅広く手がける。

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