社長と一緒に、過去~未来の“はたらく”を考えてみた 【中編:2000年~2020年】

パーソルグループが、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を発表してから、2020年10月で1年が経ちます。新型コロナウイルス(以下、コロナ)の影響を受けて人々のはたらき方が大きく変化しているいま、私たちはどうあるべきか。過去から学び、未来の“はたらく”を考えるため、パーソルホールディングス代表取締役社長 CEOの水田 正道と、パーソルグループの社員が一緒に考えてみました。1970年から未来の2030年までを、計3回に分けてお届けします。

前号(10月1日公開):社長と一緒に、過去~未来の“はたらく”を考えてみた 【前編:1970年~2000年】


「終身雇用」「年功序列」に限界⁉
iPhoneなどスマホの登場で “はたらく”の固定的な価値観が崩れはじめる


目次

2000年~2010年:ITバブル~リーマンショック

―“はたらく”にまつわる世の中の出来事―
2001年 アメリカ同時多発テロ事件
2003年 労働者派遣法改正(製造業や医療業務への派遣も解禁)
2006年 男女雇用機会均等法改正(男女双方の性差別、妊娠・出産を理由とした不当な扱いを禁止)
2007年 郵政民営化
2008年 iPhone日本上陸
2008年 リーマンショック
2008年 労働基準法改正(時間外労働賃金の引上げなど、長時間労働を抑制)

―パーソルの出来事―
2008年テンプホールディングス(現:パーソルホールディングス)設立

――いままでは努力規定だった男女雇用機会均等法が、1999年には禁止規定に改正され、大黒柱だけがはたらく時代ではなくなりました。2001年にはアメリカ同時多発テロ、2008年にiPhoneが日本上陸、さらにリーマンショックが起きるなど激動の時代です。皆さんはどんな想いではたらいていましたか?

山口:「会社が潰れるかもしれない」という危機感を目の当たりにした時代でした。私は当時、人材派遣の営業としてIT系の会社を担当して、どんどん人を採用して会社が膨れ上がっていくのを見ていたんです。でも、2008年にリーマンショックが起きてから業績がガタ落ちして。人材配置・組織も大きく改革せざるをえない状況で、中途も新卒もどんどん辞めちゃうのを食い止めなきゃいけないと思いながら、先行き不透明な現実を受け止めていました。

――当時は大企業の経営破綻や統合も相次いで、みんな驚きましたよね。安部さんはエンジニアの立場からこの時代をどう感じていましたか?

安部:「会社の机が広くなっていくなあ」と感じていました。電子業界を支えていた半導体がどんどん進歩して、机の上にあった大きなディスプレイが小さくなり、山積みの本もパソコン内にデータとして蓄積され、社員も減り……、会社がスリムになっていったんです。もともと半導体は日本がけん引していたのですが、だんだん海外に押されるようになり、私たちエンジニアは生き残りをかけてより複雑な半導体をつくって差別化しようと夜遅くまではたらいていました。一方で、リーマンショックによる不景気で、開発投資が減っていき、日本の産業自体が空洞化してくのを感じていました。

――効率化も相まって労働力の必要性も減る時代でしたね。塚本さんはどうですか?

塚本:“はたらく意味”が芽生えはじめ、アップデートされた時代だと思います。私は当時高校生だったころからiPhoneを使っていて、情報へのアクセスは簡単にできるし、SNSで知らない人とも繋がれるようになっていたのが当たり前だったんですけど、この時代にIT化によってはたらく人が情報を手軽に得られるようになり、自分の意志や目標を持って行動する人としない人の差が生まれはじめたんじゃないかなと感じます。
また、当時、出産・育児のために退職した母親が、新しく勉強して介護職に就いたということがあって、「はたらくって1回じゃないんだ、大人になってからも勉強して新しい仕事ができるんだ」と驚き、“はたらく”がアップデートされたんだなと感じました。

2000年、「テンプスタッフ」は仕事情報検索サイト「ジョブチェキ!」をスタート。派遣スタッフはインターネットでの仕事探しができるように

園田:私も、はたらくことの“前提となるもの”が変わっていく感覚がありました。正社員が当たり前じゃなくなって、法律による追い風もあり、女性がはたらく環境も整ってきて。「こうじゃなくちゃ」という決まりがなくなったというか。ただ、私個人としては、結婚しても男性と同じようにはたらいてはいるけれど「子どもができたら仕事を辞めたり、ペースダウンしたり、“やりがい”を諦めざるをえなくなるのかな」という漠然とした不安を抱えながらはたらいていました。はたらきながらの子育てで、選択肢が多いようで多くない、可能性があるようでない。整いはじめた制度と現実の中で、希望と不安が混在する時代だった気がします。

――枠組みはあっても、それを実行できる環境、周囲の空気感にまでは至っていなかったんですよね。それを実行するには強い意志が必要だったと……

水田:たしかに、制度は整いはじめていたものの、世の中的にはまだまだ長時間労働を是とする考え方が根強くて、朝早くから夜遅くまではたらくことが当たり前のような空気感でしたね。

「終身雇用」「年功序列」が維持できないことに世の中が気付きはじめ、“はたらく”の固定的な価値観が崩れようとしていました。多様なはたらき方をつくっていく必要性がでてきたものの、とはいえまだ「人材紹介」や「人材派遣」などの言葉はもちろん、多様なはたらき方が理解され、浸透するのには結構な時間がかかりましたね。制度が文化に追いつかない歯がゆい時代でした。

2006年、テンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)が東証一部へ上場


東日本大震災をきっかけに“はたらく”価値観にも大きな変化
働き方改革で、多様性や変化にポジティブに


2010年~2020年:東日本大震災~アベノミクス

―“はたらく”にまつわる世の中の出来事―
2011年 東日本大震災
2011年 求職者支援法制定(長期求職者への職業訓練、就職支援の実施が開始)
2015年 女性活躍推進法制定(労働人口減少などを背景に、女性の活躍を推進)
2016年~ 働き方改革(2019年から順次関連法施行。時間外労働の上限規制、有給休暇付与の義務化)

―パーソルの出来事―
2013年 インテリジェンスグループ(現パーソルキャリア、パーソルプロセス&テクノロジー、パーソルチャレンジ、パーソル総合研究所)を連結子会社化
2016年 新グループブランド「PERSOL(パーソル)」発表
2019年 グループビジョン「はたらいて、笑おう。」発表


――東日本大震災のあと、社会そのものと個人一人ひとりの幸せを考える時代にシフトしていきましたね。働き方改革がはじまり、2020年にはコロナの影響で一気にリモートワークが普及しました。はたらき方の多様化が進む現代の印象について、皆さんの意見を聞かせてください。

安部:エンジニアにとっては模索の時代ですね。震災やコロナをきっかけに人々の価値観がガラッと変わり、既存のビジネスが壊されていきました。たとえば音楽はCDからデジタル配信になったり、買い物はEC化が進んでリアル店舗の売上が落ちたりと、お金の流れも変わっています。以前は、改良改善の技術開発で良かったものが、いまはビジネスモデルや「どう価値を提供するか」まで考えて技術を生み出さなければなりません。また、ビジネスの移り変わりのサイクルが短くなっていることから、組織や技術のサイクルも短くなり、エンジニアの育成による技術習得のサイクルが追い付かなくなってきているという課題にも直面しています。

山口:私も「震災復興」がキーワードだったように思います。ITバブルで「資本があればなんでもできる」と思われていましたが、震災をきっかけに「地域や人の繫がり、コミュニティが大事だ」という価値観に変わりました。私自身も「一億総活躍社会」をキーワードに社会起業家が出てきた時期に地方に興味を持ち、週1回だけ地元での活動をスタートしています。こうしたはたらき方を会社が認めてくれたのも、この時代の変化によるものだと思います。

園田:“はたらくが変化する”ことに肯定的になりましたよね。世の中が多様性を受け入れるようになり、女性や高齢者の事情にも鑑みて柔軟なはたらき方にしたり、自由にキャリアチェンジしたりと、変わることに対してポジティブになりました。自分がやりたい仕事や望むはたらき方をつかみ取れるようになったのは、ここ最近のことだと思います。

塚本:私も、はたらく意味が多様化した時代だと思います。この時代の就職活動は自由で選択肢が多いからこそ迷いがちで、ロールモデルとなる人がいないなかで「何を基準にどこではたらけばいいんだろう」と悩みました。ただ、終身雇用制度が機能しないということは、ずっと同じ会社にいなくてもいいということですから「まずはこの会社で頑張ってみよう」とカジュアルに考えてもいいんですよね。実際に、いまはグループ内でいろいろな職種を経験したり、スタートアップで副業したりして自由にはたらいています。

――新しいはたらき方を実践できるようになってきたんですね。

水田:いままで抱いていた幻想がなくなった時代ですよね。「終身雇用=安泰」ではなくなった現実を、みんなが直視するようになりました。物質的に豊かになると欲しいものがなくなりますよね。震災をきっかけに「大事なのは物の豊かさではなく心の豊かさだ」と気付き、価値観が変化したように思います。

私たちパーソルグループもこの10年ですさまじい変化・成長を遂げました。M&Aによって事業領域を広げていったのと同時に、変化の激しい環境で、はたらく人にどんな価値を提供できるのか?私たちの存在意義を徹底的に考えました。その結果、パーソルグループとして一つになって、「はたらいて、笑おう。」というグループのビジョンを明確にできたことで、大きな飛躍の一歩を踏み出せたと思います。

グループブランド「PERSOL(パーソル)」の発足

多様な価値観を持った個人に向き合い、一人ひとりの「はたらいて、笑おう。」を実現していくことを掲げて、経済的な価値だけでなく社会的な価値を両輪で追っていきます。

当日話した内容をグラフィックレコーディングで記録【中編:過去2000年~2020年】(グラフィックレコーディング・上園 海)

(文・秋 カヲリ)

次号(10月5日公開):社長と一緒に、過去~未来の“はたらく”を考えてみた 【後編:過去2020年~2030年】

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