相互理解と敬意を大切に!パート・アルバイトと分かり合うため、リーダーに求められる行動とは?

パーソル総合研究所の「フィールドHRラボ」では、飲食・小売・アパレル・運輸をはじめとするサービス業の現場ではたらく人材の採用・育成・定着に関する課題解決を支援しています。
今回は、パート・アルバイト(以下、スタッフ)を抱える現場の店長やリーダー職(以下、マネジャー)から届く「困った行動」の代表的な声をピックアップ!解決法をフィールドHRラボ 責任者 日比谷 勉に聞きました。

 

日比谷 勉
(パーソル総合研究所 フィールドHRラボ責任者兼エバンジェリスト)

日本マクドナルド株式会社に31年間勤務した後、2018年4月にパーソル総合研究所入社。日本マクドナルドでは、計11店舗の店長を経て、本社採用セクションに異動。採用部門の責任者として、計100万人のアルバイト・パート採用を推進。2018年より現職。



――マネジャーは、現在どのような「困った」を抱えているのでしょうか?

日比谷:多くのマネジャ―が頭を抱える「困った行動」をタイプ別で考えると下記になると思います。

――「やらず嫌い」タイプには、具体的にどのような行動があるのでしょうか?

日比谷:代表的な行動には、固定電話の対応ができない、手書きの領収書が書けない、といったものが挙げられます。
固定電話は携帯電話と違い、誰からの着信かが分かりません。また、メール文化が発達しているいま、固定電話への連絡というのは、比較的緊急性が高い内容やクレームであることがほとんどです。そのため、うまく対応できないと怖いから出ない、ということが起こってしまいます。
領収書では、社名や苗字を口頭でいわれても漢字が書けないという悩みや、「上様って何?」「収入印紙って何?」といった声が挙がることもあります。

――どちらも、昔に比べて、普段の生活で触れることが少なくなりましたよね。それも影響しているのでしょうか?

日比谷:そうですね。まず、「知らない」「わからない」というのがあります。ですので、「電話対応もできないのか」「そんな漢字も書けないのか」などと自分の経験値や、価値観だけで叱るのは厳禁です。スタッフが困る場面を想定して、対応策を提示し指導することが大切です。
電話なら、ロール・プレイングで練習するのもいいと思います。領収書なら紙を用意しておいてお客さまに書いていただいてもいいなど、術を教えてあげてください。頭ごなしに叱るといった誤った指導やコミュニケーションは、離職へ繋がってしまいます。



――「公私混同・ばっくれ」タイプですが、まず、公私混同で困るシーンは?

日比谷:いちばん多いのは、休憩時間が終わってもおしゃべりをしていたり、ダラダラしていたり……、オンとオフの区別がつかないケース。仕事中でもお客さまがいらっしゃらない場合に、みんなで冗談をいって息抜きをするなどは必要なことですが、常時オフのような状態では効率良く仕事をすることはできません。周囲のスタッフのやる気を削いだり、店舗全体がダラダラした雰囲気になってしまうこともあります。
あと、公私混同の困った代表例として、バイト先で仲良くなった数人が、みんなで遊びに行くために一緒に休んでしまうというケースがあります。

――そういう場合はどう対応すればいいのでしょうか?

日比谷:ただ指摘するのではなく、なぜ、どうしていけないのかを話す、つまり「諭す」ことが大切です。指摘するだけでは、その場は正してもまた繰り返したり、あまり強くいうと最悪は辞めてしまうこともあるからです。例で挙げた後者の場合は、「バイト先で知り合ったのに、バイト先に迷惑をかけるのは常識としてダメなこと。みんなで休んだら周囲がどう思うか、どう大変だったかを想像してごらん」といった感じで諭します。きちんと説明すれば、正当な指摘として受け取り、行動を正してくれます。

――ばっくれるタイプの方にも、やはり諭すことが大切なのでしょうか?

日比谷:「ばっくれタイプ」は、突然辞めてしまったり、無断欠勤や無断遅刻などをする人を差しています。このような場合は、諭す前に理由を聞くことが重要です。「辞める」と突然連絡がきた、シフト時間が終わっても店に出てこない……、そんなときはマネジャーから電話するなどで連絡をとり、どうしたのか理由を聞いてみてください。もしかしたら、いじめがあって店に出るのが怖いのかもしれないし、何かのトラブルに巻き込まれたのかもしれません。もし、そうした理由の場合、スルーすることは組織のためになりません。

前職のマネジャー教育で教えていましたがアスームイノセンス(assume innocence 相手に悪意はない)で考え、話を聞くことが大切です。無断遅刻の場合は、店に来たときに「何かあった?大丈夫?」とまずは声がけを。その後、手がすいたときに理由を聞きましょう。そのうえで、来るはずの人が来ないと心配することや周りが困ることを説明し、休んだり遅刻をしたりするときは一本電話を入れてほしいとお願いをすると良いですね。諭すときは、みんなの前で話すと、ほかのスタッフも気を付けてくれるようになりますよ。


――ブライドのぶつかり合い「派閥抗争」は、多そうですね。

日比谷:必ず起こるといっても過言ではないのが新卒入社の社員と、経験豊富なベテランスタッフとの対立です。こうした場合は、マネジャーがお互いを理解させる必要があります。新入社員には「数十年の経験があるベテランスタッフに勝とうとしなくていい。社員として何をすべき?」。ベテランには「長い目で見て、新入社員の彼(彼女)にいろいろ教えてあげて。いずれ、彼(彼女)が店長になるかもしれないんだし」とか。そうすると、両者で歩みより、会話が生まれはじめます。

――仲を取り持つことが大切なのですね。

日比谷:はい、そうです。チーム内で抗争が起こると、いがみ合っている本人たちだけではなく、周囲にも悪影響を与えて職場の雰囲気が悪くなりますし、離職する人が出てしまうこともあります。スタッフは、学生、主婦、シニア、外国人と多様ですし、抗争が起こる構図はたくさんあります。いざというときに仲裁に入るためにも、マネジャーは、スタッフ一人ひとりのバックボーンや性格を把握しておくことが重要です。


スタッフはただの労働力ではない!
マネジャーは、みんながはたらきやすい「敬意ある職場」をつくろう


――このような「困った」を減らすためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか?

日比谷:私は「敬意ある職場」といっているのですが、マネジャーとスタッフがお互いに敬意を持ち、会話や指導ができる職場環境をつくることが一番大切だと思っています。たとえ「困った……」ということがあっても、そういう職場ならすぐケアができますし、対応策を立てることも可能です。一方で、何も話せないような職場では、トラブルや問題が起こってもマネジャーまで話が上がってこず、スタッフ間でこじれて大問題に発展してしまうこともあります。

――マネジャーがスタッフに信頼されることも大事ですね。

日比谷:はい。そのためにもスタッフを単なる労働力としてみるのではなく、個々を見て大切に思うことです。何が得意で、何が苦手で、いつがはたらきやすく、どんなときに力を発揮するか……。そのうえで、シフトの時間や組み合わせを考え、はたらきやすい環境の中ではたらいてもらう。悩みを抱えているなら、それを早く吸い上げてあげる。マネジャーは野球の監督と同じようなものです。みんなが力を最大限に引き出せるように気を配り、采配し、チームを強くするのです。

――スタッフは、何かあったらマネジャーに遠慮せずに話したほうがいいんですね。

日比谷:不安なこと、分からないこと、現場での悩み……、どんどん相談してもらいたいですね。悩みを抱え込んで、気に入っていた職場を去らなければいけないなんてもったいないですし、相談すること自体が職場のためになります。お互いに理解しあって、良い職場にしていけるといいですね!

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