就活最前線を解説!『新しい就活』著者 佐藤裕に聞く、これからの就活とは

いよいよ本格的にスタートする、2021年卒の新卒就活。いま、就活を取り巻く環境は大きな変化を見せはじめており、企業にも学生にも、意識の変化が求められています。

そんな就活の最前線を解説し、学生が自分の未来をより主体的に描けるよう、パーソルキャリア株式会社の“はたらクリエイティブディレクター”こと佐藤 裕は、自身初の著書『新しい就活 自己分析はやめる!15万人にキャリア指導してきたプロが伝授する内定獲得メソッド』を河出書房新社より、1月8日に出版しました。
今回は、著者の佐藤 裕に、“古い就活”と“新しい就活”との違い、就活トレンド、学生時代に何をするべきかまで、幅広く就活の「いま」について聞きました!


就活には「未来志向」で向かえ!「want」から「must」へ意識を変えよ!

――本書のタイトルである“新しい就活”と、これまでの“古い就活”は、どう違うのでしょうか?
“古い就活”とは、過去の経験や現在の価値観を基準にして未来を描くようなやり方です。自己分析などをして過去を振り返り、業界研究本をひたすらインプットして、それを面接でただアウトプットするといったイメージですね。
一方、“新しい就活”は「未来に起こることを予測して、やるべきことを自覚する『未来志向』で就活をする」ことです。

――「未来志向」がなぜ就活に大切なのですか?
未来は、いまとまったく違う世の中になっていると考えられるためです。
たとえば30年後、どんな世の中になっているでしょう。AIやテクノロジーの発展により、人間が行う仕事の定義が変わっているかもしれない。もしくは、労働寿命が延び、職場には80歳をすぎた方も普通に活躍している時代になっているかもしれません。

――いま現在の見えている世界をもとにして、未来の自分がどうなっていたいかを考えるのは、限界がありますよね。
そこで大事になるのが、やみくもに「やりたいこと(want)」を探すのではなく、「やるべきこと(must)」を未来から導き出して、いまに落とし込むという行動です。これこそ、真の「未来志向」だと考えています。いまの自分にとっての「must」を探し出せる力は、変化していく時代の中において、生き抜く力になります。そして、企業もそのような人材を求める時代になってきています。

――未来を想像するには、情報収集も重要かと思います。いまの学生はデジタルツールを使いこなしていますし、情報には困らない時代になっているのでしょうか。
学生は情報を十分に持っていると捉えられがちですが、私は、実はそうではないと思っています。というのも、現代はユーザーの志向に合わせた情報提供がされています。「おすすめ記事」などがその典型ですね。そして、ユーザーはその情報の中から自分が知りたいと思う情報だけを選んでいます。だから、ネットから入ってくる情報は、実はとても狭い範囲になりがちです。意識しなければ、デジタルツールを使っても視野は広がらないんです。
そのため、あえて自分の興味や関心の範囲の外にある情報を、取りに行く意識を持つことが必要になります。しかし、その意識は、一朝一夕で身につくものではありません。大学生活の早いうちからさまざまな人と情報に触れていないと、いざ大学3年生になってから困るかもしれませんね。

超早期化する就活マーケット。早めに社会との接点をつくれ!

――いまの就活を取り巻く環境を教えていただけますか?
就活マーケット動きは、超早期化しています。インターンシップがスタンダードになり、選考の一環として活用されるケースも増えてきています。また、就活をしない学生も出てきています。

――就活をしない学生は、就職をしないんですか?
いえいえ、就職をしないわけではありません。一般的な就活をしないだけであって、たとえば大学1年生のときからベンチャービジネスに取り組んでみたり、企業と接点を持つためのアルバイトをしたり、もしくはインターンシップに参加してみたりしてそのままその企業へ就職するといったケースがあります。これはまだ、ごくわずかな層ですが。

――アメリカなどでは、卒業してからインターンシップに行くこともありますよね?
はい。まず日本とアメリカなどとでは、インターンシップに行く目的が違います。一概にはいえないですが、日本の学生は就職、アメリカなどは仕事の実績を積むことを目的に参加することが一般的です。さらに、アメリカでは、就職先を探す際にGPA(※)が非常に重要視されます。そのため、学生たちは予習復習で忙しく、アルバイトやインターンをする時間がないんです。
以前、ハーバード大学で講義をした際に、ハーバード大学の学生たちでも自身のキャリアデザインに不安を抱えていることを知りました。社会に触れる機会が少ないので、社会が未知の世界なのでしょう。それに比べたら、日本の学生はアルバイトやインターンをする時間がある。社会に触れて視野を広げ、「やらなければいけないこと(must)」を見つけてほしいと思います。
(※)Grade Point Average(学生の成績評価値のこと)

「好き」を因数分解せよ!

――2020年の就活環境を、どう予測されていますか?
かなり前倒しになると思います。内定承諾や入社までのコミュニケーションは通常7月や8月に集中しますが、今年だけはその期間がオリンピックの影響により、企業が動きにくくなります。その分、企業は時期を前倒して人材確保を進める可能性があると考えられるため、例年にないほど早期化するかもしれません。

――就活を目前に控えている大学3年生が、この時点でやれること、やるべきことはなんですか?
「好き」の因数分解ですね。
たとえば、「スポーツが好きだからスポーツ業界を目指す」というのではなく、「なぜスポーツが好きなのか」を明確化するということです。「チームで優勝を目指すことにワクワクするから好き?」「計画を立てて成果を出すことに魅力を感じる?」など、「スポーツが好き」の中にどんな因子があるのかを見つけて、それが当てはまる業界を探してほしいです。その因子が見えてくると、いろいろな業界に興味が出てくると思いますよ。

大学生だけでなく、企業の方にも活用してもらいたい1冊

――改めて、この本をどのように活用してもらいたいですか?
就活をしている方は、自分の就活が“古い就活”になっていないか、大学4年生は後輩にアドバイスするときに、“古い就活”を教えてしまっていないか、ぜひ本書でセルフチェックしてほしいですね。大学1年生や就活準備をしている方は、しっかり読み込んで、学生生活の過ごし方に活かしたり、社会に出るための準備や社会で活躍するための準備に繋げたりしていただければと思います。
そして本書は、企業人事の方や学生を子どもに持つ保護者の方にも読んでいただきたいと考えています。学生向けに書いてはいますが、就活マーケットの変化や最新のトレンドなど、学生の「いま」を知っていただけると思います。

――最後に、「はたらく」を控えている学生に向けてメッセージをお願いします。
「はたらく」という世界は、学生の皆さんが思っているほど、悪くない。自分がはたらく未来に希望を持ってワクワク、ドキドキしてください。「でも…」と、もし希望を持てないのなら、「はたらくって楽しいよ」という社会人と話をしてみてください。はたらくことを楽しんでいる人は、たくさんいます。

――ありがとうございました。

目次

『新しい就活 自己分析はやめる!15万人にキャリア指導してきたプロが伝授する内定獲得メソッド』

日本経済団体連合会が発表した就活ルールの廃止や内定直結のインターンシップの増加など、就活はいま大きな転換期を迎えています。また、AIやテクノロジーの進化に伴い、企業が求める人材も変化しています。その一方で、学生が行う就活は、自己分析に代表されるこれまでと同じ“古い就活”で、未来を見越したキャリアデザインが積極的に行われていません。そのため、入社前に抱いていたイメージと、入社後の実態に乖離を感じる「リアリティ・ショック」に陥ってしまうケースが多くあります。

本書では、学生たちが「自分らしくはたらくこと」ができるよう、新たな就活のスタンダードを提示。人事担当者や就活・進路指導に携わる社会人にも、さまざまなメソッドを提供する1冊です。
河出書房新社刊 1,400円(税別)
出版社サイトほか、全国の書店、Amazonなどのオンライン書店にてご購入いただけます。


【著者プロフィール】
佐藤 裕

若者の“はたらく”に対するワクワクや期待を創造する「はたらクリエイティブディレクター」。1979年生まれ。横浜出身。法政大学文学部英文学科卒業後、外資系HRサービス会社にて営業&コンサルタント職に従事。現在は、パーソルグループ新卒採用統括責任者を務める傍ら、2015年からパーソルキャリアが運営する若年層向けキャリア教育支援プロジェクト「CAMP」を立ち上げ、大学生を中心にキャリア教育を実施。若者の就活変革や将来への期待を創造する活動を積極的に行う。関西学院大学ではフェロー、名城大学では池上彰氏がスーパーバイザーを務める、予測不可能な時代を主体的に生きる力を養成する「チャレンジ支援プログラム」にも参画。ほかにも全国の大学で年間200回近くの講座・講演を行い、これまで15万人以上の学生に、キャリア・就活の支援をしている。2019年3月には、ハーバード大学の特別講師を務め、活動範囲は日本だけに留まらずアジア、アメリカと広がり、世界のキャリア教育・就活・“はたらく”価値観の専門家として、テレビやラジオに出演するなど、幅広く活躍する。

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