ロボによって人の「はたらく」はどう変わり始めた?-先端ロボ活用事例の現場から【(3)RPA編】

ロボが人の仕事を奪うことはない!人のすごさを知ったからこそ感じるRPAの底力

ロボット(以下ロボ)の活用が注目されていますが、皆さんの身近なところでロボは活躍していますか?こんなにもニュースになっているのに、意外と近くにいないロボたち。実際に彼らはどこでどんなことをし、人の「はたらく」にどんな影響を与えているのか、パーソルグループの取り組みから紐解いていきます。
[第1回 Pepper活用編はこちら/第2回 完全リモートワーク編はこちら]

目次

アナログコミュニケーションの文化が根付く会社で、最先端RPAを導入するということ

RPA=ロボティック・プロセス・オートメーション。ここ一年くらいのバズワードです。でも実際にどんなものかを説明できる人は多くないのではないでしょうか。RPAとは、これまで人が担ってきたバックオフィス業務などを、ソフトウェアに組み込まれたロボットが代行して作業する仕組みのことを指します。
このRPAの導入を一気に進めてきたのがパーソルテンプスタッフです。本部長の号令の下、グループ内でのさまざまな業務にRPAが導入されてきましたが、ここに辿り着くまでに多くの難題を超えてきたことを、RPA推進室室長の矢頭 慎太郎はしみじみと振り返ります。

矢頭「RPAを魔法のツールとして『すべてを解決してくれる』、みたいに考える人が多いのですが、あくまで人の代わりになってくれるだけなので、導入した後もマネジメントし続けなければいけないんですよ。現場の皆さんにその理解をしてもらうことを強く意識して進めていきました。」

加えて、RPAの導入に当たって、もっとも重要なことはこれまでの業務の棚卸。これまで自分たちが行ってきた業務フローを可視化・標準化していくことが生命線となりますが…。

矢頭「パーソルテンプスタッフって、個人に寄り添ったアナログのコミュニケーションが得意であり、強みでやってきました。個々人の工夫や感覚でやってきた人たちにとって、『標準化』というのは心理的にも抵抗があったと思います。正直いまもそれはゼロではありません。ただ、それでも腹を括って『やろう!』って意思決定した部署では、少しずつ成功体験が生まれはじめたんです。手押し車の最初の一回転目が大変と言いますが、まさにそれでした。」

その代表的な事例が山田 優が取り組んだプロジェクトです。

人がやってきたことってこんなにすごい!人とロボとの関係性が見えた瞬間

山田は業務サポート部に所属しています。ここでは、パーソルテンプスタッフではたらく派遣スタッフの方の契約内容登録など、主に営業のサポート業務を担っています。同社ではたらく派遣スタッフの方は約9万人。1人あたり年4回ほど契約更新が発生するため年間でおよそ36万件もの契約更新に伴う事務作業が発生していました。だからこそ、このRPA導入に白羽の矢が立ったのです。

山田「正直、意外でした。弊社はそういう新しいことには積極的に手を出さない会社だとずっと思っていたんです。それが、まだニュースで話題になりはじめたばかりの最先端の技術を取り入れるなんて、と驚きましたね。」

それでもRPAに対する可能性を感じ、とてもポジティブな気持ちでスタートしました。その際に特に気を付けなければいけないと感じていたのが、チームで一緒にはたらくメンバーへの配慮でした。

山田「オペレーションを担当してくれているメンバーが『自分たちの仕事がなくなるのではないか』という誤解を生まないように進めなければと強く思っていました。これまでみんなが手作業で必死にやってきた業務をロボに移管することで、その分、新たなほかの業務をすることができるようになる、皆にとって成長する良い機会なんだ、ととらえてもらえるように努めました。テスト段階から少しずつメンバーを巻き込んだことで自分事として関心を持ち、新たな挑戦をする楽しさを分かち合えたことは良かったですね。」

社内の誰も経験のないプロジェクトだったので、はじめはテストも失敗続きでまさに暗中模索!
しかし数々の失敗をノウハウとして蓄積し無事導入。運用に入ると、その効果は想像を超えていました。RPAがもたらしたことは大きく二つあると山田は言います。

山田「一つは圧倒的に業務効率が上がり、新しい業務依頼に応えられるようになったことです。業務部隊としていままで以上に社内の他部署に対して価値を提供できていると感じています。
もう一つは人の持つ能力の素晴らしさに改めて気付けたことです。ロボの要件定義のためにメンバーがやっていた業務を可視化し切り分けていくと複雑な思考プロセスを踏む作業が残ります。『みんながこんなに大変なことをやってくれていたんだ!』と気付いたとき、メンバーに対する感謝の気持ちでいっぱいになりました。状況に応じた臨機応変な対応はロボにはできない『人ならでは』なんですよね。」

人との共存がロボが活躍できる大前提であると気付いた瞬間だったのです。

専門スキルを身に付けるだけじゃない、RPAを通して得られたこと

RPAによって新たなキャリアに繋がった人たちもいます。同社で事務オペレーション業務を担当していた大竹 正彦と佐伯 由紀子は、RPA研修を経て現在RPAエンジニアとしてキャリアチェンジを果たしました。何が彼らの背中を押したのでしょうか。

RPA導入研修の様子

大竹「それまでの業務に単調さを感じており、今後のために何かスキルを身に付けたいなとは思っていたんです。業務の合間にVBAを使ってExcel・Accessツールをつくっていましたが、RPAの知識を得ることでより多くの業務を自動化できそう!またRPAロボつくるのって楽しそう!と思ってチャレンジしました。」

佐伯「私はまだ入社して約3カ月のタイミングだったので、どうしようかという迷いはありました。ただ、せっかくいただいた研修の機会なので、受けるだけ受けてみようと思って。それから考えよう、くらいの気持ちでスタートしました。」

RPAという未知のものに対してわくわくを感じる大竹と、まだ様子見の佐伯では研修後のRPAに対するとらえ方もそれぞれでした。

大竹「もともと担当していた業務の中で『この業務は手間がかかるけど、どうにもならない』と諦めていたことがあったんですが、研修を受けて『RPAで解決できる!』という手ごたえを感じることができたんです。」

佐伯「実はついていくのが精いっぱいで、研修中にすべてを終えることができなかったんです。面白そうと思う反面、『大丈夫かな?』という不安も大きくなっていました。そのため一回の研修だけでは覚悟が決まらなかったのですが、その後半年間研修を兼ねてトレーニングする期間をつくってもらい、そこでようやくやっていけそうって思えました。」

スタート時の心境は違えど、RPAエンジニアとして業務を担当していく中で、二人にはこれまでにない変化が見えはじめました。それは「エンジニア」という職種から少し遠いように感じる「コミュニケーション」の部分だったのです。

大竹「RPA導入時には、これまであまり経験してこなかった部署との細かいやり取りが発生しますし、業務の全体を把握して形にしていかなければいけません。大変さを上回る楽しさを感じています。」

佐伯「実は人前で話すことはそんなに得意ではありません。ユーザーの前で話す機会が増え、経験を積んだものの、いまもまだ苦手意識はあります。それでも前の部署の人から『すごく話せるようになったね』って言われたんです。自分で気付かないところで成長できているんだなって思いました。」

RPAエンジニアとして専門性の高いスキルを身に付けることで、キャリアチェンジを果たしただけではなく、これまで経験していなかったコミュニケーション力を高めることにも繋がっているのです。

人があってこそのロボ。ロボは人の仕事を奪わない

RPAはまだまだ多くの可能性を秘めています。

矢頭「デジタルなどの最先端技術にとても消極的だった当社が、ここまでの成功体験を積むことができ、現場の皆さんにも浸透していました。今後もテクノロジーの力を使った変革はさらに進んでいくと思います。RPAもAI活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)とも連携しながら、はたらく人も幸せにし、お客さまへ提供できる価値を高めることに貢献していきたいと思っています。」

パーソルグループ内へのRPA導入実績は数えきれないレベルにまで達しています。さまざまな事例を見てきたからこそ矢頭は力強く言います。

矢頭「ロボが人の仕事を奪う、ということはないと思っています。人の仕事は残ります。それを私たちは体現しています。」

人がいかに複雑な手順で思考を重ね、判断してきたか、ということを、一緒に乗り切ってきたメンバーを見て身に染みて感じています。人がいるからこそロボが活きてくる、ロボとの共存は意外とシンプルな考え方で実現できるようです。

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