選ばれる宿になる!宿泊業の裏方仕事をテクノロジーの力でサポートするDot Homesと資本業務提携

パーソルイノベーション株式会社は、宿泊業向けにDX(デジタルトランスフォーメーション)支援するスタートアップ、株式会社Dot Homesと資本業務提携を締結しました。

宿泊業はいま、新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)拡大により大きな打撃を受けています。外出自粛による客室稼働率の低下、十分な感染防止と3密回避対策などに対応する、Withコロナ時代の集客・マーケティング、施設運営、サービス提供、ホスピタリティの再設計が、急務となっています。

Dot Homesは、「観光産業を“おもてなし”に集中できるようにサポートする」をミッションに掲げ、DXソリューションなどを行っています。今回は、Dot Homes CEOの留田 紫雲に、宿泊業の課題から、パーソルグループ入りを決めた理由、今後の展望までさまざまことを聞きました。

◆Dot Homesとは
宿泊施設の無人化や省人化、非対面、非接触化、そして能率化を実現するサービス支援・マーケティング支援のDXソリューション「Dot Homes」を展開。また、競合比較などホテルのマーケティングに必要な機能を幅広く持ち、“別荘に泊まる休日”をコンセプトに、ユニークな別荘に特化した予約プラットフォーム「Bessoo.com」の運営を行っています。さらに、主にインバウンド・若者をターゲットとした3つ(民泊施設、グランピング施設、ホステル)の「直営ブランド」施設も展開しています。

 


アナログな世界から脱出し、
自社集客を目指せ!


――大学時代に起業されたと聞いていますが、なぜ宿泊業に?

留田:私自身、旅が大好きだったことが、大きな理由です。起業した2015年当時、私は大学在学中の21歳で、それまでは画像解析を機械学習で行う開発に携わっていました。当時から最新技術が実際の生活には活用されていないことに課題感を持っており、旅をしたときの自分のユーザー体験とテクノロジーを掛け合わせれば、宿泊業に良い変化を生み出せるのではないかと考え、事業をはじめました。

――宿泊業に関わってみて、驚いたことはありますか?

留田:とにかくIT化やデジタル化が遅れている、ということですね。宿泊予約をファックスや電話のみで受け付け、手書きの部屋割りをつくっていたりする施設もあり、ざっくり20年ぐらい前で止まっている感覚でした。空室率の改善なども経験や勘で行っているケースが多くて……。IT化すれば、もっとおもてなしに集中でき、お客さまの旅行体験の価値を上げられるのではないかと思いました。

――IT化が進まない原因は?

留田:ホテルなどの宿泊業にはサービスのプロは多いのですが、マーケティングや経営、テクノロジーに詳しい人がいないというのが原因だと思っています。大手の施設でも集客の9割ほどを旅行代理店に依存しているのが実情。そのため、コロナの影響で旅行代理店からの集客が見込めなくなると、打つ手がなくなってしまうんです。Dot Homesもグランピングなど直営ブランド施設は旅行代理店と契約をしていますが、旅行代理店からの集客は1割程度。9割が自社集客なので、コロナの影響があっても90%以上の稼働率があります。

――Dot Homesが自社集客に成功しているポイントは?

留田:集客に重要な要素は、立地や内装といった「ハード部分」と、価格、運営力(口コミなど)、マーケティング力といった「ソフト部分」に分けられるのですが、その2つを横断して考えることが大切です。たとえば、施設を建てる際、客単価5万円と3万円とでは何をつくるべきか変わってきますよね。でも、ハードとソフトを横断した「軸」がないと、建設会社に丸投げしてかっこいい施設を建てても、コンセプトやターゲットのニーズからずれてしまう。そうなると全体がちぐはぐして、お客さまの心に刺さらず、選ばれにくい施設になってしまいがちなんです。
Dot Homesの直営ブランド施設は、データを基軸にして、事業計画の作成、土地の仕入れから建築のディレクション、人材の採用や教育、HP等の販促素材の制作から日々のプラン作成・料金調整といった業務一つに至るまでブランドコンセプトに合わせて設計されています。他社から宿泊ブランドのプロデュースやリニューアルを依頼された場合も同じで、データを基軸にハードとソフトを横断したプロデュースをしっかりと行います。そうすることでほかの施設としっかりと差別化された模倣が難しい施設が完成します。


コロナ禍のいまこそ
デジタル化の波を全国にスピーディに広げたい


――なぜパーソルグループと資本業務提携を、と思われたんですか?

留田:産業界の課題をDX化支援によって解決していきたいという点で目的が合致したからです。コロナの影響で宿泊業は大きな転換期を迎えています。「お客さまに選ばれる施設」をこれまで以上に目指さなければ生き残れません。そのためにはお客さまへのおもてなしの質を上げることが必要。だから、いまこそデジタル化によって裏方仕事の効率化を推進し、業界に変革を起こすチャンスだと思っています。
Dot Homesの営業担当者は1~2名しかいません。2018年から2020年の2年間、山梨県では一定の存在感がでてきましたが全国にスピーディに拡大していくことは難しい。0~1はつくれたけれど、これを10に広げるために必要な資本体力やブランド力、営業組織や経営のノウハウなどをパーソルグループから得たいと思ったからです。

――パーソルグループの印象はいかがですか?

留田:ミーティングを進めていく中で感じたのは、一人ひとりが仕事に誇りを持ち、責任感がとても強いということ。主語が「うちの会社」ではなく「私」なんです。仕事が自分事になっている。そうした個が集まった組織はすごく強いと思っていて、パーソルグループにはそうした強さを感じました。


裏方仕事をテクノロジーで効率化することが
「はたらいて、笑おう。」の実現に繋がる


――今後、注力していきたいポイントを教えてください。
留田:Dot Homesの事業は次の3つがあります。どれもデータを介して宿泊業にアプローチするものなのですが、これらの事業を通して業界をアップデートしていきたいと思っています。

――アップデートとは?具体的に教えていただけますか?

留田:宿泊業は、お客さまをおもてなしするサービス業です。でも、宿泊施設の業務のほとんどが予約管理やレジ、清掃、経理、労務など、お客さまと接することのない裏方仕事です。こうした裏方仕事をテクノロジーの力で効率化していき、お客さまをおもてなしする時間を増やしたり、おもてなしの仕方を考える時間に当てるなど、“おもてなしに集中”してもらいたいと思っています。また、宿泊業はマーケティングのインハウス化(外部発注せず自社で運営すること)があまり進んでいない業界ですが、テクノロジーの力を活用して自社の施設の強みやお客さまの求めている価値も可視化することができます。そうしてより良い選ばれる宿泊施設になってもらいたいと思っています。

――裏方仕事が効率化すると、従業員の方のはたらき方も変わりそうですね。

留田:そうですね。実は、宿泊業は離職率が高い業界です。その原因の多くは、生産性の低さからくる重労働低賃金の労働体制と、就業前と後の仕事への期待値のズレ。お客さまを笑顔にしたい!と燃えて入社したのに、実際は裏方仕事ばかりで、そのうえ給与が低いとあっては、辞めたくもなりますよね。私はこうしたはたらく環境を変えていきたいと思っています。

上質なホスピタリティを提供し、顧客満足度があがれば、顧客単価もあがり、利益もあがる。それがしっかり従業員の給与へ反映される――、そうした好循環が当たり前の業界になってもらいたいと思っています。

――まさにグループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現ですね。

留田:そうですね。いま、関東を中心にした75施設にサービスをご利用いただいていますが、5年後には3,000施設までに広めることを目指しています。これは全国の宿泊施設の約10%に当たります。この数の施設にいろいろなサービスを導入し、現場のはたらき方や環境が良い方向に変わると、後の施設も追随して変わってくると思います。これまでアナログだった業界をデジタル化し改革を起こすわけですから、簡単ではありませんし、特にはじめの突破口を開くのは骨が折れるとは思いますが、一人でも多くの人の「はたらいて、笑おう。」実現のためにがんばります。

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