「社員の潜在能力を活かす」。人事執行役員が進めるDEI革命―わたしとDEI(15)古舘 真二―

パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第15回目は、パーソルテンプスタッフ株式会社の古舘 真二です。

パーソルテンプスタッフにおけるDEIの活動スローガンは「多様性を、可能性に」。2025年4月、同社の人事を管掌する執行役員に就任した古舘は、自らのキャリアの中で何度も「多様性」の重要性を痛感してきたと言います。自動車ディーラーからキャリアをスタートした古舘は、これまでどのような道のりを歩んできたのでしょうか。そして、今、どのような未来を描いているのでしょうか。

目次

新車ディーラーからテンプスタッフへ

高校卒業後、故郷の青森から上京して専門学校でスポーツビジネスを学んだ古舘は、「心身ともに一番きついと言われる業界に入って自分を鍛えよう」と自動車メーカー系列の新車ディーラーに就職。ときには1日に100軒以上も個人宅に飛び込み営業をして、1年目に全国優秀新人営業マン賞を獲得します。

その会社では3年間、課長のノルマに迫る勢いで車を販売しましたが、それよりも成績が良かったのが保険商材の販売。損害保険トータルプランナーの資格を持つ古舘はディーラーに来たお客さまに保険を紹介して、毎月、社内トップクラスの契約を得ました。

この経験から、「営業力が個人に帰属する無形商材の販売は面白い!」と感じ、2001年5月、23歳のときに転職したのがテンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)です。

「当時の転職雑誌は人材系の広告が本当に多かったんですよ。ディーラーでも派遣スタッフの方とはたらいていて、どういう仕事か分かっていたのも大きいですね。テンプスタッフを選んだのは、業界2位の会社に入って1位を目指したいと思ったから。もう一つ、前職は年功序列が厳しかったので、若いメンバーが会社を盛り上げているところにも魅力を感じました」

1年目は、前任者から引き継いだクライアントとスタッフの方からの苦情対応に追われ、転職を後悔したこともあったそう。
「当時は急拡大の影響で、お客さまやスタッフの方々のフォローを手厚くできなかったのだと思います。それでも、クレームをいただいているということは、何かしらの期待をしていただいているということですからね」
一社一社、一人ひとりとじっくり話し合い、課題を可視化することでクレームを収めると信頼関係が深まり、2年目以降は毎月ノルマを達成。4年目の終わりにマネジャーに昇格し、八王子オフィスの立ち上げを任されました。

逆境からのV字回復

1年で八王子オフィスを軌道に乗せ、2006年に異動したのが新宿オフィス。規模が大きく、年上の部下も一気に増える中、古舘は逆風に喘ぎながらも奮闘します。

「最初の数カ月は、なんだあの若いマネジャーは、という雰囲気だったので、ひざを突き合わせて対話を重ねました。でも、まったくうまくいかない。そこで、個別のアプローチに加えて、全体の方針や進むべき道をメンバー全体に向けて伝えるようにしました。そうしたらだんだん理解者が増えてきて、下期にはオフィスの業績がV字回復していきました」

新宿には年上の経験豊富な営業担当も、新人も、有期雇用のメンバーもいました。そのチームを一つにまとめ上げ、着任前の売り上げよりも月商1億円を積み増すことに成功しました。新宿で勤めた3年間、全国トップの成績を収めます。

社長特別賞を受賞し、中国へ当時のメンバーと行った時の一枚(古舘は右から3人目)

メンバーが各々の個性を発揮したときの爆発力を肌で感じたのは、新宿時代だけではありません。2013年、神奈川営業部の部長になったときも、2020年に関東営業本部の本部長に就いたときも同じように実感したと振り返ります。

神奈川では、6年間、業績の達成に苦戦していた営業部の立て直しを担い、2年目にはほぼ同じメンバーにもかかわらず、全社でトップの利益率を叩き出しました。

関東営業本部時代には、青森の母親が作っていた伝統工芸品で、廃棄されるとうもろこしの皮を利用する「きみがらスリッパ」の販売をプライベートでサポートしたことから、地方のポテンシャルに気がつきます。

「このスリッパは廃材を利用しエコで通気性もいいし、編み込んでつくっているので耐久性もある。この価値を買ってくれる企業が絶対いるから、ぼくから役場の人に話そうかと母に言ったんです。そうしたら、母も所属する生産組合の方々が自分たちで行くといって役場の応援を取り付けて、大手セレクトショップと提携しました。これが人気商品になって青森まで訪ねてくる人が増えて、体験教室も始まり、持続可能なコミュニティが生まれ、副業の雇用モデルなど地域が活性化していく姿を目の当たりにしました」

古舘は2023年、社内に「地域共創企画室」を立ち上げます。地方の企業とテンプスタッフのクライアント2万社を橋渡しして地域活性化につなげ、そこから生まれる人材のニーズに応える取り組みです。これは、母親世代が自発的に動いた結果、地域の潜在的な魅力や価値に光の当て方が変わるだけで、地域が元気になっていく様子を目の当たりにしたことから生まれたのです。

人事に異動して気づいたこと

営業が好きで得意なのは、自他ともに認めるところ。経営陣はその能力を別の角度から活かそうと考えたのでしょう。古舘は新宿オフィスで3年間はたらいた後、営業と人事を行き来するようになります。

人事企画室の室長を務めたのは、2009年4月から4年間。リーマンショックの混乱の中で与えられた役割は、当時の社長、篠原 欣子の方針「社員の雇用を守る」を死守することでした。

テンプスタッフ創業者である篠原との一枚。「篠原さんが、常に自分を律して、常に謙虚が大事よと言われていたことを今でも鮮明に覚えています」

「リーマンショックの時は業績が好調な部門と、悪化した部門がはっきりと分かれたので、好調部門へ人員を重点配分し、不振部門の人員を適正化するため、社内異動を機動的に進めました。当時の社員、約2,400人分のキャリアビジョンをエクセルにダウンロードして、異動を希望している社員全員分の希望理由を口に出して言えるようになるくらい読み込みました。その異動希望情報をベースに3年間でほぼ社員が一巡するぐらいの人事異動を実現させ、結果的に雇用調整する社員を一人も出すことなく、リーマンショックを乗り切ることができました。それでお役御免ということで、神奈川営業部に異動になりました」

社員それぞれが思い描くキャリアビジョンに触れる。古舘にとってそれはまさに、多彩な人の集まりで企業が成り立っていると実感する体験でもあったのでしょう。それだけに、「倫理観、公平性、客観性、公正性のプライオリティが高まった4年間でした」。

神奈川営業部で結果を出したあとの2015年には、人事部長に任命されました。ミッションは、新しい人事制度をつくること。その際、特に意識したのは戦略人事です。それは、経営陣からの上意下達で「言われたことをやる」のではなく、経営陣が目指すゴールを共有し、そのために人事としてできることを企画、提案、実行する伴走者になることを指します。

人事部長の5年間では、人事制度の設計から携わりながら、コアタイムなしのスーパーフレックスタイム制やリモートワークを検討するなど、現在の勤務体系につながる「はたらき方改革」にも着手。「経営陣と闘ってばかりで大変でした」と苦笑します。

社員の潜在能力を活かす取り組み

営業本部でおよそ5年間の勤務を経て、2025年4月、人事本部の執行役員に就きました。今回は、経営と人事が伴走する変革の強化と推進が目的です。

「2025年の上期に、私たちが目指すべき2030年までの人事ビジョンを定めました。一言でいうと、人の可能性を追求することを目指すというビジョンです。今後の取り組みはすべて、経営が目指す未来を実現するために連動していきます。2026年に向けて、採用、教育、カルチャーなどすべての領域にかかわるような大きなカルチャーアップデートプロジェクトを準備しているところです」

DEIの推進も大きな柱の一つ。中でも、ジェンダーギャップに関しては、現在パーソルテンプスタッフの女性管理職比率は39.4%である一方、「Staffing SBU」(※)を見渡すと推進状況にばらつきがあると感じています。古舘はまず、Staffing SBUの各社長を訪ね、トップコミットメントの重要性を改めて共有するとともに、パーソルテンプスタッフの上級管理職の評価の中に女性管理職比率を組み込みました。
「パーソルテンプスタッフでは、これまで女性社員を中心とした社員交流の場『LINKプロジェクト』や、産育休中のママ・パパ社員と会社をつなぐ有志コミュニティ『mamaツナグ』などボトムアップ型の風土づくりが積極的に行われていました。これまでのノウハウを活かしつつ、Staffing SBU全体でのさらなるジェンダーギャップの解消を目指し、経営側のコミットメントを一層強化しています」

また、人事ビジョンを達成する助けとなるのが、古舘の就任直後に新設された「人の可能性研究室」。この部署では、ピープルアナリティクスを活用し、「真の意味でのタレントマネジメント」を目指します。

「これまでの異動やプロジェクトへのアサイン、昇進、評価には、どういう仕事でどんな成果を出してきたかという情報を主に用いるしかありませんでした。でも、それだけだとその人が持つ潜在的な能力が分からないし、そのせいで成長機会を逸する社員も少なくないだろうと思ったんですよね。人事としてもっと人物を深く分析したデータを持ち、それを活用することで社員の能力発揮や成長をアシストしていきます」

インタビューの終わりに、「社員の個性や強みを分析して掛け合わせることで、企業としての成長を加速するということですね」と尋ねると、古舘は力強く頷きました。

「これからのHRのキーワードのひとつは『発掘』です。各部署の管理職が持つ定性の情報と、人事が持つ客観的な分析データの両方をうまく使いながら、採用、教育、管理職登用などを進めれば、まだまだ成長できると考えています。そのために、私自身も社員の可能性を信じ、向き合い続けていきます」

人事本部のキックオフでの一枚(古舘は最前列右から6番目)。「私たち人事の使命はあらゆる変化にも『泰然』と動じる事が無く、士気高揚な組織を創ることです。一人ひとりの力は決して大きくなくとも、人の可能性は無限であり、その力の集合体は社会を動かし変える力を秘めています」

(※)SBUは、Strategic Business Unitの略称。「経営体制・グループ会社一覧」はこちら

<プロフィール>
古舘 真二(ふるだて しんじ)
パーソルテンプスタッフ株式会社 執行役員
1998年大手自動車ディーラーに入社。2001年パーソルテンプスタッフに入社後、立川オフィスに配属。2005年八王子オフィスの責任者、2006年より新宿CRM1課の責任者を経て、2009年より人事部 人事企画室 室長に。2013年から神奈川営業部 部長。その後、2016年より再び人事部に異動し部長を務める。2020年8月関東営業本部長に就任。第二営業本部長を経て、2024年4月より現職。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

このページをシェアする
目次
閉じる