現状を捉え、取り組み、振り返るのが重要~個人と組織のWell-being向上の鍵とは?「ふくいウェルビーイング経営セミナー」レポート

パーソルグループは、福井県、福井経済同友会、一般社団法人福井県経営品質協議会と共催で「ふくいウェルビーイング経営セミナー~組織と個人双方のウェルビーイングをいかに高めるか~」を2025年11月25日に開催しました。
福井県は、2023年に公表した「ふくいNEW経済ビジョン」において、日本一の「幸せ実感社会」を目指し産業政策を推進するとともに、2025年6月に設置した都道府県初の幸福実感向上を目指す官民共創組織「ふくウェル」にて、企業・団体などと連携した活動を進めるなど、県民の皆さんの幸福実感・Well-beingの向上に向け取り組んでいます。
本イベントは、“はたらくWell-being”を推進するパーソルグループと福井県内経済団体との連携により、組織におけるWell-beingを推進する事例の共有などを通じて、組織と個人双方のWell-beingを高める経営について参加者と一緒に考えることを目的に開催しました。
本記事ではイベント後半に行われたパネルディスカッションの模様をお伝えします。

プロフィール
(パネリスト)

飛田 章宏氏(福井県知事公室 幸福実感ディレクター兼ウェルビーイング政策推進チームリーダー)
井上 繁氏(福井経済同友会 ウェルビーイング経営委員会 副委員長)
笠原 善郎氏(福井県済生会病院 院長)
井上 亮太郎(パーソル総合研究所 上席主任研究員)
(モデレータ)
成瀬 岳人(パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 シニア・コンサルタント)

目次

「言葉」から「実装」へ 福井県のWell-being経営

成瀬:本日は、福井県内のWell-being経営の取り組みとして、2つの事例をご紹介いただきました。1つは福井経済同友会のWell-being経営委員会として、経営者・女性・若者の視点でWell-beingを推進してきた取り組みです。特に今年は、はたらく女性向けのワークショップを実施し、アンケート結果を踏まえて経営者側の対話にもつなげていくというお話でした。
もう1つは、福井県済生会病院(以下:済生会病院)の取り組みです。コロナ禍を経て、医療現場を取り巻く環境が厳しくなる中、職員の楽しさやつながりが薄れていく感覚を課題として捉え、従来の「組織側の施策」だけでなく、個人のWell-being実感の向上にも努めているというお話でした。福井県で幸福実感ディレクターを務める飛田さんから感想を伺いたいと思います。

飛田率直に感じたのは、福井県の中でWell-being推進が、ちゃんと「言葉」から「実装」に移ってきているということです。Well-beingという言葉がスローガンとして出てくるだけではなくて、現場の職員や社員一人ひとりの中に、少しずつ浸透してきている実感があります。今日のお話は、まさにその具体例だったと思います。
一方で、Well-beingは「これが正解」というものがない中で進めるテーマのため、試行錯誤が前提になりますが、感覚だけではなく、戦略的にどうマネジメントするか、手順としてどう進めるかが大事だと思います。福井県は幸福度ランキングで1位だからこそ、それで終わりではなく、むしろ、ここから先はもう一段高めていく段階に入ってきていると感じています。

飛田 章宏氏

成瀬:井上 亮太郎さんにも伺います。Well-being経営の取り組み事例を聞いて、特に印象に残った点や、気になった点はありましたか。

井上(亮):まず感じたのは、福井県の経営者の皆さんがWell-beingを肯定的に捉えて、トップが本気で進めているということです。今日の話は「トップが腹を括っている」ことが伝わってきました。
一方、全国平均で見ると医療従事者は、私生活のWell-beingが高い一方で、職場のWell-beingが低い傾向があるというデータがあります。済生会病院のお話を聞きながら、その構図にどう向き合っているのかが気になりました。「はたらく」だけではなく「ライフ」も含めて考える、という話が出てきたのは、まさに今の時代の問いだと思います。

笠原氏:医療は、そもそも命に関わる判断をしなければならないストレスのかかる職場です。だから、“はたらくWell-being”を高めることは正直、簡単ではありません。ただ、コロナ禍を経て、職員の「つながり」や「楽しさ」が薄れてしまった感覚があって、そこが職員満足度の変化にも出てきた。だからこそ、従来の“組織の施策”だけでは足りない、個人の実感や、感じ方・捉え方まで含めて考えないといけないと感じています。

成瀬:福井経済同友会として女性向けワークショップを進めてこられた井上 繁さんにも伺います。今回、複数社の女性社員が集まりましたが、参加された方々はどんな志や背景で来られたのでしょうか?

井上(繁)福井県は女性の社会参画が非常に進んでいて、企業の中でも女性の存在は重要です。だからこそ、Well-beingを企業で広げていく上で、女性自身がWell-beingを理解して、学びを行動につなげられるようになることが大切だと思いました。
参加者は、会社で実際に活躍されている方、これからの活躍を期待する方、学びを実践できそうな方、そして社内でキーパーソンになり得る方を中心にお声がけしました。個人のWell-being向上にとどまらず、会社の中で周囲にも広げていける人、という想定です。

成瀬:実際に済生会病院からもワークショップへの参加があったと思います。経営者である笠原さんから見て、参加後の変化は感じましたか。

笠原氏:はい。病院は閉鎖的になりがちで、外部との交流が少ないんですよね。だから、外に出て他社の女性と本音で話せる場自体が貴重です。参加した2名は「こういう機会は今までなかった」と言っていました。病院の中でも、どうしても機会が偏るところがあったので、本人たちが自分の言葉で学びを語って、現場で動き始めたのは大きいです。外部で得た刺激が、別の意味で院内のエンゲージメントにもつながっていると感じています。

笠原 善郎氏

現状を捉えて、取り組んで、振り返って、次につなげる

成瀬:組織の中だけで完結せず、会社や組織を超えたコミュニティが奏功しているという話も出てきました。一方で、Well-beingは「気持ちの話」と見られやすいからこそ、組織で取り組む仕組みとして回す、マネジメントするという観点も重要になります。仕組み化やマネジメントの観点ではどう捉えましたか。

井上(亮):使っている言葉や施策は違っても、共通していたのは「現状を捉えて、取り組んで、振り返って、次につなげる」という体制がつくられていることでした。つまり、やっていること自体が、自然と“回る形”になっていると思います。大事なのは「何をやるか」という中身以上に、「どう回していくか」という枠組みがあるかどうかです。ですから、最初から何か特定の型を意識して始めなくても、きちんと取り組めている組織は、結果的に似た形になっていく。
その上で、一度整理してみると「ここはできている」「ここはもう一段」というのが見えてきます。現時点で十分でなくてもいいし、取り組めていないことが分かればそれも成果ですから、次年度に生かせればいい。今日のお二方の事例は、すでに“回す土台”ができているように感じました。

井上 亮太郎

成瀬:井上(繁)さんからは、ワークショップを「やって終わり」にしない、という話がありました。次の展開を考える上で今の話をどう捉えましたか。

井上(繁)会社経営では、どのテーマでも「どう回すか」は重要です。ご紹介した取り組みも、実施して終わりではなく、これをきっかけに次のアクションにつなげることは当初から考えていました。参加者は前向きで、本音に近い対話ができた分、会社に戻ると同じ濃度では話しづらい、という課題も見えました。だからこそ、次回の企業見学の場では、もう一度集まり直して、そこで「目指す状態」を言葉にしたり、参加企業の経営者にも伝わる形にまとめたり、提言につなげる、という段取りを組みたいと思っています。

井上 繁氏

成瀬:笠原さんに伺います。済生会病院では、これまで関係性の質を高める取り組みを積み上げてきた一方で、個人へのはたらきかけが薄かった、というお話がありました。測定や数値化は、どこまで現場ではたらく個々人へのはたらきかけとして生かせそうですか。

笠原氏:今までは職員満足度調査で、上司との関係性、認められているか、忙しさ、給与など、職務中心で見てきました。でもWell-beingの診断は、職務だけではなく、生活や心身も含めた範囲が見える。私が現場に伝えたのは「病院にいるのは24時間のうち3分の1だ。残り3分の2の幸せも考えないと」ということです。そこが見えないまま、はたらく場だけでなんとかしようとしても限界があります。そして、そこになんらかの評価軸がないと「なんとなく良くなった」で終わってしまいます。PDCAを回すなら、評価可能な項目は必要です。

井上(亮):補足すると指標にもいろいろありますよね。既存の尺度、たとえば「幸福度診断Well-Being Circle」のようなものは、同じツールを使う組織と比べて、自分たちはどうかが見える。一方で独自指標をつくってもいい。会社として定義して尺度をつくって測る例もあります。たとえば参加率、離職率、制度利用率、イベント出席など、定量的に取れるデータもあると思います。定量に限らず定性でもいい。
要は、自分たちが描くWell-beingの状態を客観指標と主観指標の両面で測れるようにしていくことが大事で、既存尺度で測りにくいなら、無理に合わせるより測れる指標をつくるという考え方もあると思います。

主観と客観を合わせる形でWell-beingを推進する

飛田客観指標は分かりやすいんですよね。有効求人倍率など統計としてはきれいに出る。ただ、それだけだと実感が見えない。「求人が多く選べる」はずなのに、本人が「自分のしたい仕事を選べている実感」があるかどうかは、主観を取らないと分からない。客観と主観の両方を追う、というのはWell-beingを推進する上で大事だと思っています。実感を把握するためアンケートも取りますが、アンケートだけだと深いところが見えにくいので、現場に身を置いて生の声を聞く。行政は政策づくりで、多様な人たちの合意形成をずっとやってきたので、Well-being経営にも応用できる部分はあると思っています。

成瀬:結局「誰の声を取るか」という設計にもつながりますよね。声を上げる人だけ拾うと偏る。だから、コミュニティの構成を俯瞰して、どの層の声を取りに行くかを設計する必要がある。今日の2つの事例はその点に踏み込み始めている印象があります。女性の場づくりもそうですし、病院の個人実感に踏み込む話もそうです。

成瀬 岳人

笠原氏:医療は客観だけでは語りきれないです。現場が元気づけられるのは、患者さんからの感謝の言葉だったり、フィードバックだったりする。だから、主観的なものをどう共有するか、どう受け止めてもらうか、そこも含めて設計しないといけない。医療の文脈に合う指標や仕組みを、現場と一緒につくる必要があると思っています。

井上(繁)今回の女性のワークショップでも、結局一番参加者の反響が大きかったのは「他社の女性と本音で話せた」ことでした。会社に戻ると同じ濃度ではやりづらい。だからこそ、会社側が支える仕組みが必要だと思っています。小さく始めて、継続して、次につなげる。コミュニティのつながりを活かしながら、社内にも還元する。その流れを、これからつくっていきたいです。

成瀬:今日のパネリスト同士の会話を通して見えたのは、Well-beingが「気持ちの話」では終わらず、施策と対話と測定を組み合わせて“仕組みとしてマネジメントするテーマ”になってきているということだと思います。まだ始まったばかりで、これが答えです、というものはない。でも、今日のように事例を持ち寄って、試行錯誤の中で手順や指標を磨きながら、次の一手をつくっていく。その積み重ねが、福井のWell-beingをさらに強くしていくのではないかと感じました。本日はありがとうございました。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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