
パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第10回目は、パーソルエクセルHRパートナーズ株式会社の武井 朝子です。
「え!?私にはできないんじゃないですかね……?難しいと思います」
2023年の年始、支店長代行への抜擢を上司から打診されたとき、「なぜ?」という驚きと疑問でいっぱいになり、武井は思わずこう口にしました。
2018年12月、25歳のときにキャリア採用でパーソルに入った武井は、入社からまだちょうど丸4年、29歳で管理職に就くことをまったく想像していなかったと言います。
現在、パナソニック・BPO本部 パナソニック首都圏第二支店の支店長を務める武井は、どういう思いで管理職の道を歩んできたのでしょうか?
公立高校の非常勤講師からの転職
深谷ネギと渋沢 栄一ゆかりの地として知られる埼玉県深谷市で生まれ育った、武井。小学校からバスケットボールを始め、高校まで続けました。分かりやすいリーダーシップを発揮するというより、調整役だったと振り返ります。
「いつもだいたい3番手というか、部長、副部長の次ぐらいのポジションでしたね。チーム内の意見が割れたときに、部長と副部長、双方に話を聞いて丸く収めるような」
同じく小学校から習っていたのが、書道。「一人で黙々と取り組むのも好き」だという武井は、大学は中国文学科の書道専攻に進みました。


「教員になってみたら?」という母からのすすめもあり、大学では書道と国語の教員免許を取得。大学卒業後、深く考えることなく公立高校の非常勤講師に就きます。結果的に、半年間の契約満了後、教員の仕事から離れることになりました。
「赴任した学校では、私が思い描いていた教師像とかなりギャップがあって。教師として強い想いがある方じゃないと、この仕事を続けていくのは難しいと思いました」
転職先は、パーソナル英語学習サービスを手掛けるベンチャー企業。半年間とはいえ教員をしていた経験を評価されたことと、ベンチャーなら幅広い経験を積んで自分の市場価値を高められるだろうと考えての選択でした。
その会社では、新しくスクール運営を立ち上げるメンバーとして、講師や受付ではたらく契約社員の契約管理、契約社員の教育プログラム作成、スクール運営のルールづくりなどを担当。教員とはまったく異なる仕事でしたが、それが思いのほか「楽しかった」と言います。そこで2年半はたらいた武井は、次のステップとして人材業界への転職を目指しました。

「大学で教育心理学を学んだとき、学力を伸ばすことよりも人の悩みに寄り添うことに興味があったんですよね。それで、ベンチャーではたらきながら、産業カウンセラーの資格も取得しました。そのうちに『はたらく』を支援する仕事がしたいと思うようになったんです」
派遣スタッフとの関係構築に役立った「傾聴」
いくつかの企業を検討した上で、2018年12月、パーソル パナソニックHRパートナーズ(現パーソルエクセルHRパートナーズ)に入社。何が決め手になったのでしょうか?
「人材派遣や人材紹介に特化した会社が多い中で、面接の際に『はたらく』を支援するだけじゃなく、パーソル全体のソリューションを使った業務改善の支援ができると聞いたのが大きかったですね。ベンチャー企業で新しい組織の立ち上げなどさまざまな経験をして、そういう仕事にもやりがいを感じていたので」
武井が入社したころの同社は、大きな変遷を経た直後でした。2015年にパーソルテンプスタッフがパナソニック100%出資の子会社の人材派遣会社「パナソニックエクセルスタッフ株式会社」の株式を取得したことでパーソルグループ入りをし、その3年後2018年4月に関連会社の「パナソニック エクセルテクノロジー株式会社」と統合、「パーソル パナソニックHRパートナーズ」として社名を新たにスタートしていました。
同社は元々パナソニックグループの一員であったこともあり、武井が所属する部門のクライアントはほぼ100%パナソニックグループで、新規開拓ではなく、既存の顧客を深耕開拓するのがメインの業務。2021年、「パーソルエクセルHRパートナーズ」に社名変更してからも、そこに変わりはありません。
営業に配属された武井は、前任者から業務を引き継ぐ際、いきなり躓きました。
「前任者の退職予定もあり、1カ月で引き継ぎを終えなくてはいけませんでした。その慌ただしさの中、紹介予定派遣をしていたスタッフの方が派遣先に出社しなくなってしまい、お客さまからすごく怒られたんです。どうしたらいいのか分からなくて、アポも取らずに謝りにいきました。スタッフと派遣先の間に立つことの難しさを感じましたね」

二十代半ばの武井にとって大半が年上になる派遣スタッフとの関係構築は、簡単ではありませんでした。たとえば、勤怠不良のあるスタッフさんに対してどう注意したらいいのか、どう改善を促したらいいのかといったことからも、一から学ぶ必要がありました。役に立ったのは、産業カウンセラーの資格取得講座で学んだ「傾聴」。派遣スタッフの悩みや不満に耳を傾け、本音を引き出すことで、少しずつ良い関係を築けるようになっていきました。
同社の営業は、顧客の人材以外の課題を聞き出し、パーソルグループの知見を活用してBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などのソリューションを提案する役割も担います。人材派遣の仕事に慣れ、顧客から信頼されるようになると、武井は業務改善の相談も受けるようになりました。それは入社時から携わりたかった仕事で、大きな刺激になったと言います。
「グループ会社と連携して、お客さまの顧客管理ツールを開発する支援や、基幹システムを変更する際は要件定義から支援に入りました。ここまでできるんだって、手応えを感じましたね」
支店長代行になることを受け入れた理由
約3年半、営業を務めたあとの2022年春、「ビジネスデザイン部」へ異動の辞令が出ました。立ち上がったばかりのこの部署は、派遣営業が顧客からつかんできた「お困りごと」を受け取り、どう課題解決につなげるか、顧客にソリューションサービスを提案するのがメインの仕事です。
武井はサプライチェーンマネジメント(SCM)に関する業務改善を担当することになり、専門知識を学ぶところからスタートしました。数カ月もすると顧客の課題が理解できるようになり、これから本格的に営業をかけようと思っていた矢先、本部長との1on1ミーティングが設定されます。
「何かな?」と思いながら臨んだそのミーティングで、支店長代行に抜擢したいという話が出ました。冒頭に記したように、武井にとっては青天の霹靂だったため、その場で断ります。当時の気持ちについて、「自分でいくつかの受注を取り始めていた時期だったので、せめてもう1年、ソリューションサービスの営業をやらせてほしいと思いました」と振り返ります。
しかし、本部長との二度目のミーティングの際、「あなたなりの役割を発揮してもらいたい」と言われ、支店長代行のポジションにチャレンジすることを決意しました。
「入社以来、仕事を通して学ばせてもらったことがたくさんあったので、自分が体感した成長の喜びをほかのメンバーにもシェアできるんじゃないかと思ったんです。リーダーシップを発揮するというより、先輩や上司とはまた違ったアプローチで良い影響を与えることができるかもしれない、そこに少しでも貢献できるなら頑張ろうかなと」

2023年春、ビジネスデザイン部に異動する前に3年半はたらいた同じ部署に戻り、支店長代行として着任。入社時から指導をしてくれていた先輩たちを含め、ほとんどの部下が年上でプレッシャーを感じたと言います。
「人材派遣の営業は3年半、ソリューション営業は1年しか担当していないので、管理職として足りていないことがすごく多いだろうなと感じていました。先輩たちに認めてもらうためにも、価値提供できるよう頑張らなきゃ、チームを引っ張らなきゃと力んでいましたね」
マネジメントの仕事は、「全部が難しい」と感じたそうです。派遣営業時代、派遣スタッフとのコミュニケーションに用いた産業カウンセリング的なスキルは、あまり役に立ちませんでした。
どう声をかけ、想いを伝えたら、メンバーは動いてくれるのか?その上で業績につなげることができるのか?かつての上司や管理職に就いている先輩に何度も相談しているうちに1年が過ぎ、2024年春、正式に管理職に昇格し、支店長代行から支店長となりました。
「自信があると声を大にして言える状況ではありませんでしたが、組織の課題や打ち手も見え始めてきたところだったので、前向きに挑戦しようと思い昇格試験に臨みました。上司からの推薦にも背中を押してもらえました」
支店長として目指すスタイルとは?
それから2年経った現在、パーソルグループが用意する新任管理職研修、DEI研修、未来義塾研修などを受講しながら現場で試行錯誤することで、マネジメントの方向性が定まってきました。
「参考にしているのは、ビジネスデザイン部にいたときの上司です。トップダウンというより、チーム内ではフラットにコミュニケーションを取るスタイルですね。お客さまに対しては、大型案件のプレゼンなどをする際、自ら手を動かして、汗をかいて、事前準備をしている姿や日々現状に満足せず学び続ける姿を見て、かっこいいなと。私もそういうマネジャーになりたいと思っています」
武井は現在、自身を含めて9名のチームを率います。男性が1名、女性が8名。そのうち20代が2名、30代が4名、40代以上が3名。理想とするのは、フラットな組織です。目指すのは、それぞれが互いの強みを発揮し役割を果たすことで成果を最大化し、良い影響を与え合えるチーム。
「管理職というのは、あくまで役割分担の一つに過ぎないと捉えているんです。そこに上下関係があるのではなく、管理職としての役割、チームメンバーとしての役割、それらをそれぞれがまっとうするフラットな関係でいたいと考えています。」
もちろん、まだ手探りの部分もあります。特に難しいのは、自分がどこまで手と口を出すのかというバランス。「思い切って任せたほうがいい」と分かっていても、躊躇してしまう自分がいます。
マネジメントに答えはありません。だから今も悩みは尽きないのですが、支店長としてやりがいを感じる瞬間も増えてきたそうです。
「メンバーそれぞれに組織内でリーダーシップを発揮してほしいので、新卒でも若手でも何かしらの役割をお願いしています。メンバーそれぞれがリーダーシップを発揮して、組織としてうまく循環しているなと実感する瞬間が、一番うれしいですね」
インタビューの最後に、今後、どういうキャリアを思い描いていますか?と尋ねると、「まずは今の部署で成果を出したいです」と微笑みました。
「私が入社したころから、幅広いソリューションを提供する営業に力を入れるというのが会社の方針です。私のチームもさらに一段成長した営業力を身につけて、価値提供の幅を広げていきたいです。入社してからわりと短期間で異動してきたので、腰を据えて取り組んで、しっかりやりきるということを実感したいですね」

<プロフィール>
武井 朝子(たけい あさこ)
パーソルエクセルHRパートナーズ株式会社 パナソニック・BPO本部 パナソニック首都圏第二支店 支店長
2018年12月にキャリア入社でパーソル パナソニックHRパートナーズ(現パーソルエクセルHRパートナーズ)に入社。パナソニック向けの営業部門に配属され、人材派遣営業に従事。2022年にビジネスデザイン部に異動、2023年にパナソニック首都圏第二支店 支店長業務に従事、現在に至る。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。