武蔵野大学しあわせ研究所とパーソルホールディングスがトークイベント「従業員ウェルビーイングの潮流と実践:スウェーデンと日本から学ぶ」を共催

パーソルホールディングス株式会社は、「従業員ウェルビーイングの潮流と実践:スウェーデンと日本から学ぶ」と称したトークイベントを、2月10日に武蔵野大学しあわせ研究所と共催しました。
「従業員ウェルビーイングの潮流と実践:スウェーデンと日本から学ぶ」は、国や地域による“はたらくWell-being”の違いや共通点、日本と北欧の労働観の違い、従業員の“はたらくWell-being”実感向上のために企業・社会ができることなどについて、有識者がパネルディスカッションなどを行うことで、自身にとっての”はたらくWell-being“を考えてもらうことを目的としたイベントです。
本イベントではストックホルム商科大学の教授で、経済や幸福、福祉を中心に研究しているミカエル・ダレーン氏や武蔵野大学 ウェルビーイング学部 学部長の前野 隆司氏、公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事の石川 善樹氏と、パーソルホールディングス CHROの大場 竜佳によるパネルディスカッションなどが行われました。今回は、パネルディスカッションの様子をお知らせいたします。

目次

Well-beingの露出量は5年で177倍に増加

石川氏:まず、日本におけるWell-beingの現状についてお話ししたいと思います。2019年の新聞記事に「Well-being」という言葉が掲載された回数は年間でわずか67回だったのに対し、2024年には11,188回と、約177倍にまで増加しました。前野さんはこの数値を聞いてどう思いますか?

前野氏:泣けてきますね(笑)。以前は私が「幸せ」に関する研究をしていると言うと、「怪しい研究をしているんじゃないですか?」なんて言われていたものです。でも、この5年間で状況は大きく変わりました。政府や自治体、企業においても、はたらき方改革、人的資本経営、健康経営といった取り組みが進み、「はたらく幸せ」「生きる幸せ」について語られる機会が格段に増えてきました。

石川氏:パーソルホールディングスではどういったタイミングで“はたらくWell-being”を推進していくことになったのですか?

大場:もともと私たちは「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンを掲げていました。それをさらに進化させる形で、2023年に公表した「パーソルグループ中期経営計画2026」の中で、グループのありたい姿として、“はたらくWell-being”という概念を取り入れました。自身のキャリアを通じたWell-beingの向上を支援する企業を目指すことになったのです。

パーソルホールディングス 大場 竜佳

自身の幸福について真剣に向き合ってWell-beingを向上させる

石川氏:国連が実施している世界幸福度ランキングでは、北欧諸国が常に上位を占めています。一方、日本は現在51位です。異なる文化や社会制度を持つ中で、なぜ北欧諸国はこれほど高い幸福度を維持できているのでしょうか?特に近年、フィンランドは1位を維持し続けています。この要因はなんなのでしょうか?

ダレーン氏:フィンランドには、「物事はいつでも悪くなりえる」という言葉があります。一見、楽観的とは言えない表現ですが、これはフィンランドの価値観をよく表しています。人生は決して完璧ではなく、すべてが思い通りにいくわけではありません。「もっと悪くなる可能性もあった」「完璧ではなくても素晴らしいものはある」「さらに良くし、楽しむ余地がある」という視点を持つことが、彼らの心理に深く根付いているのです。過度に理想を追い求めたりするのではなく、すでにある「十分に良いもの」に目を向け、それを最大限に活かすこと。この考え方が、フィンランド人の暮らしや価値観の根幹を成しています。
もう一つ彼らが口をそろえて大切にするものがサウナです。国の人口は約500万人に対し、サウナの数は300万基。つまり、1.5人に1台のサウナがある計算になります。サウナは、身体を温めるだけでなく、心を整え、フィンランド流の幸福を支える重要な文化なのです。

ストックホルム商科大学 教授 ミカエル・ダレーン氏

石川氏:つまり、フィンランドの幸福度の秘訣は、「期待値の低さ」と「サウナの存在」にあるということですね。実は2006年にこの調査が始まった当初、日本のランキングは決して低くはありませんでした。しかし、リーマンショックを経て順位が大きく下落し、その悪影響から回復できないまま約20年が過ぎてしまっています。前野先生は、日本のWell-beingを回復させるためには、何が必要だとお考えでしょうか?

前野氏:日本の順位が下がりつつある現状に対して、なんらかの対策を講じる必要があると考えています。幸い、世界にはすでに多くのノウハウが蓄積されており、例えば「お風呂に入る」「人と話す」「自己肯定感を高める」「楽観的になる」など、さまざまな方法が提唱されています。
日本は、健康への意識を高めた結果、平均寿命で世界トップの地位を築きました。それと同じように、幸福についても真剣に向き合い、幸福度を向上させることが重要だと考えています。その実現のために、私は武蔵野大学にウェルビーイング学部を創設したんです。

武蔵野大学 ウェルビーイング学部 学部長の前野 隆司氏

スウェーデンの“はたらくWell-being”が高い秘訣は仕事に関する特別な概念「Trivsel(トリプセル)」にあり

石川氏:パーソルホールディングスでは「はたらいて、笑おう。」グローバル調査を実施されていますが、この調査について詳しくご説明いただけますでしょうか?

大場:私たちが一貫して重視しているのは、自分の仕事が社会にとって意義あるものであると感じられ、なおかつ自らの意思でその仕事が選択できていることです。これを私たちは「キャリアオーナーシップ」と呼んでいて、その結果として“はたらくWell-being”が向上すると考えています。この考えに基づき、「自分の仕事に喜びや楽しみを感じられているか?」「自分の仕事は世の人々の役に立っていると思えるか?」「自分の仕事は多くの選択肢の中から選べる状態かなのか?」という3つの観点で質問を設定しました。これらの質問を通じて、“はたらくWell-being”を測ることができるのではないかと考え、調査を実施しています。

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査のサイトはこちら

石川氏:パーソルホールディングスは、“はたらくWell-being”を推進することを経営の意思として決定している企業です。この調査の特徴は、パーソルグループが事業展開していない地域でも実施されていることです。これは本気度の表れだと考えています。結果を見ると、興味深いことに、Q2(周囲への貢献)とQ3(自己決定)については、日本とスウェーデンで大きな差は見られません。しかし、Q1(仕事が楽しいかどうか)では、日本の数値が大幅に低いという結果が出ています。

ダレーン氏:スウェーデンは、歴史的に見ても仕事の満足度や職場の幸福度が最も高い国の一つです。その根本的な理由の一つとして、スウェーデンが「労働者の国」としてのアイデンティティを持っていることが挙げられます。スウェーデンの福祉社会の概念を紐解くと、「すべての人が福祉に貢献することを期待され、それを当然と考える」文化が根付いています。人口が少ない国だからこそ、「すべての人が必要とされ、すべての人がはたらくことを望み、仕事に多くの時間を費やす」という価値観が強く共有されているのです。
このような背景から、スウェーデンには仕事に関する特別な概念「Trivsel(トリプセル)」があります。この言葉は「成長(thriving)」と「楽しむ(enjoying)」という2つの意味が組み合わさったものです。スウェーデンでは「成長」と「楽しむ」を切り離して考えず、どちらも仕事の本質に組み込まれています。「仕事には楽しさが必要だ」という考え方が根底にあるからです。

石川氏:自己決定に関する質問を年代別にみると20代は日本のほうが高い数値なのですが、30代、40代と年を経るにつれて大きな差をつけられています。

公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事の石川 善樹氏

大場:日本の若い世代は、親世代とは対照的で、右肩上がりの同質性の高い経済成長期を経験していません。教育の中でも「自分らしい価値観に基づいて意思決定すること」や、「多様な価値観を生かし合うこと」の重要性を学ぶ機会が多かったのではないかと考えています。また、労働市場も近年は売り手市場となっており、企業側の論理ではなく、個人がより自律的にキャリアを選択できる環境が整ってきたと感じます。こうした背景もあり、若い世代の「自己決定」に関するスコアが高くなっているのではないかと考えています。

石川氏:スウェーデンや北欧諸国と比較すると、日本には「仕事を楽しむ」という意識がまだ十分に根付いていないように感じます。さまざまな企業と取り組みを進められているかと思いますが、日本人にとって「仕事を楽しむ」とは、一体どういうことなのでしょうか?

前野氏:日本、中国、台湾、韓国など、東アジアの国々を「儒教圏」と分類することがあります。現代の日本人はあまり意識していないかもしれませんが、「仕事はつらくても、お客様のためにきちんとやるものだ」という考え方は、かつての価値観として根付いていました。特に日本では「お客さまのために尽くす」という意識は強く残っている一方で、「苦しくてもやるべきだ」という考え方も根強く残っています。儒教の良い面として、「お客さまのために努力すること自体が楽しい」と感じられれば理想的ですが、それがストレスになり、心身に悪影響を及ぼしてしまうのは問題です。日本はこの点について、早急に改善しなければなりませんね。
「従業員ウェルビーイングの潮流と実践:スウェーデンと日本から学ぶ」の詳細はこちら

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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