「乗り気ではなかった」法務部長への昇格。管理職になったから見えた景色とは―わたしとDEI(8)原 美緒―

パーソルグループは、すべてのはたらく人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)を推進しています。
本連載では、生まれた場所や育った環境、年齢、性別、経験、価値観などの違いを可能性と捉え、多様なキャリアを歩む社員を紹介します。
第8回目はパーソルホールディングス株式会社のグループGRC本部 法務部で部長を務める原 美緒です。

2018年1月にパーソルホールディングスに入社した原は2度の産育休を取得し、2022年10月に法務部の戦略法務室長に着任、2024年4月からは法務部の部長と戦略法務室の室長を兼務しています。

法務という専門性の高い部門で部長に昇格したキャリアは華々しく映りますが、当の本人は「室長も部長への昇格も、実はそれほど乗り気ではなかったんです」と話しました。

「管理職である自分の在り方には今でも悩むことがありますし、マネジメントもまだまだ未熟。子育てとの両立も、試行錯誤中です」

しかし一方で、「管理職にならなければ見られない景色がありました」と語ります。

法務部の部長兼戦略法務室の室長として8人の部下を抱える原は、乗り気でなかった自分をどのようにセットアップし、どのような景色に辿り着いたのでしょうか。

目次

法務として「本質的に関わりたい」。その気持ちが芽生えたのは

東京生まれ東京育ち。「幼いころはよく、ぼんやりした子と言われていましたね」。本を読むことが好きで、母親の影響でミステリー小説「三毛猫ホームズシリーズ」を手掛ける赤川次郎さんの作品をよく読んでいました。

3歳から9年間習ったバレエ。母も王妃を演じる役として、一緒の舞台に立ったことがあります

高校生のときに目指したのは、弁護士。社会との接点を大切にする母親を見て、「ライフステージが変化しても自立してはたらける仕事に就きたい」と思い、文系だった原は手に職をつけるため、弁護士を目指すことを選びました。

司法修習後、国内の法律事務所に入所し、弁護士として企業法務に従事。不動産ファイナンスをはじめとするファイナンス案件、M&A案件、訴訟、個人情報・労務・トラブル対応など顧問先企業の法律相談対応に加え、証券会社への出向も経験しました。

企業法務に携わる中で、原の心には「より事業サイドに関わっていきたい」という想いが生まれ始めました。

「法律事務所ではたらいていた時は、出向も経験しましたが、私はあくまでも外部アドバイザーとして関わる立場でした。たとえば、クライアントは、自社の中で対処しきれない案件やその一部分について相談にくることが多く、私は法的な観点からメリット・デメリット含めA案・B案・C案といった提案やアドバイスを一通り伝えます。ですが、その後クライアントの社内でどのような検討が行われ、どの案が、どのような理由で採用されたのかまではお知らせいただけないことが多かったんですね。企業法務は、攻めと守りのバランスをとる基盤として事業をサポート・推進することが役割なので、事業サイドやその判断にもっと本質的に関わっていきたい、そう思うようになりました」

その好奇心から企業の法務部への転職を考え始めます。加えて、結婚というライフステージの変化も転職を後押ししました。

「ファイナンスやM&Aなどの案件は、特に期末などでスケジュールが重なると、どうしてもハードワークになりがち。なので、体力的にもこれまでと同じはたらき方は続けられないと感じていましたね」

一緒にはたらくメンバーが影響し合い、大きく成長した姿を見た

パーソルグループへの入社の決め手となったのは、面接での言葉でした。

「『当社の法務は枠に捉われず、役に立てると思ったなら事業サイドとも手を組めるし、経営層に考えを提言してもいい。やりがいのある面白い職場だよ』と言われたんです。転職の一番の軸でもあった、法務の部分に限らず案件全体の情報に触れ、いろいろな観点から携わっていきたいという想いがここでならかなえられると思いました」

入社後、高い専門性を発揮するエキスパート職として約1年半はたらき、2019年に1度目の産育休を取得。育休が明けてしばらくしたタイミングで組織のマネジメントを担う室長への打診がありました。ですが、まだ子どもも小さく生活環境も安定しない中、マネジメントという新しい仕事や業務量をこなせるか自信がなかったため見送ることに。その後2度目の産育休を迎えます。

2022年に復帰し「改めて室長をお願いできないか」との言葉に、悩みながらも決意します。決断できたのには、2つの理由がありました。

「1つ目は、室長になれば触れられる情報が格段に広がり、新たな視界が広がるのではないかと思ったからです。法務の業務では、自分の担当案件以外の案件を深く知る機会は多くなく、たとえばM&Aを含む機密性の高い情報は、その案件の担当者以外は基本的に触れることができないんですね。ですが室長は、室の業務全体のマネジメントのため、それらをすべて把握する必要があり、自然とさまざまな情報が入ってくることになります。いろいろな観点の情報や知識を重ね合わせて俯瞰すると、視座がぐっと高くなり、より幅広く全体を見渡して業務にあたることができます。エキスパート時代にもそうした経験があり、室長になれば、さらに広い情報に触れ、その視座を高めることで、当社に転職してきたときの希望をより実現できるのではと感じました」

そして2つ目は、メンバーの成長を感じたことでした。

原は、企業内での法務の仕事におけるハイパフォーマーの条件を「センスがあること」だと話します。数多くの案件を短時間でこなすことも大事ではありますが、より求められるのは、ポイントを押さえたクオリティの高いアウトプットを出し、会社や依頼者が望むものをいかに良い形で後押しできるか。そのためには「相手が何を求めており、それに対して法務として会社や依頼者がより良い選択をするためにどう考えるのが良いか」を見定めるセンスが必要だというのです。

「法務の仕事は、白か黒かで決着がつけられないことも多いにあります。特に最近は法令を超えて、サステナビリティや人権、プライバシーなど、企業としての責任も果たさなければならないことも増えてきています。多角的に案件に取り組み、判断の軸を外さないことが法務としてのハイパフォーマンスだと思います」

1度目の産育休に入る半年ほど前、原は一人の女性メンバーのメンターを担当していました。復帰後に同じプロジェクトチームになったとき、原は彼女の成長を感じたと言います。

「それまでは、目の前の作業に集中しすぎてタスクをこなすために視野が狭まっていた彼女が、次第に依頼者の話を聞いて背景を理解しようと努め、何を求めているのか一歩先回りして仕事ができるようになっていたんです。もちろんそれは彼女自身の努力で、私がメンターをしたから変わったと言うつもりはありません。ですが、一緒にはたらくメンバー同士が刺激を与え合うことによって、大きく成長する。そうした人の関わりに携われるのは面白いと感じました」

室長として法務部全体を見渡し、人の成長にも目を向けて1年半後。前部長の退任に併せ、部長の打診が舞い込みました。

私の役割は、「はたらいて、笑おう。」を実感できる環境を整えること

「ある日、上司から『ランチに行こう』と誘われ、部長になって欲しいと打診されたんです。その時もその場で前のめりに受けたわけではなかったのですが、自分の中でしばらくいろいろと考えた結果、1年半の室長経験を踏まえ、私にもできるかもしれないと可能性を感じたことで引き受けることを決めました」

今は法務部の部長と戦略法務室の室長を兼務し、8人のメンバーのマネジメントも担当しています。

管理職に就くことに積極的ではなかった原は、2度の昇格を経て「管理職の役割」をどう感じているのでしょうか?

「大きく2つあると考えています。1つは、一緒にはたらくメンバーが『はたらいて、笑おう。』を実感できる環境を整えること。メンバーが気持ち良くはたらける状況にすることが、私の役目だと捉えています」

そのために原は、メンバーたちが今どういう気持ちなのか、本音で話してもらえる関係性を築くことを意識しています。リモートワークが中心ですが、週に1度は出社日を設けることで顔を合わせる機会をつくり、雑談を通してコミュニケーションをとっているそうです。また2024年10月には、法務部門全体でワーケーションを実施。お互いをより深く知れる場になりました。

2024年10月には、会社の制度を使って法務部でワーケーションを実施(原は右端)

「2つ目は、部署内だけにとどまらず、パーソルグループ全体やサービスを使ってくださるユーザー、ステークホルダーのみなさんにとっても、『はたらいて、笑おう。』を体感いただける環境をつくることを意識して日々の業務や判断を行うこと。法務部は管理部門であり、お客さまと直接の接点を持つことは少ないのですが、当社は世の中の『はたらく』をサポートする会社であり、人でサービスが成り立っているからこそ、そこは忘れてはいけないと肝に銘じていますね」

かつて、原の上司が「自分の子どもが大人になったとき、幅広い選択肢から自分の仕事やはたらき方を選べるような社会につながればと思い、今パーソルで頑張っている」と話しました。その時、原は今の自分のはたらきが、次世代の未来をつくるんだということにハッとさせられたと言います。

日々、法務業務やマネジメントに奔走する原の心の支えになっているのは、同じ志を持つパーソルグループ内の管理職たちです。

「管理職研修に参加し、別部署やグループ会社の管理職の皆さんにお会いした時、こういう社会にしていきたい、こういうふうにはたらきたいって、皆さん本当に高い志を持っていることに驚きました。場所や仕事内容は違っても目指す方向が同じ仲間がいることは、とても心強いですね」

悩むのは、可能性があるから。一歩踏み出せばきっと

原は二人の子どもを育てているため、会社の制度にも助けられていると言います。リモートワークを積極的に活用しながら、管理職としてのはたらく時間の柔軟性を活かして子どもたちの急な体調不良やお迎えに対応しています。併せて仕事をより効率的に進める方法を試行錯誤しています。

「私は自分が知らない情報、欠けている情報があるとどうしても把握しておきたくなる性分なんです。だけどそのままでは業務量が増えていく一方なので、メンバーを育成しつつ、任せるところはまるっと任せる形にするのが理想です。自分の行動を変えていくのは難しいものですが、理想にむかってトライし続けていきたいです」

メンバーを頼れるようになった先で、原はどんな自分の姿を描いているのでしょうか。

「分野の異なるプロフェッショナルな方々と連携し、一人ではたどり着けない成果を出したり、法務の側面から価値を発揮したりしていきたいです。今ちょうど当本部内の組織横断のメンバーで構成されたチームで、パーソルグループのマテリアリティである『人権の尊重』についてのプロジェクトを進めています。そのプロジェクトを主導するにあたっては、人事・サステナビリティ・国内及び海外のグループ会社などさまざまな関係者と連携をとっています。そのように、チームのメンバーや他部署の方々とコラボレーションすることで、より法務の価値を引き出していきたいですね」

パーソルに入社したころにはバラバラだった点が、管理職になったことで情報へのアクセス性と自分の視座が高まり、1本の線となったことに気が付いた原。見える景色が変わったことを実感しています。そんな原に「もし今、管理職になるかどうか悩んでいたときの自分に声をかけるとしたら?」という質問を投げかけると、次のように笑顔で答えてくれました。

「悩む時点で、きっと可能性を考えているってことですよね。パーソルグループは、はたらきやすい環境はもちろん、手厚い制度もたくさんあります。せっかくの機会だと思うので、悩むのであればやってみる、飛び込んでみることで広がる世界がきっとあると思います」

法務部のメンバーとともに(原は左端)

<プロフィール>
原 美緒(はら みお)
パーソルホールディングス株式会社 グループGRC本部 法務部 部長
2018年1月中途入社。司法修習後、大手法律事務所に入所。国内大手証券会社への出向を経て事務所に復帰。ファイナンスからM&Aまで広く携わった後、パーソルホールディングスへ入社。エキスパートとしてグループ全体の戦略法務に関わり、2度の産育休を経て2022年5月に復帰。同年10月に室長に、2024年4月に部長に着任。

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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