はたらくことに前向きな人を、サポートできる仕事をしたい ― PERSOL Group Awards 2024受賞の裏に(1)下稲葉 かすみ ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループで最も栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2024年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第1回目は、パーソルテンプスタッフ株式会社の下稲葉 かすみです。

下稲葉はパーソルグループ各社からBPOサービスおよびコールセンター業務を受託、運用しているパーソルビジネスエキスパート株式会社と、会社を横断したプロジェクトを推進しました。それは11万人の派遣スタッフからの困りごとや相談の問合せが絶えないコールセンターのシステム。「24時間365日つながりやすく、ワンストップで解決策を提示できる窓口へ改修する」という難解なミッションをわずか5ヵ月で完遂。その大きな成果で今回のアワードを受賞しました。

目次

原点は「はたらく人をサポートしたい」という強い想い

「はたらく人をサポートする仕事をしたい」。この想いが下稲葉の原点。「パーソルテンプスタッフに入社するまでに2度転職を経験していますが、常にこの想いに立ち返り『はたらく人をサポートできる仕事だろうか?』と問いながら進めました」と言います。「PERSOL Group Awards 2024」を受賞したプロジェクトも同じ。「たくさんの派遣スタッフが困っている、悩んでいる、不安を感じている。それを少しでも早く解消できないか?」と考え、パーソルテンプスタッフに登録する派遣スタッフが、登録・就業に関する各種手続きや、社会保険・給与・証明書・有給休暇等の問い合わせに利用するフリーダイヤル『トーロクテンプ』のシステムを大きく改修しました。

では、下稲葉の原点であり、原動力でもある「はたらく人をサポートする仕事をしたい」という想いは、どこで生まれ、どのように活かされてきたのでしょうか。

「その想いに気付いたのは、法学部で学んでいた学生時代でした。大学院まで進学したのですが、2年連続で司法試験に落ちてしまい……。『そろそろ弁護士はあきらめ、どこかに就職して社会に出なければ』と焦りつつ、親や周りからの『この子はいつ就職するのだろうか……』という視線も気になっていたころです。それまで漠然と弁護士になろうと思っていましたが、どうしてだったんだろうと改めて振り返ったとき、頭に浮かんだのが、ゼミの先輩の話でした。女性の弁護士の先輩で、専門は労働紛争。労働者側に立ち、トラブル解消や労働環境改善のために奮闘したエピソードを聞く中で『こういう仕事、はたらく人をサポートする仕事って、いいな』と思ったんです。その記憶が蘇ってきたのです」

下稲葉は公務員試験に合格し、労働基準監督官に。2年間、労働基準監督署で給料の未払いの相談や労働災害の調査などに関わりました。まさに「はたらく人をサポートする仕事」に就いたのです。

「ただ、そうしていざ世の中を目の当たりにしたとき、自分の限界を感じたのです。労働者から未払いの相談を受けて解決方法を提案する、あるいは企業に支払うよう指導しても、実際は理解が得られず、支払われなかったケースもありました。そうなると企業に対して労働者側から裁判を起こすなどして、当事者間の解決に委ねることになる。私からは『ご自分で裁判を起こしてください』というアドバイスしかできない。もちろん、裁判の専門知識を持っている方は稀で、結果、泣き寝入りになることも。『人を雇う側も雇われる側も、はたらくことに対してもっと知識があれば……』と思うようになりました。そういう世の中に変えていかないと、はたらく上で困ってしまう人は減らないぞ、と。それで、情報を正しく伝えられる業界に、と出版社に転職しました」

手がける仕事とキャリア、人生のステージは変わっても、想いは同じ

法律系で労働関係の書籍も多く手がける出版社に転職し、編集者となった下稲葉。書籍という媒体を通じて、世の中に法律の知識や情報を発信する業務を手がけることになりました。

「そこで情報発信の面白さにハマり、10年、その会社に勤めました。知識を広める、そのことで救われる人がいる、防げるトラブルがあるのだ、という使命感もありました。その間に結婚し、2人の子を出産。さらに離婚を経験。さまざまな価値観の変化が起こりました。シングルマザーとして子どもを育てながらはたらくと、仕事とプライベートのバランスをとるのにとても苦労する。業務は楽しいのだけれど、労働環境のいびつさが気になったり。また、産休・育休を2度しっかり取得できたので私自身はとても会社に感謝していたけれど、ほかの社員に目を向けると、会社への貢献意欲が高い人ばかりではなく、組織づくりの難しさに気付いたり。次第に『会社へのエンゲージメントを高めるには何ができるだろう』と考えるようになったんです。貢献意欲、エンゲージメントが高い会社は、風通しが良く、居心地も良い。当然、パフォーマンスも発揮できる。プライベートも充実するはず。そんなことを考えては、悩むようになりました」

組織づくりという大きな視点からはたらく人のことを考える。これもカタチを変えた『はたらく人をサポートしたい』という想い。より良い組織づくりのためにはどうしたらいいだろう、と悩んでいるときに出会ったのが、パーソルでした。

「その出版社は歴史も古く、組織を抜本的に変えるのはなかなか難しくて。それでも改善できるだろうか、方法はないだろうか、と悩み続けていました。その当時、2019年の秋ころですね、ちょうどパーソルテンプスタッフの求人が出ていたんです。ガバナンス本部に『エンゲージメント室』を立ち上げる、その新規メンバーの募集でした。『ここならゼロから組織づくりに挑戦できる。私がやりたいことが実現できるんじゃないか』という期待を胸に応募し、2020年1月1日付けで入社しました。当時、エンゲージメント室は、はたらく派遣スタッフ・社員の声を経営に届ける重要な役割を担っていました。新規部署を立ち上げてまで、社員の生の声に耳を傾けようとする姿勢に感銘を受けたんです。その後、私の担当業務は派遣スタッフ対象に変わりましたが、自分が果たすべき役割と使命は同じ、と思って務めています」

はたらき方の多様化に適応し、サポートも柔軟に

「私なりの解釈ですが、エンゲージメントを向上することは、分かりやすく言うと『ここではたらいていて良かった』と思えるようにすることだと思っています」と語る下稲葉。そのために企業や組織、仕組みを変えていくにはどうすればいいか、と考え続けています。その一つが、グループ会社を横断して遂行した今回のプロジェクトでした。

「コロナ禍を機に、はたらき方は大きく変化しました。急な発熱でコロナが陽性かもしれないのでお休みを取りたい、体調のすぐれないご家族のケアのために在宅勤務にしたい、といった事態が突発的に起こり得る世の中になった。もしそうなったら、特別休暇や助成制度の有無・申請方法などをすぐに確認したいですよね。こうした派遣スタッフのニーズの高まりを受けて、トーロクテンプはつながりにくい状態になりました。中には20分以上待ってやっとつながったという声をいただくことも……。これではスタッフの方が安心してはたらけない、何とかしなければと強い危機感を抱きました。そこで、私の所属するパーソルテンプスタッフと、トーロクテンプのコールセンター業務を受託・運用しているパーソルビジネスエキスパートとが手を取り合い、繁忙期となる3月までのシステム改修を目指したのです。わずか5ヵ月という超短期でのプロジェクト進行でしたが、皆さんの協力でなんとか無事に完遂できました」

改修では従来の有人対応はもちろん、お困りごとや相談に対応したWebページのURLをSMSで送付するシステムも導入し、待機時間を減少できる仕様に変更しました。さらに自動応答の質問による相談者の初期振り分けも、紋切り型の各部門への振り分け用の質問ではなく、困りごとを選ぶことで対応部署にたどり着けるようにするなど細かく変更。とことん「はたらく人をサポートしたい」という目線に徹し、「課題をいち早く解決する工夫」を凝らしています。

「はたらき方は、今後ますます多様化するはず。現在就業いただいている11万人のスタッフが、将来的に20万人、30万人と増えていった時にも、しっかりとスタッフ目線かつワンストップで対応できるトーロクテンプでなければ、はたらく人をサポートできているとは言えない。その準備は今回のプロジェクトでできたと確信しています」

はたらくことに前向きな気持ち、その背中を押してあげたい

「私のあこがれの女性像は、母なんです。専業主婦で、私も含めた4人きょうだいを愛情込めて育ててくれました。お菓子はいつも手作りだったし、服を作ってくれたりもして。もし私も専業主婦になるなら、なんでもできる母のようになりたいと思っていました。そんな母はいつも『手に職をつけ、はたらきに出なさい』と私たちに言っていたんです。専業主婦の母の人生とは真逆で、社会と接点を持ちなさい、キャリアを築きなさい、自分の足で立ちなさい、と。母は大卒で能力も高かったはずですが、当時はまだ「女性は家庭を守るのが当たり前」という時代でしたので、1~2年ほど勤めた会社を寿退社しました。もし母の時代に“派遣”というはたらき方がもっと浸透していたら、母の人生はまったく違っていたかもしれませんね。
家庭のことや育児のことをしていると、本当に疲れます。私も出版社に勤務していたころやシングルマザーになりたてのころは、家に帰って夕飯を作り、倒れるように寝て終わるという毎日でした。そんな中でも『思い描いたキャリアを歩みたい』という願いはずっと持っていましたが、そうはいっても、育児や家事に追われている人にとっては、フルタイムや毎日の勤務は難しい場合もありますよね。そういう人にとっては特に、派遣は魅力的な選択肢だと思うのです。派遣というはたらき方を選ぶことで、自分の人生に前向きになれるんです」

だからこそ、下稲葉は派遣の労働環境を少しずつでも良いものにしたいと考えているのだと語ります。そうすることで、派遣というはたらき方が、もっと多くの誰かを救う選択肢になれるはずと考えているから。

「人って前向きに何かしたいと思うだけで100点だと思うんです。もし、さらに10センチ、いえ1センチでも前に踏み出せたら、もう120点。私はそんなふうに考えています。だから前向きな人の背中を押して、120点にできる、それで『ここではたらいていて良かった』と心から思っていただけるようになる、そんなサポートができる仕事をこれからもしていきたいなと思っています」

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。

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