シンガポールから東南アジア各国・地域へ、自身が生まれ変わることで掴んだ成長 ― PERSOL Group Awards 2022受賞の裏に(16)Esther Quek ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループでもっとも栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2022年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第16回目は、PERSOLKELLYシンガポール本社、リージョナル人事担当シニアマネジャーのEsther Quek(以下、エスタ)です。

半導体エンジニアだったエスタが、人材マネジメントの世界へと劇的な転身を遂げたのは、機械ではなく人と触れ合う仕事がしたいと考えたからでした。そんな想いを軸にしているエスタが開発した社員向けトレーニングアカデミーは、PERSOL Group Awardsを受賞した「Learning and Growing Together(共に学び、成長する)」プロジェクトへと発展し、今では東南アジア全域のパーソルグループ社員の成長とクライアント企業の成果の向上に大きく貢献しています。

目次

エンジニアから人材ビジネスの世界への転身

2006年、エスタは半導体業界でエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。将来的にますます重要性が増すこの分野で活躍できることに、最初はとてもやりがいを感じていましたが、入社して3年が過ぎたころには、半導体の基板材料やハイテク機器だけを相手にする仕事に物足りなさを覚えるようになっていたそうです。

「ほかの業界にいる友人たちは人と接する機会が多い分、コミュニケーション能力が私とは比べものにならないほど高いことに気付きました。一方で、エンジニアである私はといえば、仕事の中でコミュニケーション能力を高める機会はほとんどなく、他人と会話をすることもままならない状態。もっと人と向き合う仕事をして自分を成長させたいと思い、キャリアチェンジを決意しました」

これまでいた世界を飛び出して、シンガポールで人材事業を営むPERSOLKELLY Singapore(旧CAPITA)に入社したエスタは、ビジネスサポート部門に配属され、コーポレート機能を担当。スピード感のある企業文化の中で自分を成長させ、チームリーダーを任されるまでになりました。しかし、2015年に同社がパーソルグループの傘下に入り、社名がPERSOLKELLYに変わることになった時には、自分を成長させてくれた企業文化が変わってしまうのではないかという不安を感じたと言います。そんな彼女の不安を取り除いたのが、Asia Pacific SBU長である山﨑 高之でした。

「日本の企業は上下関係に厳しく、上司との交流も少ないと聞いていたので、日々の業務に支障をきたすのではないかと不安でした。でも、山﨑とPERSOLKELLYのCEOであるフランシスは、『何も変わりませんよ』とおっしゃって私たちを安心させてくれ、それどころか、『問題を解決するのが経営陣の役目。何か困ったことがあったら、いつでも私たち経営陣に相談するように』と言ってくれました。また、ある懇談会では、お二人がすべてのテーブルを回り、一番若い社員にまで一人ひとり声をかけて、名前や仕事内容を尋ねていらっしゃったのには驚きました。当時、CAPITAには100人以上の社員がいたのにもかかわらずです。その姿を見て、パーソルグループには、みずから模範を示しながら部下を率いてくれる革新的な経営者がいるから大丈夫だと確信しました」

東南アジア全域にトレーニングアカデミーを展開

2018年に、社員への業務研修に力を注いだエスタは、新入社員向けトレーニングアカデミーを立ち上げました。その結果、新入社員の離職率は急速に低下し、数カ月後にはトレーニングアカデミーで学べることを理由に入社を決める人が増加。この功績などが認められ、2019年にPERSOLKELLYの人材開発担当リージョナルマネジャーに就任したエスタに任されたのが、東南アジアの緒国地域にもトレーニングアカデミーを設立することでした。

「私たちが目指したのは、PERSOLKELLYがどの地域のどのクライアント企業に対しても、常に質の高いサービスを提供できることを広く認知してもらうことでした。そのためには、スタッフおよびサービスクオリティの標準化が重要です。一方で、各地域での会社で独自のトレーニングアカデミーを立ち上げるためのリソースを、すべての会社が持っているわけではありません。各社とトレーニングにかかる費用やアプローチ、成果を標準化させる方法について議論を重ねた結果分かったのは、多くの会社がトレーニングの費用対効果を得られていないということでした。しかも管理職はこの問題を認識していながら、解決手段を見出せていなかったのです」

これらの問題を解決し、地域間の連携を図るのは、長く、骨の折れるプロセスでした。エスタは、各国・地域の担当に会って相談をしながら、現地の研修について学び、トレーニングの標準化のためのサポートに努めました。そして、困難にチャレンジし続けたエスタと彼女が率いるチームメンバーの尽力によって、より質の高いトレーニングを低コストで提供できる標準プログラムがアジア太平洋全域で立ち上がったのです。

仕事に活きているのは、過去培ったエンジニア経験

プログラムができた翌年、新型コロナウイルスの世界的な流行により、トレーニングにもリモートワークという新しい様式が求められるようになりました。エスタはこの難題にも果敢に取り組み、全社的なバーチャルプラットフォームを導入し、さらに社員がプラットフォームの使い方を学ぶためのトレーニングを実施しました。

当初、新入社員が受けるバーチャルトレーニングとして提供していましたが、2021年の後半には新入社員だけではなく地域全体の社員をサポートする新しい社員研修プラットフォーム「PSK Learning Journey」に進化。これら一連の取り組みは「Learning and Growing Together(共に学び、成長する)」プロジェクトとして知られるようになり、2022年にエスタは「PERSOL Group Awards」を受賞しました。成功につながるプロセスを組み立てる自身の能力について、エンジニアとしての経験が役に立っているとエスタは考えています。

「ビジネスの世界では解決策を重視する傾向がありますが、エンジニアは何か問題があればまずは根本的な原因を探ります。トレーニングシステムの構築に関して言えば、プロセスの中のすべての段階を省略することなく順番通りに進めていく必要がありました。これには、問題が起きたら必ずその原因を探り、着実に問題解決をしていくエンジニアの考え方や仕事の進め方がとても役立ちました」

はたらく上で再認識した、“人”の重要性

今回の取り組みを経て、エスタにははたらく上で再認識したことがあるそうです。それは、システムとともに重要なのは、“人”だということ。エスタ自身、現在も献身的に仕事に専念できるのは、これまで一緒にはたらいてきた上司たちのおかげだと言います。

「上司はいつも私を信頼し、私の努力や貢献をきちんと評価してくれました。そのおかげで、私は笑顔ではたらくことができ、会社への帰属意識も高まりました。これが『はたらいて、笑おう。』の力です。私自身が上司から評価してもらったように、私のチームメンバーにも自分がきちんと評価されていると感じてもらいたい。たとえお客さまの転職のご支援ができなかったとしても、その候補者から『サポートをしてくれて、ありがとう。学んだことを今後に活かしていきます』と言ってもらえるかぎり、自分たちのトレーニングは無駄ではないのです。誰かの役に立っていることに自信を持って、笑顔ではたらいてほしいと思っています」

成長するためのチャンスは、決意と行動が連れてくる

以前の職場で上司たちに退職を伝えたとき、すでに優秀なエンジニアとして評価を確立しているのに専門職を離れる彼女を理解できず、何人かは『内向的な彼女が、ほかの業界で社交的な人間に生まれ変わるなんて無理だろう』と想像していたそうです。しかし、エスタは上司たちの考えが間違いであることを証明しようと心に決めて新天地へ行き、結果的にそれを証明しました。

「アジアには、人見知りで、常に人の目を気にする人が多いと言われています。人は誰でも困難を経験し、障害にぶつかりますが、あきらめなければ必ず乗り越えることができると信じています。そして、常に広い心を持ち、恥ずかしさや気後れを理由に挑戦をあきらめないこと。これは、PERSOLKELLYの経営陣の先輩方から学んだ考え方です。困難な局面に立たされたとき、乗り越えるのは無理だと決めつけないで、心を開いて誰かに相談してみる。もしかすると彼らは、あなたが困難を乗り越えるために必要なアドバイスをしてくれるかもしれません。その決意と行動が、自分が成長して生まれ変わるチャンスにつながるのだと思います」

困難を乗り越えて成長できた今、エスタが目指しているのは、より多くの人材を発掘し、彼らの経験をほかの社員へ共有して社員同士の成長を促すこと。自身が生まれ変われたという自信を持って目標実現に取り組む彼女の姿こそ、きっとほかの誰かの成長の糧となっているに違いありません。

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