「“思いやりの心を持って人に関わる”ことが、人生を生き抜くための目指すべき道のり」 ― PERSOL Group Awards 2022受賞の裏に(15)Philip Lee ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループでもっとも栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2022年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第15回目は、シンガポールに拠点を置くグループ会社P-Servでプロジェクトマネジメントを担当するPhilip Lee(以下、フィリップ)です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行、そして担当する空港業務での顧客サービスの役割縮小に伴い、スタッフのほかの業務への異動をクライアントから依頼を受けたフィリップ。彼は、依頼があった1カ月後に新しいプロジェクトを立ち上げ、雇用の維持と会社の成長に貢献しました。チームワークという強い信念と、海外での慈善活動で培った思いやりの精神でこの困難を乗り越えたことは、彼の人間としての成長につながりました。

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パンデミック下での現場づくりで求められたのは、創造性

フィリップは、2015年12月にプロジェクトマネージャーとしてP-Servに入社。空港の顧客サービス業務を管理するポジションに配属されました。
ところが2020年2月、新型コロナウイルスの影響で世界の航空旅客数は過去最低水準に落ち込み、空港ターミナルは閉鎖され始め、空港で必要とされる人員は大きく削減されることに。長年にわたって経験を積んだスタッフが職を失い、路頭に迷うことになりかねない恐れがある中、フィリップが直面した大きな課題は、スタッフの新たな仕事を見つけ出すことで継続的な雇用を実現させることでした。

「私は、新しいミッションとして倉庫管理業務のスタッフ研修というソリューションをクライアントに提案しました。2週間以内には新しい環境での操業が可能になるでしょうし、新たな雇用を生み出すにはここだと思ったのです」

クライアントの同意を得て、フィリップはスタッフとのミーティングを行い、新しい業務における課題や難しさを伝えました。スタッフからは新しい業務への不安や悩みの声もありましたが、それらに対しても一つひとつ丁寧に向き合いました。最終的には、ほとんどのスタッフが新しい仕事に対して意欲的になってくれましたが、この挑戦が心理的に非常に辛いものになるであろうことをフィリップは認識していました。

「中には別の仕事を選択したスタッフもいましたが、シフトの組み換えや昇給など要望に応えていくことで再び戻ってきてくれるようになりました。こういったやり取りを通して、皆が深い信頼関係を築くことができたのでしょう。」

こうしてクライアントは空港での事業を拡大することができ、フィリップはスタッフの雇用を守ることに成功したのです。そして、その功績が今回のアワードの受賞につながりました。問題解決に奔走した日々を振り返り、フィリップは「困難を克服したこの道のりは、本当に素晴らしく、人生を決定づけるものでした」と語っています。

業界での経験により新たなアプローチが可能となり、それがリーダーとしての自分を成長させてくれた

P-Servに入社する前、22年間陸軍ではたらいていたフィリップには、作戦や目標を達成するためにチームを率いた経験があります。ただ、軍隊とは異なるビジネスの世界では学ぶべきことも多い、とフィリップは言います。

「軍隊では、序列や階級がものを言います。任務中、さまざまな課題に直面した時、訓練や業務におけるすべての人の安全を確保することに責任を負うことになります。そのためときにトップダウン式の指導も必要になります。一方、ビジネスの世界では柔軟性が非常に重要であり、スタッフの幸せのためには細かい気配りが求められます。常にオープンなコミュニケーションをとり、親しみやすく、いつでもすぐに役に立てるようにすることが大事なのです」

さらに、フィリップは「自分の仕事人生の中で最も重要な事例のひとつ」としてこんな事例を挙げています。

「初めて倉庫ではたらいた時はとても大変でした。毎日、手作業で仕分け処理する品目は数千点に及び、時にはスタッフが仕事を投げ出しそうになったなんてこともありました。私は彼らに、今ここでやめてしまったら、私たちは楽になれるが、翌日には、多くのお客さまが商品を受け取れず、クレームの大波が押し寄せることになるだろう、と言いました。当然評判は低下することになるでしょう。しかし、“倉庫での作業経験ゼロのスタッフ集団が、顧客の新しい収益の柱を拡大するためのプロジェクト推進に成功した”という歴史をつくるチャンスが得られることでもあるのです。この仕事をやり遂げることで、スタッフの家族の生活は守られ、会社の歴史に残る画期的な出来事となり、何よりも人間としての強靭さと適応力を身につけることができる、と」

この時にスタッフとゴールを共有したことが、アワード受賞へとつながったのです。

リーダーシップの原則とは?チームに寄り添い、チームを励まし、チームに機会を与える

フィリップには、リーダーとして仕事をする上でいつも心がけている3つの基本理念があります。それは、常にチームに寄り添って仕事をする姿勢を持ち、彼らの成長を促し、そのための機会をいつでも提供する、ということです。

「高いポジティブ思考を持ち、一貫して励まし続けることで変化に影響を与えていく。これによりチームスピリットを高め、全スタッフの人格形成を促す上で理想的なライフサイクルが生まれます。自分に共感してくれ、自分を指標として尊敬してくれる人たちのリーダーになれるよう、心がけることです」

フィリップにとって、メンバーの成長を促すこともまた、「はたらいて、笑おう。」を実現するための重要な要素なのです。

「私には、いつもスタッフに期待している大切なことがあります。『私は今のポジションに就くまでに7年かかりましたが、あなた方は少なくとも10歳以上私より若い。私がしてきたことのすべてをあと3年で達成できるでしょうか?』とスタッフに問いかけます。このような課題を設定する最大の理由は、これから未来にかけて生活コストがどんどん高くなると思うからです。彼らの問題はもっと複雑で、家族のために質の高い生活を送ることを求めています。それを達成するためには、各自がスキルを向上させ、他者とうまく協働するための集中力と献身性が必要となります。私は、彼らが決して取り残されないように、情熱を傾けられる仕事を見つけ、声を上げ、自分の意思を明らかにするよう励ましています」

この3年間で、フィリップはスタッフに昇進の機会を提供してきました。現在の経営陣の8割は、プロジェクトマネジメントを担当するようになったグランドスタッフなのです。そして、もっと多くの人がパーソルとともに歩む旅で成長することを願いながら、彼は誇りと自信をもってスタッフが昇進できるように取り組んでいます。

チームに必要なものは、多様性とユーモア、そして思いやり

フィリップは多くの国を旅して、さまざまな国の文化を学びました。その異文化理解こそ、彼の仕事に対する姿勢の重要な基盤になっていると考えられます。
また、多様性だけでなく、同僚との絆や職場の心理的安全性のためにユーモアを大切にしているフィリップ。

「話をしていない時の私は自然と厳しい顔つきになるらしく、たいていの人は怒っていると勘違いしてしまうことが多いんです(笑)。でも、やりがいを心から感じられるこの仕事と、『君は怖そうだけど、面倒見のいいところがあるから、もっとその表情を見せてくれよ』と、ちょっとした冗談を言ってくれる上司のおかげで、性格もさらに陽気になりました」

また、フィリップは、コミュニティでうまくやっていくための秘訣は、他者への思いやりを持つことだと考えています。その信念は、2011年8月のこの体験から始まりました。

「私がとあるきっかけで出会ったインドの村の人々は貧しく、私がイメージする理想的な生活とは程遠い環境で暮らしているように見えました。でも、彼らと話してみると、環境に拘わらず関係なく誰もが笑顔で幸せを感じているんですよ。どうしたら自分もそうなることができるのだろうかと考えたんです」

そして、思い立って訪問先の修道院に寄付を申し出たものの、『より人として成長できる』という理由で、村の貧しい家庭へ直接の寄付することををすす勧められ、食料品を村に送ったそうです。

「このときの体験が、自分が本当の幸せを手に入れるための最初の一歩となりました。軍隊では、幸せになるための訓練はありません。軍隊にいた時、私はいつも厳しく、怒鳴りながら、部下にやるべきことを正確に行うように命令する人間でしたが、インドでの経験は私に別の道を示してくれました。困っている人を助けてこそ、私の旅は完結し、幸せになれるのだと気付いたのです」

誰かを思いやって踏み出した小さな一歩が、その人の大きな助けになる。職場でもこの思いやりの心を持てば、同僚にも簡単に心を開くことができるとフィリップは断言します。彼のこの言葉からは、まさに思いやりの心をもって困難を乗り越えた経験に基づく確たる自信と強い信念が感じられます。

今回のプロジェクトメンバー
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