「しくじり先生」として失敗した経験を糧に、「ふつうを疑う」を胸に新たな事業創出に挑む ― PERSOL Group Awards 2022受賞の裏に(9)越智聖人 ―

パーソルグループでは年に1回、グループ内表彰「PERSOL Group Awards」を実施しています。「PERSOL Group Awards」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループでもっとも栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2022年度の「PERSOL Group Awards」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。
第9回目は、パーソルイノベーション株式会社の越智 聖人です。

社内の新規事業コンテストで評価を受け、パーソルイノベーションの新事業として2020年にスタートした若年向けのオンライン求人検索サービス『omochi』。越智は、このプロジェクトの開発者であり、事業責任者として担当してきました。ただ、残念ながら2022年に『omochi』はクローズ。それでも『しくじり先生』として、パーソルイノベーションのバリューの一つ、「ふつうを疑う」を胸に、『omochi』のプロジェクトで得た学びを活かしながら、越智は今も精力的に日々の仕事に取り組んでいます。

目次

興味のある領域が「食」から「職」へと変化した

ITソフトウェアメーカーを皮切りに、パーソルグループに入るまでインターネットの広告メディア会社やフリーランスなど5社を経験した越智。決して少なくない転職回数ですが、越智曰く「興味と探索と検証」を通して自分のキャリアの軸を見出そうとしたことが動機だったと言います。

「昔からいろんなものに興味を持っているので、まず『やってみたい』という気持ちが湧いてしまうんです。その気持ちをベースに転職し、業務を通して興味を持った技術や事業を探索する。それを自分のスキルとして身につけたところで、そのスキルがどこまで通用するかの確認と検証を含め、さらなる高みを目指すために新天地へ向かう。自分より若い面接官から『履歴書が汚れている(転職回数が多い)』なんて言われて、自分のこれまでの経験を否定されたようでショックを受けたこともありました。でも自分としては、いろいろな経験をしながら、どこに自分の軸足を置くのかを確認していたような想いがあります」

2017年、越智はパーソルキャリアに入社しますが、この時も「職(=人材サービス)」という経験のない領域への興味に突き動かされたのです。募集ポジションはアルバイト求人情報サービス「an」(※2019年11月サービス終了)のプロダクト企画。これまでの経験を活かすことができ、なおかつ自分がやりたいことにマッチすると考えました。

「パーソルキャリアに入社する前に所属していた会社は、『食』に関する情報を自社メディアで発信するインターネット会社でした。衣食住というぐらいですから『食』は人間にとって必要な領域ではありますが、そのメディアは主に飲食店を紹介するだけのグルメ情報を扱っているところだったんです。もう少し人助けに直結するような領域に関わりたいと考えるようになっていた中で、別の『ショク』、つまり人材領域としての『職』への興味が高まり、これまで事業開発や事業企画に携わってきた自分のキャリアが活かせそうだと感じて、転職を決めました」

パーソルに来て学んだ、慎重に仕事を進めていく必要性

これまでスタートアップ企業や新興企業で仕事をしてきた越智にとって、パーソルでの仕事の進め方にはギャップを感じることがあったと言います。それはスピード感だったそう。

「これまで所属していたインターネット業界は、まだ新興業種ですから会社としての規模感も小さく、それほどルールも徹底していませんでした。しかも自分で意思決定できる会社に所属することが多かったので、かなりスピーディーに物事を進めていました。その反動で、当初パーソルでの仕事の進め方やスピードに違和感を覚えることもありました。何か一つの意思決定をするにも、さまざまなステークホルダーや社内で事前に調整しなければ決められませんし、決めるために踏まなければいけない必要なステップも非常に多い。正直、自分が思うスピード感で物事が進まないことに、もどかしさを感じたりストレスを抱いたりもしました。ただ一方では、動き出すまでは時間がかかるけれども、関わる人が多い分だけ、これまでの会社では経験したことのない大きな活動になっていくところに面白さや仕事の醍醐味を感じてもいました」

当時、越智が感じていたもどかしさも、新たに設立されたパーソルイノベーションに転籍したことで、実は必要不可欠な良い経験だったと理解できたと言います。

「パーソルイノベーションに転籍してからは新規事業に注力してやらせていただいているんですけれども、思いのほかプロダクトの設計開発の前段階のリサーチなどに時間を費やすことが多いんです。たとえば、営業チームから意見を吸い上げつつ、その意見を軸にしながら仕様に落とし込んだりする必要があります。フリーランス時代の自分では難しかったと思いますが、今、物事を慎重に進めて行く必要性を理解した上で事業に取り組めているのは、パーソルキャリアでの経験があったからこそだと感じています」

2019年に越智がパーソルイノベーションに転籍したのは、前年に行われた社内の新規事業コンテスト(現:Drit(ドリット))にエントリーして採択された、若年向けのオンライン求人検索サービス『omochi』を新規事業として立ち上げるためでした。
しかし、すぐにプロダクトを作り始めることはせず、リサーチからスタート。まずここで「物事を慎重」に進める考えが生きたのです。

「まだ、いくつかの仮説がクリアになっていませんでしたし、仕組み自体が新しいものだったので、ユーザーが受け入れてくれるかどうか確認する必要があったんです。未来の顧客となりうるユーザーへのインタビューと並行してプロトタイプを作成し、意見を聞くなど、約50人ぐらいのユーザーに実際に会って話を聞き、その中から生まれたアイデアもありました」

このとき越智はインターネット系の会社に所属していたころにはあり得なかった、地道な作業を慎重に進めていたのです。

新規事業のクローズで挫折を経験

その後、テスト版の公開を経て、2020年7月に『omochi』のベータ版の提供を開始。『omochi』は、求職者向けに行うキャラクターを用いた簡易診断を元に、機械学習にて求人情報のレコメンドを行うものです。しかし、当初は高い集客に成功するも、その後は成長と鈍化を繰り返し、試行錯誤の末に2022年3月、事業クローズの判断がなされたのです。

「事業クローズの判断がなされた時は当然ショックでした。本当にたくさんの人の力を借りて進めた事業だったので、その人たちに対して申し訳ない気持ちでいっぱいでした。一度は落ちてしまった集客数も再び成長軌道に乗り始めていましたし、私自身想い入れのある事業でしたから。ただ、『omochi』のキャラ診断を受けて楽しむ人は爆発的に増えたものの、その後の求人検索体験につながらないなど課題がいくつもあったことは事実でした。その改善に向けてテストを繰り返しもしたのですが……。しかし、数カ月にわたって経営陣と話を重ねた中での判断だったので納得感はありました。もし、私一人で判断しなければいけない状況だったら決断できたかどうか。経営陣と相談しながら進めることができたのは非常にありがたかったですね」

新規事業には失敗がつきものではありますが、『omochi』事業のクローズはリーダーとしてチームを率いてプロジェクトに取り組んでいた越智にとって、これまでにない挫折経験であるとともに、新たなはたらき方を経験できた貴重な業務でもあったのです。

『omochi』の診断画面の一つ

「ふつうを疑う」意識が新しい価値を生み出す

越智にとって『omochi』事業は、パーソルイノベーションが掲げるバリュー「ふつうを疑う」「速さを武器に」「それは最後の答えか」の中の「ふつうを疑う」ことからスタートしたプロジェクトでした。

「自分にとって『ふつうを疑う』というバリューは、すごくフィットする言葉なんです。これまでのキャリアの中で重視してきたのは『ほかの人と違うことをしよう』ということ。既存で良しとされているものは、そこにすでに価値があるんですね。しかし、既存の何かと何かを組み合わせる、違う視点を入れることで新しい価値をつくり出せると信じているんです。だから、世の中で良いとされているモノやコトに対して『本当にそれでいいのか?』と考えるようにしています。特に事業開発は新しいことを生み出さなければならないので、『ふつうを疑う』意識は大切だと思っています。さらに、そうやって考えたことに対して『それは最後の答えか』と自問自答する。新しい価値を生み出すためには、このバリューのように常に自分の答え以外の可能性に目を向け、もっと考えよう、と突き詰める必要があるのではないかと。失敗したことで、その想いはより強くなったと感じています。言うなれば、この『それは最後の答えか』は自分への戒めみたいなものでもあり、自分へのメッセージなのかなという気がします」

悔しくも『omochi』事業はクローズしてしまいましたが、パーソルイノベーションの3つのバリューを体現したチャレンジであったという点が評価され、PERSOL Group Awards受賞となりました。そして既に越智は新たな事業開発に向けて動き出しています。失敗を失敗で終わらせず、それを糧にして新しい価値を生み出す。近い将来、越智がクリエイトした新規事業が、またアワードを受賞する日が来るかもしれません。

このページをシェアする
目次
閉じる