「道なき道にこそ、可能性がある」。失注から再受注を勝ち取れた理由 ─ PERSOL Group Award 2021受賞の裏に(1)宮下景子 ─

パーソルグループでは、年1回、グループ内表彰「PERSOL Group Award」を実施しています。「PERSOL Group Award」とは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を象徴するパーソル社員とその仕事の成果に贈られる、グループでもっとも栄誉ある賞のこと。各SBU、およびユニットに貢献し、提供価値を創出した社員を表彰しています。

本連載では、2021年度の「PERSOL Group Award」を受賞した社員のキャリアストーリーと、受賞の舞台裏をご紹介します。第1回目は、パーソルワークスデザイン株式会社 宮下 景子です。

目の前に課題が山積すればするほどモチベーションを高めてきた宮下が、どのように仕事と向き合ってきたのか。その足跡にスポットをあてます。

目次

キャリアの始まりはメディアの制作現場

大学時代は製薬会社の研究職を志望していたという宮下。しかし、新卒時に選んだ就職先は、メディアの制作現場でした。

「これは自分でも意外な進路でした。たまたまアルバイト先の会場で、メディア制作会社の就活イベントをやっていたことがご縁のはじまりです。アルバイト中にスタッフの人から、『就活中なんでしょ?受けてみなよ』と勧められ、なんの気なしに覗きにいったところ、メディアの世界がすごくキラキラした素敵な世界に見えてしまったんです。大学4年生で専攻した『生化学ゼミ』では、昼夜研究に追われる日々を過ごしていたからでしょうか(笑)」

それまでは研究室で夜を明かすことも珍しくなく、ひたすら実験を繰り返すハードな大学生活。「そんな地味な生活が身に染み付いていたので、ギャップにやられてしまったんです」と宮下は振り返ります。

しかし、そんなメディアの現場で宮下は、理系ならではの才覚を大いに発揮し、頭角を現します。

「まだパソコンもない時代。30社ほどの印刷会社への発注調整や、納期や原価の計算、さらにタスク管理のシミュレーションなどを担当していたのですが、電卓と模造紙片手に、関係部署との連携を図っていました。そうした作業工程を組み立てることが得意だったのは、やはり理系の下地があったからなのでしょうね。業務の効率化を図るための改善策も積極的に提案していました」

この時、世はバブル真っ只中。忙しいのは嫌いじゃないという宮下は、膨大な仕事量にひるむことなく、その後、20年超にわたってキャリアを積むことになります。

より活躍できるフィールドを求めてパーソルグループへ

そんなキャリアに一段落つけることになったのは、夫の海外転勤がきっかけでした。仕事をやり切った充足感もあり会社を退職し、2014年から香港での生活がスタート。現地でもキャリアを活かして、編集関係の仕事をこなすなど精力的に活動し、4年後に帰国してからは、研修支援の会社でプログラム遂行をサポートする仕事に従事しました。しかし、業務の考え方が噛み合わず苦労したと宮下は語ります。

香港でも精力的に活動

「たとえばレポート制作の業務一つをとっても、どうしても非効率な部分が目に付いてしまうんです。そこで、自分なりにエクセルのシートをいじって、よりスピーディーに処理できるよう工夫したところ、現場の人たちはみんな喜んでくれたのですが、上司からは『勝手なことをするな』と怒られてしまって……。要は、通常1週間かけて行っている作業を、私がいるチームだけスピードアップしてしまうのは、かえって具合が良くないというんです」

こうなると、なんのために仕事をするのか分からなくなってしまいます。当然、やり甲斐を見出だせるはずもなく、宮下はこの現場を半年ほどで離れることに。

そんな矢先に目に入ったのが、「プロジェクトリーダー募集」と謳った求人広告でした。定められたオペレーションを淡々とこなすだけの業務にはすっかり懲りていた宮下にとって、プロジェクトリーダーとしてはたらけるのは何よりも魅力的。これがパーソルグループにジョインするきっかけになりました。

道なき道だからこそ感じた可能性

2018年3月、新天地で意気揚々と新たなキャリアを歩み始めた宮下。ところが、問題が山積する現場の様子に愕然とし、「プロジェクトへのアサイン初日に退職を考えたほどでした」と言います。

「40名ほどが参加する大規模なプロジェクトでありながら、システムもなく、レポートラインも曖昧。前任者からの引き継ぎも、手書きのメモを2枚渡されただけで、最初は業務の全体像がまるで理解できませんでした。それに加えて、想定していたより遠方の部署に配属されてしまったこともあり、内心では“これは引き返すなら今のうちかも……”と考えていましたね」

それでも踏みとどまれたのは、それに優る魅力を感じ取っていたからです。

「よくよく考えてみれば、決まったレールの上を歩くよりも、道なき道を切り拓くほうが私は得意です。レギュレーションが曖昧で混沌としている状態というのは、これからさまざまな改善策を提案できるということで、自分の特性が存分に活かせるに違いないと感じました」

当時の心境を、「最悪な状況と宝の山を同時に見つけた気分」と表現する宮下。これが、現在も続いている某大手企業のRPO(採用代行)プロジェクトでした。

突然のリプレイスで見えてきた課題

当時、社内の業務フローを再構築するために、「顧客課題の優先順位は何か?」「期待されているレベルは何か?」「社内の課題は何か?」など、宮下は社内外の意見や運用ツールなどを、取材することから着手しました。そして、一つひとつの課題に対して、ただただ愚直に、解決するための提案と実装を積み重ねました。

「たとえば、当時のお客さまは、全国30~40の求人媒体に対して、毎月数億円単位の発注を行っていましたが、明確な価格表すらなく、まったく統制が取れていない状況でした。そこで、全国エリア別の媒体価格表を毎月更新するスキームを設計。担当が誤った価格を請求することがないように実装するなど、とにかく下地づくりに全力で邁進しました」

ところが、このプロジェクトは宮下が携わるようになってから、わずか7カ月でリプレイス(他社への発注)が決定します。おまけに新たな発注先が最大の競合企業とあって、宮下は胸中、複雑な思いに駆られます。

「リプレイスの原因には、いくつか思い当たることがありました。具体的には、お客さまにとっては採用のアウトソーシングが初めてだったということもあり、山積みの課題を解決するための時間・人材リソース・解決手法が圧倒的に不足していたこと。さらに、採用に関する課題として、顧客側はできるだけ多くの応募者を集めることを望んでいたのに対し、私たちが目指したのは採用単価を安くするというゴール設定の齟齬でした。リプレイス先が媒体力のある企業だったのも、競合は応募者を多数獲得することに重きを置いた提案をしていたからだったのでしょう」

悔しさから目に涙を浮かべるメンバーもいた突然のリプレイス。しかしそれから2年後、チームは再び、同企業のRPOプロジェクトの受注を勝ち取ります。

パーソルへの変わらぬ高評価がリベンジ受注のきっかけに

2020年8月。同企業から再びコンペ参加の要請があったのは、リプレイス後もその企業の関係会社からパーソルグループへの高い評価が得られていたためでした。

「リプレイス後もお客さまの関連会社のRPOを受注したり、私たちのグループ会社の一つであるパーソル総合研究所がDX人材の採用について相談を受けたりするなど、お客さまとパーソルの良好な関係が保たれていました。実際、先方から『パーソルさんの臨機応変な対応にどれだけ助けられていたか、今になって気付きました』との言葉をいただいたこともあります」

ただし、コンペである以上、競合相手よりも魅力的な提案が不可欠。そこで宮下をはじめとするプロジェクトチームのメンバーは、顧客側の視点に立った課題解決策を構築するために、議論を重ねます。差別化のポイントは、「ただ集める」ではなく、「優秀人材を採用する」ことでした。

「顧客側の課題は、質の高い人材の継続的な採用でした。競合企業の媒体力の強みを活かした提案に対して、私たちは中長期的な戦略と新たなテクノロジーを活かした採用に注力する手法を提案しました」

ただ、再受注の前提条件は、媒体プランニングするためのWebエントリーシステムの開発でした。ここで、時間も予算もない中でベストなシステムを実現するために、チームは一計を案じています。

同じプロジェクトを担当している小杉文子さん(右)。日々、奮闘している頼もしい同僚です(笑)

「当初、システム会社からは、4ヵ月の開発期間を提示されていましたが、実際の納期はたったの2ヵ月。昼夜問わずの進捗管理により、なんとか間に合わすことができました。また、当時は、全国のお客さまの現場では、競合企業が運用するシステムが使われていたため、パーソルが提案するシステムは仕様を大きく変更することはせず、できるだけUI(操作画面)を維持すること、さらに、顧客視点の利便性を追求し機能開発も随時行うことに注力しました。その甲斐あってか、四半期終了時に実施した顧客アンケート調査では、全体の95%の方が『満足している』という高い評価が得られました」

チームは現在も引き続き、クライアント視点に立った課題と向き合いながら、さらなるサービスの向上を目指しています。

PERSOL Group Award MVP受賞は「もう過去のこと」

パーソル入社から4年。宮下は現在の環境について次のように語ります。

「私のようなある程度経験を積んだ世代にも、挑戦できる機会や環境を与えてくれるのは、感謝しかありません。上司も全面的に任せてくれて、本当にやりたいことをやらせてもらえるのはパーソルならではでしょう」

先のRPOプロジェクトでは、2021年度の「PERSOL Group Award」で、見事にMVPを受賞。しかしそれも「もう過去のことですから」と宮下はすでに前を向いています。

「個人的には最近、地方創生に関心が高まっていて、地方を元気にできる仕事に携わることができないかと、ずっと考えていたんです。そんな中、社内の勉強会でパーソルグループにワーケーション関連の事業があることを知りました。コロナが落ち着いたら、ぜひそうした新しいフィールドにもチャレンジしてみたいですね」

次の目標は、そのワーケーション関連事業でもアワードを狙うことだと語る宮下。まだまだ意欲も向上心も高まり続けています。

このページをシェアする
目次
閉じる