【後編】勤労が義務化された日本で、もっと幸せに「はたらいて生きる」には

パーソルグループは、あらゆるはたらく個人がより幸せに生き、自分らしくはたらくための一歩を踏み出すきっかけづくりを目的として、どなたでも気軽に参加できるオンラインセミナー「今、ニッポンのはたらくを考える会議」を今年の7月より開催しています。今回は、特別編として開催したセッションを前編、後編の2回に分けてお届けします。(制作:NewsPicks Brand Design)
(※)前編はこちら


コロナ禍で価値観が大きく変化するなか、私たちは「はたらく」をどのように捉え、行動すべきか。

「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げるパーソルグループはオンラインカンファレンス「今、ニッポンのはたらくを考える大会議」を11月23日、勤労感謝の日に開催。あらゆる角度から議論を展開した。
本記事では、2つのKeynote Sessionをレポート。転換期にある現代において、自分らしくはたらく未来につながるヒントをお届けする。


日本人の「はたらく」の原点は江戸時代?


石川 江戸時代は日本人の「はたらく」のorigin(原点)だったのではないかという説があります。
江戸町人の1日の大まかな生活スケジュールは、朝は近所を回って変わったことがないかをチェックし、朝食後の午前中はお金を稼ぐ仕事をする。昼食後の午後は他者のためにボランティアをして、夜は明日のためにリフレッシュする遊びの時間。そんな過ごし方をしていました。

平野 中学や高校で習った江戸時代のイメージは、士農工商など身分制度のイメージが強くありますが、実はそうじゃなかったこともわかってきています。
江戸時代後期から職能の分離が起こり、必ずしも農業従事者だけではない、いろんなことを生業にする百姓が村にはたくさんいました。また、江戸時代は社会の機能的分化も進み、それに応じた職業も始まったようです。

水田 古今東西、食べるために働くというベースは変わらないと思いますが、それが満たされると「人のために何かしたい」「誰かの役に立ちたい」と思うようになる。
それが江戸時代の働き方で、長時間労働の現代人に比べるとうらやましくも感じます。

喜多 たしかに江戸時代は「はたらく」の原点だと思います。
江戸時代はそれまでに比べ人口が2倍になっているので、食べるために働くという要素は切り離せなかったと思いますが、同時に他者の役に立つ「はたらき」をして、みんなで生きていた。現在の働き方に近づいたのは明治以降ですね。


時間は神が作り、時計は悪魔が作った


石川 歴史の中により良く「はたらく」ためのヒントがあるとすると、何だと思いますか?

平野 僕は「時間」の存在が「はたらく」に大きな影響を与えたと思います。
フランスで鉄道が走り始めた頃、地方の農民たちは農産物をパリに運ぶため、汽車の出発時間に合わせた行動をとるようになりました。
でももともと農村地帯は、教会が鳴らす鐘の音や太陽の位置などに合わせた生活をしていたから、きっちりとした時間感覚に同期する必要が出てきた。
こうした例などから、社会の分業体制が複雑になるほど、時間や納期に縛られるようになって働き方は苦しくなっていったということがわかります。
今、働き方に大きな変化が起きているとしたら、時間の融通を利かせられるようになっている点が大きいのではないでしょうか。それは、近代以降の労働の苦しさを解きほぐすのではないかな、と。
実際、僕も小説を書いていて苦しいのは締め切りがあることです。もちろん、納期は必要ですが、調整できるようになるだけで労働の苦しみからは随分解放されると思います。

石川 ヨーロッパの言葉で「時間は神が作り、時計は悪魔が作った」というのがありますからね。時計に合わせて働くようになってから、歯車が狂ったのかもしれません。

水田 私も「時間」は「はたらく」に最も影響するものだと思います。コロナ前、私は毎朝8時前には会社に行って、帰宅するのは夜中の23時や0時。土日も働くのが当たり前だと思っていました。
だけど、コロナ禍で「その働き方は間違っている」と気づいたんですね。もしかしたら、社長の私が早く来るからと、周りも気を使って早く出社していたかもしれず、今思えば私は迷惑なことをしていましたね(笑)。


人生100年時代をどう生きるか


石川 「はたらく」の原点となった江戸時代と現在の大きな違いは、人生100年時代といわれるほど長寿になったこと。少し前までは人生80年だと思っていましたが、今は予防医学で老化研究が進んでいるので、人生120年時代はすぐに来るかもしれません。
寿命によって働き方は変化しており、たとえば戦後直後の平均寿命は50歳で、老いも若きもとにかく働いていました。それが、東京オリンピックが開催された頃には、定年55歳・平均寿命70歳に。70年の人生を3分割した「学ぶ」「働く」「休む」という1本のレールが敷かれ、いい学校に進学していい会社に入社することが素晴らしい人生だといわれるようになりました。
でも人生100年時代になった今、60歳で定年になるとその後40年休むことになるし、75歳まで働くと働く期間が半世紀になります。そのバランスを取るために、人生を春・夏・秋・冬の4ステージに分けることが提唱されるようになっています。
たとえば、25歳から50歳までは一生懸命働き、その後は週3〜4日働いて人生も楽しみ、75歳になったらそれまでに蓄えた資産で老後の自分を養う。
みなさんは、人生100年時代の働き方はどのように考えていますか?

喜多 私の周辺や特に20代の若い世代では、副業や越境で働くのが当たり前になっている。稼ぐために働くのではなく、幸せになるために働く方向にシフトしているように感じます。江戸時代のようなパラレルワークですね。
一方で、何がしたいかがわからずに踏み出せない人もいます。そういう方に伝えたいのは、「考えるな、感じろ」です。難しいことを考えるよりも、自分の興味や関心があるもの、感性が動くものを選んで、幸せになるための働き方にシフトできればいいですね。
喜怒哀楽を大事にしながら、自分の人生をデザインしていける人が世の中であふれてほしいです。

平野 あらゆる前提となる社会構造が、不確実で予想がつかなくなりました。過去10年間のテクノロジーの進歩を見ても、正確に予想できた人はほとんどいなかったし、今後の10年間でどうなるかも本当にわかりません。
激変する環境の中で、いつまで会社が続くかわからないし、いつまで自分がそこで働けるかもわからない。僕らは戦後の終身雇用制と日本的な「はたらく」を相当強く植え付けられているので、就職にうまくいかないことが“アイデンティティクライシス”として大きな傷を残してしまうし、60歳で定年すると自分自身を失ったようになりがちです。
今はその考え方を緩和していくのがすごく重要なので、副業によってリスクヘッジをする働き方はあり得ると思います。
ただ副業化には、やりがいのあるハッピーな副業化と、追い詰められてせざるを得ない副業化の2種類があるのは事実。後者の、不安定な状況の人を社会が下支えするシステムを作る必要があります。
たとえば、労働過多にならないような時間管理ができて、次の仕事に就くまでの保証があり、銀行からの融資を受けられるなど。こうしたことに取り組まないと格差は拡大する一方です。人生100年は長いからこそ、人の動的なバランスを社会全体で肯定する仕組みをつくる必要があると思っています。


「はたらく」に幸せ革命?世界118カ国、約12万人を対象に調査


水田 私は人生100年時代のキーワードは、「はたらいて、笑おう。」です。
これはパーソルグループのグループビジョンなのですが、「はたらいて、笑おう。」が意味するのは、納得感のある仕事や働き方を自分で決めて、「自分の仕事が世のためになっている」「自分は組織や社会にとって必要な存在である」と実感を得られること。
この働き方をパーソルグループだけでなく、全世界で一人でも多くの人に実感してもらうことで、「はたらいて、笑おう。」を実現できる社会を作りたいと考えています。

そのためにもまずは世界118カ国、約12万人の方を対象に「はたらいて、笑おう。」指標を定め、調査分析して、広げていきます。

石川 測定されないものは改善されないですよね。パーソルグループでやろうとしているのは、「幸せ革命」ともいえることかなと思いました。人生100年時代、働く期間が長いからこそ、笑えるようになるべきということですね。

水田 これからは、物質的ではない、“エネルギー”が必要になってきます。私たちパーソルグループの“エネルギー”となるのは、世界中の人に「はたらいて、笑おう。」を実感してもらえるということ。これからの多様性の時代には、「共感」をキーワードに歩んでいきたいです。


歴史から学び、人生100年時代の生き方を探るセッション。そのすべてをご覧になりたい方は、以下から視聴してください。


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